キラキラとお日様を反射して天使の輪を作る、ぬば玉色の髪を持つ娘は、紅色の大きな瞳をパッチリと瞬いた後、桜色の唇に、ふわり、と優しい色の微笑を乗せた。
その綺麗な──目を奪われるあでやかな微笑みに、時間がとまったかと思った一瞬後。
彼女は、トン、と軽やかに──妖精のごとく重みを感じさせない動きで、リオ達の元に間合いを詰めると、
「ルック! 3年ぶり〜っ!!」
ギュムッ、と。
年頃の娘らしくない恥じらいのない態度で、リオのナナメ後ろで引きつった顔をしていた美少年魔法使いめがけて、抱きついた。
「えっ!!?」
「なになにっ!?」
あっと言う間に間合いを詰められた事に、リオとナナミは驚いたようにピョンと跳ね上がった。
そして、ルックの首にギュゥと抱き付いた少女の後姿を見て、お互いに顔を寄せ合った。
「ルックの知り合い……かな?」
「違うわよ、リオ。こういう情熱的な抱擁をするってことはね、恋人に決まってるじゃないの!」
首を傾げて自信なさそうに問いかけるリオに、ナナミは両拳を握り締めて叫ぶ。
その目が、キラキラと光り輝いているのを見て、リオはなんとも言えない顔で口元をゆがめる。
そんなリオを押しのけて、ナナミは両手をガッシリと握り締めると、白皙の頬に頬ずりされて、酷くイヤそうな顔をしているルックを見つめながら、うっとりと頬に手を当てる。
「きっと、私達の闘いに参加するために、しぶしぶレックナート様のところに置いてきた恋人なのよ! その人が、ルック君と離れてるのに耐え切れなくって、こうしてココに来たに違いないわ!」
「だったら、なんでティーカム城じゃなくって、バナーの村に居るのさ?」
呆れたように額に手を当てて、はぁ、とアイリは溜息を零しながら、ナナミの断定口調に突っ込みを入れる。
しかし、その言葉にめげず、ナナミは目をきらめかせて当然のように言い切る。
「そんなの! ルック君がココを通るのが分かってるからに決まってるじゃないの! 愛は偉大よねっ!
うん、リオ! お姉ちゃんのリオへの愛情も、負けないわよー!」
おーっ! ──と、右拳を天に向けて付き上げる仕草をするナナミの後ろで、リオがゲンナリした顔で、そーだねー、と棒読み状態で同意する。
そんなナナミに、アイリは更に突っ込もうとしてみたものの──何も言えず、ただ溜息を吐いて視線をルックの方に戻した。
ルックはと言うと、あまりの事に呆然と凝固していた事実から、ようやく我に返ったらしく、慌てて両手でしがみついた少女を押し返そうとしているようだった。
しかし、アイリですら簡単に押し倒せそうなほど力のない魔法使いの少年は、必死で踏ん張っても、少女を押しのけることはまったくできないようで──とうとう、片膝を彼女の腹に押し付けるようにして、グイグイと体を押すという、力技に出た。
──が、しかし。
「もー、やだなー、ルックったら。三年ぶりだからって、そんな照れなくっても♪」
楽しげな余裕たっぷりな口調で、少女はそんなルックの反撃をアッサリと交わし、横流ししながら、スリスリとルックの柔らかな髪に鼻先を埋める。
それどころか、首に回した腕をグイと力強く引いて──ルックが全力で彼女の体を押しのけようしているにも関わらず、あっさりとルックの体を己の方に引き寄せると、ルックの小さな頭を腕に抱え込み。
「ちょっと背は伸びたみたいだけど、相変わらず女の子顔負けのかわいい顔してるから、すぐにルックって分かったよ、アハハハハハ。」
明るく笑いながら、ルックの顔を自分の胸元に押し付けて、そのつむじに顎をグリグリと押し付けた。
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