──運命は、残酷で。
 私の小さな恋なんて、きっと、誰も見ていないに違いないのだけど。
 私の、ほんの些細な初恋の思い出すら、運命はきっと、翻弄することが、大好きなんだ。
 だって、そうじゃなかったら……だって。
 「彼」が、生きていた理由を────…………私は。
 私は、どんな思いで受け止めたらいいの……?


 モンスターが大勢居る居城で、緊張の面持ちで一同は侵入を果たしていた。
 デスピサロに会った瞬間に、掴みかかりそうな面子を外した、ライアン、リラ、マーニャ、ミネアという組み合わせだ。
 いやに色っぽい腰つきのスライムが、どこかウキウキした様子で呟く。
「デスピサロって、どういう顔してんのかしらね〜? アリーナの話だと、美形だとか言っていたけど、楽しみ〜。」
「姉さんっ、不謹慎よっ。」
「でも私、魔族を見るのってはじめてなんだけど、モンスターとどう違うのかしら? 人型なのよね? ということは、ミステリードールみたいな感じかしら?」
「アレは、ハニワだろう、リラ殿?」
 真剣に考え込むリラに、とりあえず突っ込んだライアンが、溜息を零しつつ、先へと進むように促す。
 その声に頷いて、気を引き締めて他のモンスターたちが向かう方向と同じ方向に進んだ。
 出た先は、広い会議室みたいなところ。
 席について、変化の杖の効果が切れはしないかと、ヒヤヒヤしながら待っていた時に、その衝撃はやってきた。
 美しい風が、目前で舞い上がったのだ。
 銀の髪と、抜けるように白い肌。凍てつく紅の瞳に、形良い造作。
 思わず、誰もが絶句した。
 ライアンは、コレが魔族の総大将なのか、と。
 マーニャは、あまりの美形の男の出現に。
 ミネアは、彼の放つ魔力の濃厚さに眩暈を覚えて。
 そして、リラは。
「………………………………っ。」
 ぐらり、と、眩暈を覚えたような、気がした。


「彼」は、生きていた。
その理由を、私は同時に知った。

「……デスピサロ…………。」

「彼」こそが、私の村の、仇なのだ、と。


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