──長く信じていた真実が、開けた瞬間。
この想いが憎しみに変わったらいいと──そう、思った。
バカみたい。
そうなったら「いい」なんて思っている時点で、あたし。
「………………もう…………遅いんじゃないの………………っ。」
*
「これは、リラが好きに使いなさい。」
ほら、と、つっけんどんに手渡された花。
可憐で美しい、はかない……けれど、偉大なる力を秘めた花。
見上げた先で、マーニャが、照れたように苦笑を浮かべていた。
見つめる先で、誰もが頷いてくれる。
誰もが、彼女が「誰」に使うのは、疑っては居なかった。
彼女が幸せだった頃、彼女の傍に居てくれた娘を生き返らせるに違いないと、そう思っていた。
だって彼女は、ずっとその形見を、持ち続けていたのだから。
なのに、リラは、花を見下ろして──こう、呟く。
「──……愛する人の声は、届くのかな…………?」
誰にも聞こえないように、小さく、小さく──、
「……ゴメンね。」
誰にともなく、小さく呟き──リラは、その花を抱きしめた。
ホロリ、と零れる涙が、誰のために流したものなのか、リラ自身、わからなかった。
それを瞬き一つで消し、リラは前を向いて微笑んだ。
「わたし──ロザリーヒルに行きたい。」
哀しい思いで死ぬ人は、もう、見たくない。
──ううん。
もしかしたら私──……彼を、この手で殺すのが…………怖いと、そう思っているのかもしれない。
だから、最後まで、あがき続きたいと、そう思っているのかもしれない。
ロザリーさんが生き返ったから、デスピサロが正気に戻るなんて、わからないのに。
正気に戻ったら戻ったで、どうなるかなんて、火を見るよりも明らかなのに。
「……ゴメンね。」
もう一度小さく呟いた言葉の先が、誰に向けられたものなのか、リラ自身、分からなかった。
シンシアか、それとも──自分にか。
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