よくここまで辿りつきましたね……って、もしかして簡単でした?(^^;)
さて、最後の問題です。
幻想1の問題です。
生と死の紋章の前主テッドは、継承時と幻想1当時の外見年齢が異なります。
その理由とは……?
幻想真書だったか、キャラクター全集だったかで公開されています。
理由を簡潔に示しますと、
300年間に、○○を○○○○いた○○があった。
となります。
この○の部分には、漢字2文字(名詞)、漢字1文字平仮名3文字(動詞)、漢字2文字(名詞)
が入ります。
これと同じ言葉が、下の小説内に、それぞれあります。
そこをクリックすると──最終ページへのご案内が出てきます。
(注:小説内の、一番始めに出てくる単語にのみ対応しています。順不同)
風 湖のほとりに聳え立つ城──ティーカム城。 多くの人が集う、新同盟軍の本拠地と言われるその城には、巨大な玄関ホールがあった。 その正面に、この城に集う宿星たちの名前が刻まれた石版が置かれている。 人はそれを「約束の石版」と、呼んだ。 その不思議な石版の──運命に導きの手助けをするそれには、守人として一人の魔法使いが遣わされていた……本人の意思に関係なく。 その魔法使いは、見るものをハッとさせるほどの美貌と、独特の雰囲気があった。 並ならない魔力値を持つ、大抵の紋章とも相性の良い──魔法使いとして申し分のない素質を兼ねそえた美少年は、いつも無愛想な表情で、石版の前に立っている。 本来なら、十分に目の保養になるほどの美貌を有する少年ではあったが、彼の持つ独特の雰囲気がそうさせない。 どちらかというと、凝視していてはいけないような──見つめていてはいけないような、そんな気にさせられるのだ。 「……なんていうかさ、見ているほうの心臓が凍えるって言うのかな?」 ずず、と暖かな湯気が立つお茶を啜りながら、隣国の英雄はそう和やかに微笑みながら、その噂の魔法使いの持つ雰囲気について形容した。 それを受けて、彼の正面に片足を投げ出すようにして座っていた青年が、軽く片目を眇めて頷いた。 二人は、向かい合うようにして床の上に直接座っている。 漆黒の髪持つ少年は、行儀良く正座をして、膝の上にお茶菓子を包んできた布地を広げている。 その上には、今日のお茶受けであるところのゴマプリンが乗っていた。 「しょうがねぇよ、ルックって昔からそうじゃん?」 彼の膝の上に残っている、最後の一個のプリンに向かって、青年がヒラリと手を差し出す。 それをくれと訴える青年の口には、すでにスプーンが咥えられていて、床の上には彼が平らげたばかりの、空のゴマプリンの容器が置かれていた。 トランの英雄は、そんな昔馴染みの青年に軽く眉を寄せると、自分の膝の上のプリンの代わりに、水筒から注いだばかりのお茶を置いてやる。 「ま、ルックが笑顔で、『やぁ! 今日は天英星が追加されたよv 君も頑張っているみたいだね!』なーんて言ってたら、世界滅びちゃうかもしれないしね。」 「いや、世界は滅びないだろーけどよ……。」 プリンをくれなかった少年に、ケチ、と小さく呟いて、青年は水筒のお茶が注がれたカップに口を付ける。 ふくよかに広がる香りに、青年は驚いたように一度口を離し、代わりに鼻先をつけた。 鼻の中一杯に広がる香りに、彼は目を丸くさせて、 「うわっ、すげぇ……マジでこれお茶かよ? なんか爽やかないい香り。」 「今日のお茶はね、花粉症に良いって巷で噂されている凍頂烏龍茶だよ。」 少年は、そんな青年に微笑みかけて、ちゃぷん、と水筒を揺らす。 その音が、心もとなくなった気がして、彼は軽く首を傾げて、水筒の口をキュルキュルと開け始める。 そんな少年を横目に、彼は改めて暖かな茶に唇をつけた。 「ああ……、お前んち、風向き次第で、ミルイヒ将軍の花庭園の風下になるからなぁ?」 フワリ、と鼻腔を擽る匂いと共に、口の中にホワリと味が広がる。 まるで、香りが弾けたかのような錯覚に、感嘆の吐息が零れた。 その薫り高い匂いを楽しみ、暖かな茶に唇をつける。 「ん、うまい。」 「グレミオが選んだお茶だからね。」 少年は、水筒の中身を確認して、軽く柳眉を顰める。 たっぷりと入れてきたはずのお茶は、すでに半分ほどになっていた。 三人分のお茶会用として用意してもらったけれど──デュナンに辿り着くまでの間に、ビクトールやフリックに振舞ってしまったのがいけなかったらしい。 「うちがミルイヒの屋敷の被害にあってるわけじゃないんだけど──花粉症に効くって噂が広がってからさ、凄く手に入りにくくなっちゃって、そうなるとどうしても飲みたくなるのが人情って物でしょ? だから、グレミオがどこからともなく奪ってきてくれたってワケ。」 この同盟軍では、この少年は無口で儚げな英雄だと言われているのだが──残り少なくなったお茶を、新しいカップに注ぐ彼の姿からは、想像も出来ないと、青年は思う。 「それ、人情じゃねぇだろ……。」 「これを飲み逃すと、しばらく飲めないよ、この烏龍茶。」 残念、あと二杯分くらいしかない、と告げる少年に、青年はカップの中身を見やる。 そこには、すでに半分ほどになった中身が残っている。 一杯くらいでは満足できないくらいの美味さだと、しみじみ思いながら、カップを大切に握り締める。 口の中に広がった香りは、飲んだ後、舌先に軽い清涼感を残す。 「その水筒ごと、ごっぽり飲めそうだぜ、俺。」 「うーん、残念、あと一杯ずつくらいしか残ってないよ。」 軽く笑いながら、少年は新しくカップに注いだお茶を、ハイ、と──自分の左隣で、何事もなかったかのように正面を見つめて立っている美少年へと、差出した。 「ゴマプリン、美味しいよ?」 笑顔。 そして、正座している少年を見下ろす美少年魔法使いの目は、冷ややかだった。 「────…………勝手に人を巻き込もうとするな。」 そのまま、視線が逸らされる。 目線を上げさえすれば、勝手に自分の前でお茶タイムをし始めた二人の古馴染みの姿は見えなくなる。 視界に移るのは、ここ数ヶ月の間にスッカリ見慣れてしまった、古びた城の、思った以上に頑丈な玄関ホールだ。 ルックが立つ場所から正面には、薄暗い回廊の出入り口へと続く、短い下り階段。 吹き抜けの高い天井には、飾り模様が刻まれている。 そうやって正面さえ見ていれば、わざわざ自分の目の前の床に直接しゃがみこんで、お茶会、なんていうものをやっている憎らしいヤツらの顔なんて、見なくてすむ────……、 「何言ってるのさ? 僕がここでお茶会なんてやってる時点で、すでにルックはお茶会メンバーの中に数えられてるに決まってるじゃないかー。」 あはははは、と、明るく笑って顔を覗き込んでくる少年が相手である以上、関わり合いにならなくてすむ、なんてことがありえるはずもなかった。 その事実を突きつけるように、少年はルックの鼻先にカップを突きつける。 湯気と共に鼻腔を突き抜けたお茶の良い香りに、思わず視線を奪われると同時──その視線の揺れを狙っていたかのようなタイミングで、スイが膝の上に乗せていたゴマプリンを、ルックの目の前に差し出した。 目の前に付き付けられたその魅惑的な物体に、 「……………………。」 顔を大きく歪めるルックに、少年は笑ってこう続けた。 「食べないなら、シーナにあげちゃうけど?」 「あ、食う食う。ついでにその茶も飲む。」 すちゃ、とすかさず自分の存在を誇示するように片手を挙げて宣言する男を、ジロリとルックは睨み付ける。 その後、何も言わず少年の手から、彼の保護者自慢のオヤツとお茶を奪い取った。 「あ、残念、シーナ。お茶もゴマプリンも、奪われてしまいました。」 クスクスと、楽しそうに笑いながら、軽くなった両手を振って、スイがシーナに顔を向ける。 そんな少年を見下ろして、ルックは奪ったカップに口をつけながら、鼻の頭に皺を寄せる。 「先に言っておくけど、僕がこれを食べ終えたら、君たち、さっさとココから撤退しなよ?」 ほの甘い香りを鼻先に感じつつ、さすがはグレミオが選んできたお茶だけあると、内心だけで感心する。 「んげっ、休む暇くらいくれよな、ルック。」 シーナが、心底ゲンナリした顔で、ジトリとルックを睨み付ける。 けれど、ルックは涼しい顔で、そんなシーナの抗議を無視した。 そんな二人を交互に見やったスイは、膝の上に乗せたままだった布地を丁寧に折りたたみながら、 「ああ、いいじゃないか。ルックにしては、なかなかマトモな提案。 食後に三人で散歩っていうのも──久し振りじゃない?」 ルックのセリフを、都合よく解釈してくれた。 もちろん、顔一面に広がっているのは、笑顔であった。 ──たぶん、ルックとシーナにとったら、凶悪すぎる笑顔であったけど。 「────…………三人?」 スプーンでゴマプリンを掬っていたルックが、その手を止めて、心底嫌そうに眉を寄せて尋ねる。 スイは、顔を顰めても美人な彼へ、親切心を発揮して、この場にいる三人を一人残らず指差して教えてやった。 「僕と、シーナと、ルック。」 もちろん、そのメンツの中にゴマプリンを食している最中のルックが入っていることは、言われなくても分かることであった。 「…………なんで君たちと一緒しなくちゃいけないのさ?」 舌先でホロリと溶ける様なゴマプリンは美味しかったし、その口直しに飲むお茶も美味しかった。 これを持ってきたことに関しては、感謝してもいいだろう。 けれど、だ。 わざわざ人の目の前でピクニックよろしく、お茶会を広げて、勝手にそのお茶会に参加させた上に、食後の散歩にまで付き合わせるとは──良い度胸だった。 冷ややかな目を、ヒタリ、とスイに当てる。 冗談じゃないと、その気持ちを込めて睨み付けるルックの意見に、シーナも賛同する。 シーナは、ハイハイ、と片手を挙げて、自分の意見も尊重してくれと、口を挟む。 「俺も、お茶とゴマプリンにつられて、参加したけどさ? 貴重な時間を、男三人で潰すつもりは毛頭ないぜ?。」 横に置いてあったバスケットの籠の中に、空になったゴマプリンのカップを仕舞いながら、スイはそんな二人の意見に頷いて見せた。 「それじゃ、しょうがないね……。」 柔らかに笑う彼の笑顔に、ああ、自分たちの意見が通ったのだ、と──ここで安心してしまうのは、素人である。 ルックもシーナも、注意深く続くセリフを待った。 自分たちが思いも寄らない展開が、この先に待ち受けている可能性が無いわけではないのだ。 そうして、もしそうなれば、すぐさま反論して捻じ伏せなければ、実行させられるのは、過去の経験で十分身にしみていた。 「ビッキーに頼んで、どこへ行くかわからないサバイバルツアーで決定だね? 三人それぞれが、どこか別の──どこか分からない場所に飛ばされて、誰が一番早くココまで帰ってこれるかって競争すれば、三人一緒に出かけるってことにはならないもんね? ──うーん、食後の運動にしては、なかなかハードだと思うんだけど、二人がソレが良いって言うなら、しょうがないよねー。」 「つぅか、普通しねぇだろっ、それはっ!!」 思わず床をバンバンと叩きながら叫んでしまったシーナであった。 「普通しないけど、シーナたちはそれがいいんでしょ?」 しれっとして笑いかけるスイに、誰がそれがいいと言ったんだよ、と、脱力を覚えるが──そこで本当に脱力していては、気づけば何も持たずに荒野にぽつーん、という現実が来るだけである。 「誰も言ってねぇだろうがっ!」 自分にハッパを駆けながら、片足を立てて、噛み付くようにスイに叫んだ瞬間であった。 「別にそれでもいいけど?」 シーナのセリフに、覆い被さるようにルックが言った。 「って、おいおいルック!?」 慌てて、こういう2対1になるとは思っていなかったシーナが、立ったままの美少年を振り仰ぐ。 少年は、綺麗な唇にスプーンを咥えて、長い睫を伏せながら、ゴマプリンの最後の一口を食べ終えたところであった。 「俺は、放浪して餓死しちゃったり、危うく瀕死なんて冗談じゃねぇぞっ!? しかも時期的に、冬眠から覚めたクマに襲われるってこともあるだろーっ!?」 ポイ、と投げ捨てるようにスイに空の容器を渡し、ルックは涼しい顔でお茶を飲み始める。 ルックは、ビッキーの失敗テレポートに巻き込まれたことが少ないから、そんな涼しい顔をしていられるのだろう。 見知っている洞窟や、近隣の町に飛ばされたら恩の字だ。 もしも、万が一にでも、どこかの山の崖の上だとか、どこかの湖の底だとかに飛ばされたら、一体どうやって帰ってくるつもりだ!? いや、それ以前に、無事に帰ってこれるのだろうか? スイの言っている、「サバイバル」は、十中八九、命を賭けた「どこへ飛ぶか分からないビッキーマジック」を差しているに違いないのだ。 だからこそ、真剣に、必死に叫ぶシーナであったが。 「ああ、大変だね──山じゃないことを祈るよ。」 まるで感情の篭っていない声でルックがあしらってくれる。 至極感情のない声であった。 「────…………お前だって、人のこと言えねぇだろーがよ……。」 というよりも、どこへ飛ばされるか分からないとなると、体力のある自分よりも、華奢なルックの方が行き倒れになる確率ははるかに高かった。 それを指摘するシーナに、ルックはしれっとした顔で、 「別に、僕はすぐに帰ってくるからね。」 「──……あん?」 ルックは、顔色一つ変えず、ヒラリと右手を翻して一言。 「君たちがサバイバルしてくれたら、ココへ帰ってくるまでの間、顔を合わせることがなくなって──僕は、この石版の前で、安全に役目を果たせるってものだ。」 うっとりとするほど綺麗な微笑を浮かべて、ルックはそうのたもうた。 それは、つまり……。 「おま……っ、それ、ずりぃ……っ!!」 堂々と、自分だけテレポートで帰ってくると宣言しているということに、他ならなかった。 ──けれど、スイがそのルックの行動を、見逃しているはずはなかったのである。 「今日の僕の天牙棍、ちんもくの効果が宿っていたりするんだよねー。」 いつのまにか、愛用の棍を片手に持ったスイが、ルックに背後に立っていた。 「……っ!」 「いつの間に……っ。」 ついさっきまで、ルックから受け取ったゴマプリンの容器を、イソイソと籠の中にしまっていたような気がしたのに、と、シーナが目を見開いた目の前で。 「スイ……っ。」 「紋章の力──奪わせて頂きます。」 宣言したかと思うや否や、スイの棍は、クルンと空を切り──、 どごっ! 至極あっさりと、ルックの頭を直撃したのであった。 カコン──と、軽い音を立てて、ルックの手から落ちたカップが、床を跳ねた。 シーナは、中身が空のそれを手に取り、膝から床に昏倒するルックの体も受け止めてやる。 ずっしりと重いルックの体に、軽く眉を寄せながら、彼の肩越しに見上げたスイの顔には、艶やかな笑みが浮かんでいた。 「…………お前、悪魔な……。」 「何言ってるのさ、止めなかったシーナも同罪じゃないか。」 「止める暇なかっただろーがよ。」 スイに突っ込みながら、シーナはルックを床の上に転がす。 そのシーナの手から、カップを受け取ったスイは、それを籠の中に仕舞い込むと、きっちりと蓋をした。 そして、お茶会の道具を纏めた籠を持って、立ち上がった。 「それじゃ、僕、今からビッキー連れてくるから、逃げずに待っててね。」 「────……マジで、サバイバルかよ!?」 「大丈夫大丈夫! ちゃんとビッキーに、デュナン国内でよろしくって言うから! ふっふっふっ、久し振りなんだよねーっ! 一人でサバイバルっ!」 ウキウキした声で、そう叫び返されて──スイが浮かべている笑顔が、彼の本心からの物であると知った。 そのまま、玄関ホールの入り口向けて走り去っていくスイの背中を見送りながら、シーナは本気でココからコッソリと立ち去ろうかと思う。 ガックリと肩を落とし──そのついでに、力なく床に倒れている少年を見下ろす。 今から、コイツを生贄にして自分だけ逃げるだとか、リオに頼み込んで瞬きの手鏡を貰ってくるだとか、そういう案が頭の中でグルグルしたことはしたのだけれども。 「……くそっ。墓穴掘ったかな……。」 どう考えても、結局シミュレーションの行き着く先は、ルックの風の紋章にずたずたにされる自分だとか、フェザーに服だけを摘まれてぶら下げられている自分だとか──そんな、嫌な姿ばかりであった。 「どっから間違って、こういう結果になったんだろーなぁ?」 覚悟を決めて、どっかりと床に座りなおして──頬杖をつきながら、首を傾けて尋ねてみたが……もちろん、答える声は、どこにも無かったという。 同盟軍のとある日の、ちょっとした冒険の、始まり始まり……? 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