アルス「えーっと……始めまして、僕は、フィッシュベルの漁師、ボルカノの息子で、アルスと言います。
漁師見習ですらないけれど、時々父の手伝い……というか、もっぱら母の手伝いをして、漁師見習の見習いをしているような形です。」
マリベル「フィッシュベルの網本の娘のマリベルよ。──ま、この世界はもともとグランエスタードだけだったんだから、それを考えたら、世界で唯一の、網本の娘……と言えるわけだけど、最近はそうも行かなくなっちゃったわね……そろそろ新しい商売にでも手をつけなくちゃ、うちもやばいかしらね?」
ガボ「マリベルの商魂たくましさとネチッコささえあれば、どこでもいけると思うぞ。」
アルス「アミットせんべいも美味しいしね。」
キーファ「マーレさんの佃煮は最高だしな。」
マリベル「それ関係ないでしょ、馬鹿王子。」
キーファ「なにをぅっ!? アレは、一種のフィッシュベル名物だっ!」
アルス「えーっと────…………そうなの?」
ガボ「うん、アレはうまいな〜、おいら、もうよだれが出てきたぞ。」
マリベル「汚いわねーっ、まったく、ほら、アルス、さっさと拭いてあげなさいっ!」
アルス「なんで僕が……まぁ、いいけど。はい、ガボ、ハンカチだよ。
それはそうと、キーファもガボも、まだ自己紹介してないよ? いいの? コレ、自己紹介の場なんでしょ?」
キーファ「あー……そういやそうだったな。俺はキーファ・グラン。このグランエスタードの第一王子だ。」
マリベル「王子って名前が似合わない、野蛮王子だけどね。」
キーファ「そういうお前は、お嬢様って名前の代名詞みたいな、ワガママ娘だけどなっ。」
マリベル「余計なお世話よーっだ。」
ガボ「おいらはガボだぞ。」
アルス「うん、ガボは、ガボだよね。
それを言うなら、キーファはキーファだし、マリベルはマリベルだ。」
マリベル「──……はぁ、まったく、つまらない場に誘われたものだわ。もう帰るわよ、あたし。」
アルス「えっ、もう帰っちゃうの?」
マリベル「あたしはあんたと違って忙しいの!」
キーファ「行くっていうものを止める必要ねぇだろ、アルス。ほっとけ、ほっとけ。
さ、そして俺たちは、新しい冒険に出発だぜっ!
今度は女抜きで、どこまでも行くぜっ!」
アルス「って、キーファ〜。」
マリベル「──ったく、ほんっと、冒険馬鹿よねぇ。」
アイラ「……ところで私たちは、いつ出て行けばいいのかしら?」
メルビン「うーん、でござるな。
とにかく、キーファ殿と拙者たちが顔をあわせるわけには行かないでござるからなー。」
アイラ「私はでも、ご先祖様を一度見てみたいわ。伝説に残る守り手って言ったら、一体どれくらいステキな人なのかしら? ──あぁ、私もご先祖様みたいな人が将来一緒になってくれたら……なぁーんてね。」」
メルビン「アイラ殿。言ってくれればいつでも……。」
アイラ「あら、話が終わったかしら? マリベルー。」
メルビン「うっ、無視でござるかっ!?」
マリベル「何やってるの、二人とも? こんな隅っこで?」
アイラ「やっぱり、本編で会ってないのに、こんなところで先祖様と会ったら、まずいでしょう?」
マリベル「別にまずくないと思うけど。──ね、キーファ?」
キーファ「えっ、何々? どうかしたのかよ?」
ひょいっ。
アイラ「あ……っ。」
キーファ「──……っ! アルス、アルスっ!」
アルス「言っておくけど、アイラはダメだよ?」
キーファ「なんでだ? っていうか、まだ何も言ってないだろーっ!」
アルス「言っているようなものじゃないか。」
アイラ「…………この人が、ご先祖様…………。
…………なんだか想像していたのとぜんぜん違うわー。」
マリベル「だから前から言ってるじゃないの。いっつもこんなんだったって、キーファは!
──どうせ、アイラのことを、『色っぺぇ大人の美女』だとか思って、アルスに紹介せろって迫ってるのよ。」
アイラ「ま、まさかー…………。」
メルビン「むっ、ライバルでござるかっ!」
キーファ「おい、なんでダメなんだよ? アルスー?」
アルス「………………キーファ。」
キーファ「ん? なんだよ?」
チョップ。
アルス「これ以上聞くと──本気で怒るよ?」
キーファ「………………すみません、俺が悪かったです。」
ガボ「キーファって、なんだかんだ言って、アルスには弱いよなー。」
マリベル「ね。」
アイラ「…………どんどんイメージが…………(涙)。」