フランボワーズ
















「……あ、クリフトだわ。」
 神々しいほど美しい青い空と、「追いかけてきなよ」と誘っているかのように優美に流れていく白い雲に、誘われるように窓から顔を突き出した先。
 中庭から城壁の外へと抜ける小道を、背筋を正して歩いていく姿が見えた。
 長い背高帽に、同色の神官服。小脇に何か抱えていることから察するに、これから隣の城下町へ教師をしに行くところだろう。
 旅に出る前からも何度か教師をしにいくことはあったが、旅から帰って来てから、その回数がうんと増えたような気がする。
 世界中を旅して、聖地とも言うべき「ゴッドサイト」に行った経験を持つクリフトは、まさに右からも左からも引っ張りダコなのだと、ブライが呆れたように言っていたのを思い出しながら、アリーナは窓際で頬杖をつきながら目を細めた。
 クリフトは、自分の背後にそびえる尖塔の窓から、自分の主が覗き込んでいるなど露ほども思っていないだろう。
 旅の空の下にあったときと同じ、青く澄んだ空を見上げて、眩しげに額に手を当てて──城外へと抜ける門の手前で脚を止めると、にこやかに門番に向かって頭を下げて挨拶を始めた。
 それを何とはなしに見下ろしながら、アリーナは小さく唇を尖らせる。
「いいなぁ、クリフトは。」
 同じ「旅」から帰って来ても、アリーナは逆に城の中に閉じ込められるばかりで──何せ、旅の間に「普通の姫君の適齢期」を過ぎてしまっている。
 しかも、その適齢期を過ぎたアリーナ姫は、あの「勇者さまご一行」の猛者の1人だったりもする。
 突然、姿を消したサントハイム城の人々を救うために旅に出て、勇者さまと合流し、みごと魔族の王を倒した「アリーナ姫」は、民衆には人気が高かったし、吟遊詩人もその美声でアリーナ姫を称えてもくれるが──……、頭の固い王族や貴族諸侯には、受け入れがたい存在らしく。
 このままでは、本当に嫁き遅れてしまうと、サントハイムの重鎮達は、焦ってくれているらしい。
 しかも、自分たちが「消えて」いる間に、すぐ隣国のエンドールの姫君は、こっそり彼らが「アリーナ姫の花婿候補」に考えていたボンモールの王子と結婚してしまったし。
 それでなおさら、彼らは早くアリーナ姫を、立派な姫として教育しようと──旅から帰って来て、ようやく一心地ついたと思ってから、ずっと──……。
「アリーナ様! どこを見ていらっしゃるんですか! 今は、ダンスの授業中ですよ!!」
 部屋の中から、どこそこの姫を見事育て上げたといういわくつきの女史が、キンキン声でアリーナの背中に向かって叫んでくる。
 その声に、はぁ、と小さく溜息を零しながら振り返れば、きりりと吊り上がる目を、さらに吊り目に見せるめがねをつけた女性が、背中に定規でも入れているのではないかと思う姿勢で、こちらを見ていた。
「身が入っていないようですが、そのようなことでは、今度のダンスパーティで、恥を掻くのは姫様なんですよ。」
「分かってるわよ。
 今度のダンスパーティは、私の婚約者候補を選びなおす、だいっじな、式典なんだから、主役の姫様が真面目にご公務をこなさないでどうするんですか──……って、言うんでしょう? もう、聞き飽きたわ。」
 くるりと窓から──門の外に出て行くクリフトの姿を名残惜しげにチラリと視線で追ってから、アリーナは室内へと身体の向きを変えた。
 その拍子に、裾を引きずるようなドレスの裾が、優雅にヒラリと待って、ファサ、とアリーナのつま先に落ちる。
──あぁ、まったく、こんなゾロゾロしたドレスも、さっさと脱いでしまいたいのに!
 そうしたら、そのままいつもの服に着替えて、お城を飛び出すんだわ。
 いつものようにサランに向かうクリフトの後を追って、一緒に草原を歩きながら、空を見上げるの。
 青い空がずっとずっと遠くまで広がっていて、左手からは海鳥の鳴く声と小波が聞こえてくるわ。
 少しだけ寄り道しようと誘えば、クリフトはきっといつものように生真面目な顔で、待っている子供たちがいるんですよ、と説教してくるだろう。
 それでも、拗ねたように唇を尖らせれば、すぐに甘く笑って、「帰りに、スコーンかパイを買って、少しだけピクニックにしましょう」──そう言ってくれる。
 サランについたら、最初だけ別行動。
 クリフトの授業がいい頃合になったら、私もコッソリと子供たちに混じってその授業を受けるの。
 城の小難しい授業なんかよりも、クリフトの教え方は優しくて、小さな発見に満ちている。
 たとえば、空はどうして青く見えるのか。
 たとえば、草木が呼吸をしている様子。
 たとえば、熱気球が飛ぶのはどうしてなのか──その飛んだ時の話を、懐かしげに話してくれれば、思わず手をあげて、「はい、クリフト先生! 気球の上は、とても空気が薄くて、ちょっと動くと息が切れます!」──絶対、「また潜り込んでいたんですか!」って、怒られるの。
 キィキィと甲高い声で、気もそぞろなアリーナの前で、ダンスの教師の女史が怒っている。
「そんなことでは、素敵な殿方と踊ったときに、どうなさるんですか! ダンス一つ満足に踊れない姫など、笑われるのがオチですよ!」
「あら、でも女史。いつもマーニャは、『少し失敗しても、恥ずかしげに微笑んで、ごめんなさい、って言えば、大抵の男はイチコロ』だって言ってたわ。」
 小首をかしげてそう呟けば、女史は顔を真っ赤にさせるやら真っ青にさせるやら──見ているこっちがビックリするほど、彼女は目を白黒させた後、
「なんてことをおっしゃるんですか、姫さまっ!!!」
 ──あぁ、どうやら私は今日も、この女史を怒らせてしまったらしい。
 大きく傘のように膨らんだドレスのスカートを見下ろして、アリーナは小さく溜息を零す。
 ダンスは嫌いではない。
 どちらかというと、身体を動かすから好きだ。
 難しいステップだって、旅の間にマーニャに教えてもらって踊れるようになった。
 勇者や、ステップが苦手なライアンさん、器用に丁寧に踊るクリフトや、腰が曲がってつらいと文句を言うブライ。
 優雅にキレイに舞うミネアに、情熱的に踊るマーニャ。
 みんなと一緒に、踊るダンスは、大好きだった。
 けれど──、
「……あーあ、つまんない。私も一緒に、サランに行きたかったなぁ〜。」
 がみがみと説教を続ける目の前の女史をチラリと見上げて、こっそりとそう呟いて、アリーナは自分の足を覆うボリュームたっぷりのドレスの裾を、そっと持ち上げた。
 長くボリュームのあるドレスと、体を締め付けるコルセットをつけて踊るダンスは、体を左右に動かすだけで、本当につまらない。
 そんな、少しの動きだけで、どうやって自分の伴侶となる男性が選べるというのだろう? どうやって、一緒に居て楽しいと感じて、相性がいい組み手が出来る相手だと分かるだろう?
 ダンスに裁縫に外交の勉強。礼儀作法に政治のお勉強。
 毎日毎日、朝から晩までビッシリと城の中に詰め込まれるのはもう飽き飽きだ。
 今日もこのダンスの授業が終ったら、絶対に抜け出してやろうと誓いながら、アリーナは目をますます吊り上げてくるダンスの教師たる女性に見えないように、小さくあくびをかみ殺した。











 窮屈だったドレスを脱ぎ捨てると、体がバシバシと強張っている気がした。
 だから、そのままサランへ向かうつもりだったのを、急遽変更して、兵士の訓練所に向かう。
 顔を覗かせれば、新人の兵士の訓練をしていた兵隊長が苦い顔を見せたが──アリーナが勉学がイヤでサボりに来たのは、誰が見てもわかったので──、それでも、彼女の要望に従って、訓練に参加させてくれた。
 あの過酷な旅を乗り切ってきたアリーナにとっては、新人相手の組み手や防御訓練や、足運びの練習などは、あまり楽しいものではなかったが、ダンスの練習などよりは、とても楽しかった。
 思わず熱中して、そこへ顔を出しに来た兵士達と組み手を交わしたり、つい熱心に教授したりして──……、気付けば。
「……姫様。」
 訓練所の入り口に、呆れた表情を隠そうともしないクリフトが、迎えに来ていた。
 汗が滲んだ額を腕でぬぐいながら振り返ると、彼は渋い顔でこちらを見てた。
「クリフト! やだ! もう帰って来てたのっ!?」
 驚いて目をパチパチと瞬けば、そんなことだろうと思ったと言いたげに、クリフトの口から吐息が零れる。
 組み手をしていた相手に断りを入れて、息を弾ませて駆け寄ってくる姫君を見下ろして、クリフトは何といったものかと、額に指先を押し当てながら──まったくもう、と小さく呟く。
「もう帰って来たの、じゃありません、姫様。もう夕方なんですよ?」
「えっ!」
 もうそんなに時間が経ってしまったのかと、大きな目をますます大きく見張る彼女に、クリフトは整った容貌を渋い色に染めて、
「私が帰ってきたら、ローティン女史やアガンタ教授が姫様を見なかったかって、怒っていらっしゃいましたよ。
 また姫様は、講義を抜け出して、私と一緒にサランに行っていたのではないか、……ってね。」
「そのつもりだったんだけど、今日はちょっと気が向いて、こっちに来てたのよ。でもね、身体が解れたら、すぐクリフトのところに行くつもりだったのよ?」
 ごめんね、と、両手を顔の前で合わせて謝れば、ますますクリフトの溜息は深くなる。
「──……謝る相手が違います、姫様。
 この場合は、約束をされていた女史と教授に謝るべきことでしょう? そもそも彼らは、あなたの教育のためにサントハイムに滞在してもらっているのであり、あなたにダンスや政治学を教えられなかったら、彼らの立場がありませんし……。」
 とうとうと説教を始めるクリフトの顔を、見上げて──ふとアリーナは、小首をかしげる。
 クリフトの、途切れることのない説教を聞き流しながら、少し考えた後、
「あっ! クリフト!」
 答えを導き出して、満面の笑みを浮かべて、クリフトの服を掴んだ。
 そのまま、ぐい、とクリフトの上半身を自分の方へと引き寄せて、彼の神官服に鼻先を押し付ける。
「……ちょ……っ、ひ、姫様っ!」
 慌てたようにクリフトは彼女を引き離そうと、アリーナの肩に手を置くが、旅を終えてからも鍛錬に励む彼女の力には、到底叶わない。
「姫様……っ、ここがどこかわかってらっしゃるんですか!」
 仮にも、「結婚適齢期を過ぎた王女」と呼ばれている自分が、どんな目で見られているのか自覚しろと、クリフトはもう何度目になるか分からない説教を、再び口にしようとした──まさにその瞬間、
「やっぱりそうだわ!!」
 パッ、と、嬉しそうに顔を綻ばせて、アリーナは顔をあげる。
 鼻と鼻が触れ合いそうに間近で閃くアリーナの笑顔に、クリフトは思わず首先だけで後ろににじり去る。
 そのクリフトの、かすかに紅潮した目元に気づかず、アリーナは嬉しそうに微笑みを広げると、
「クリフトから、木苺の匂いがするわ!」
 得意げに、そう──笑った。
 その、「良く分かりましたね、姫様」と誉めてくれと言わんばかりの表情のアリーナに、クリフトはどっぷりと溜息を零したくなった。
──まったく本当にアリーナ様は、旅に出る前もそうだったか、旅から帰って来てからも、全然、ご自覚があらせられない。
 そう言って、城付きの神父様にブチブチと文句を零しに来る重鎮達には、「今はまだ、お父君や皆様と、再会できたことで胸がいっぱいなのですよ。本当に長い旅でしたから。」と言って笑ってきたのだが──、こうなってみるとつくづく、重鎮達の言葉とは違う意味で、思う。
 本当に、ご自覚があらせられない。
「木苺……ですか。」
 それでも、それを顔に表すことなく──旅の時のような気軽さはあまり見せてくれるなとお願いしても、目の前の娘は、いつまで経ってもそれを改めようとはしてくれない。
 それがアリーナの優しさであり、無邪気さであり──そして残酷さなのだと思う。
 けれど、それを嬉しく思う自分が居るのも知っているから、クリフトは漏れ出てくる苦笑を、少しだけ優しい色に染めて、アリーナを見下ろして答える。
「それは多分──、今日、学校のみんなで木苺狩りに行ったから、匂いが写ったのだと……。」
「木イチゴ狩りに行ったのっ!?」
 ──思うんですけど。
 そう続くはずの言葉は、打てば響くように顔をあげたアリーナの声によって、さえぎられる。
 アリーナは柳眉を顰めて、キッ、とクリフトを睨みあげると、
「なんで教えてくれなかったのよ、クリフト! 私も行きたかった!」
 朝からそう教えてくれていたら、今日のダンスの講義なんて、受けることすらせずに、最初っからサボったのに。
 言外に、クリフトは酷い、と訴えるアリーナに、クリフトは溜息を禁じえない。
 想像通りの言葉を、一字一句間違えずに言ってくれる姫様に、
「──姫様。私は遊びに行ったわけでは在りませんよ? 子供たちが危険なところに行かないか、人を襲うモンスターが現れたりしないか、またはモンスターを子供たちが苛めないか……そんなことを監督するために行ったのです。」
「でも、たくさん木苺を取ったのでしょう? その場で食べたんじゃないの? そうよ、今の季節ですもの。とってもおいしそうな色をしていたに決まってるわ!!」
 ずるい、絶対に、ずるい!
 頬を軽く膨らませるアリーナ姫の言葉と姿に、訓練所に居た兵士達が、微笑ましい笑みを浮かべているのが見えた。
 クリフトはそんな彼らをグルリと見回して──アリーナの視線を落とす。
 これが先ほどまで兵士を面白いくらいに翻弄させていた娘なのだろうかと、新人兵士たちが、仰天している視線をひしひしと感じた。
 普段は国の重鎮たち相手に、対等とも言える態度で「王女らしく」振舞うくせに、こういう時のアリーナ姫は、子供返りしたかのように幼く感情を優先に叫んでくる。
 先ほど身体を動かしていただけではない赤みを頬に差して、むっつりと唇を尖らせるアリーナに、やれやれと、クリフトは深い溜息を一つ。
 『もっとサントハイムの姫としてご自覚をなさってください。』
 『自室ならいざしれず、このような場所でわがままをおっしゃるのは、姫としてどう思われるか、分かっているはずですよ。』
 言いたい言葉も、言わなくてはいけない言葉もたくさんある。
 旅に出る前のように、アリーナはまだ成人もしていない少女ではなく、今の彼女は、旅の中でぐんと成長した大人の女性なのだから。
 ──けれど、すぐ視線をおろせば、クリフトをまっすぐ見つめる大きな瞳。なじっているその目には、拗ねた色以外は見えない。
 そんな表情をするのが、今では自分やブライ以外にはないと、分かっているからこそ。
「──……姫様。」
 少し声音を変えて、クリフトは重々しい口調で彼女を呼ぶ。
 とたん、驚いたように目を瞬くアリーナが、服を掴んでいた手をやんわりとはずしながら、
「あんまりわがままが過ぎると、せっかく姫様のために焼いてもらったケーキは、ローティン女史とアガンタ教授に召し上がっていただくことになりますよ?
 ……あぁ、それはいいですね。今日のお詫びと言って、姫様自ら、差し入れてはどうでしょう?」
 にっこり。
 その笑顔の威力を心得ているような声と表情で、クリフトは、ちょうどいいとばかりに、提案してみせた。
 そんなクリフトのセリフに、アリーナは愕然としたように目を見開いて、
「ケーキ!? えっ、ケーキって……っ!」
「姫様が木苺狩りを好きなのは、サランの子供たちもみんな知っていますからね。
 姫様が授業で来れないと聞いて、それなら、木苺をたくさんつんで、ケーキにしてもらうって張り切ってたんですよ。」
 動揺を露わにするアリーナは、このままだとクリフトが、先の宣言どおり、せっかくのケーキを教授たちに差し入れてしまうと分かっているのだろう。
 クリフトにやんわりと離された指先に力を込めて、再び彼の服をつかみ取りながら、
「それってもしかして、木イチゴのケーキ!?」
「そうです、姫様の大好きな木イチゴのムースのケーキです。」
「──……っ!!!」
 服を掴むアリーナの手にますます力が入るのをチラリと見下ろして──これは皺になるだろうなと、小さく溜息を覚えながら。
「けれど、子供たちも残念でしょうね……せっかく姫様が喜んでくれると思って、木イチゴをたくさん摘んだのに。」
 フランボワーズのケーキを作るためには、たくさんの木イチゴが居る。
 そういって、子供たちは本当にたくさんの木イチゴを、指先を真っ赤に染めて──それこそ、つまみながら食べるのも惜しんで、籠の中をいっぱいにしてくれたのに。
 勉強で頑張ってる姫様が、甘い物で疲れを癒してくれるようにと、そう思ったのに。
 そう、残念そうにこぼせば。
「──……う……。」
 マーニャやブライとは違って、存外に素直な姫様は、クリフトの非難する口調に、小さく声を詰まらせて、喉でうなり声を上げて。
 それから、迷う間もなく、
「明日!!」
 クリフトの服をますます強く掴んで、そう叫んだ。
「明日は、ちゃんと受けるから!!」
「明日だけ、ですか?」
「あさっても! ちゃんとダンスも地理学もする! 歴史もやるし、それから、それから……っ!」
 ──まるで子供のように必至になって言い募る彼女の目が、まっすぐにクリフトを射抜いている。
 それが、子供のようにケーキが欲しいという理由だけではないのは、クリフトも知っている。
 子供たちが、自分のために摘んでくれたケーキを──一生懸命勉強しているだろう自分のために作ってくれたケーキを、ただ食べることが、申し訳ないと思っているのだ。
 アリーナの必至の口調と指先に篭ったその感情に、クリフトはようやく満足したように、小さな笑みを口元に浮かべて見せた。
「本当に、お約束できますか?」
「するわ! もちろんよ!!」
「──なら、仕方がありませんね。子供たちの気持ちを重んじて、ケーキは、姫様の胃袋に消えていただきます。」
「……うん!!」
 城の重鎮達が聞いていたら、なんて無礼な口を聞くんだと、そう怒るだろうな、とチラリとクリフトは頭の片隅で思ったが、アリーナはそのことにまるで気づいていないらしい。
 満面の笑みを浮かべると、クリフトの服を掴んでいた手を離し、代わりにその手で彼の腕を掴んだ。
 ヒラリ、と身体を軽やかに躍らせて、
「それじゃ、すぐに行きましょう、クリフト!
 早くしなと、夕飯になっちゃうわ!」
 明るい笑顔で笑った。
 その笑顔を見返しながらクリフトも微笑み返して。
「それでは、とびきり美味しい紅茶を、おいれいたしますね。」
 ──この後、甘酸っぱいケーキを食べながら、至福の表情を浮かべるだろう姫に向かって、優しくそう囁いた。












こういう感じのクリアリが大好きです。
思わずニヤニヤしながら読んでくれると嬉しいです。