DQ4 女勇者:リラ編
リラ「………………? えーっと…………自己紹介って言っても、わたし、名前以外に紹介するものがないんだけど────。
あ、そうです、最近、ミネアに教えて貰って、クッキーが作れるようになりました。私、ココア味のクッキーと、プレーン味のクッキーとを、重ね合わせて、クルクル巻くのが好きなんです。旅の中だと、オーブンがないので、アルミホイルで包んで焼くんですよ。これが、中々香ばしくて美味しいの。今度、クリフトが木の実を入れてみましょうかって言ってくれたから、アリーナと一緒に木の実を摘んでこようって約束してるんだ。」
アリーナ「うん、ミネアの作ってくれたクッキーは美味しいよね。なんだか、ほんわりと胸の辺りが暖かくなる感じで。
でも、クリフトも結構料理が上手なのよ? ほら、この間の料理当番の時に作ったシチュー! 私、あれが一番好き。同じのを作っても、ライアンさんとかブライが作ると、どーしても苦くなるけど、クリフトのはどうしてか美味しいのよね。……今度秘訣を聞いておこうっと。」
リラ「あ、それは必要だよね! アリーナ、それじゃ、今度その話を聞くとき、私も呼んでね?」
アリーナ「分かったわ。」
マーニャ「…………って、あんたらねぇ……年頃の娘二人が集まって、話すことといったら、食べることと戦いのことばっかり! もう少しこう、自己アピールってのをしてみなさいよ!」
リラ「? え、自己アピールって言うと??」
アリーナ「? あ、そうだった! 私は、サントハイムの王女のアリーナって言います。今年16。」
リラ「そうだ。私も年齢言ってなかったっけ。今16です。」
マーニャ「…………いや、確かに、年齢もある意味必要だけど、そーじゃないでしょ、そうじゃ!
たとえばねぇ、このマーニャ様みたいに、モンバーバラでナンバーワンの踊り子だとか、魔法に関してはピカイチで右に出る者も居ないとか、この美貌とプロポーションが武器だとか、そういう風なアピールをしろって言ってるの!」
ミネア「──姉さん、自分で言っていて恥ずかしくないの? そういうときは、きちんと真実を──そう、カジノにはまるほどのギャンブル好きだとか、後先考えない惚れっぽさだとか、すぐにカッとなる短気なところとか、そういうのも言わなきゃダメよ。自己紹介なんだから。」
マーニャ「……あんたねぇ──面接でワザワザ自分の短所を言う人間が居る? いい? 自己アピールっていうのはね、短所を長所に置き換えて説明するものなのよ!
例えば私なんかは、『とっさの時の決断力に優れている(どうやらギャンブル好きについてらしい)』、『人見知りをせず、社交的に人と付き合っていける(後先考えない惚れっぽさ)』、『情に強く、厚い(カッとなる短気)』!」
リラ「うわーっ、すごい、マーニャさんが、凄く良い女に聞こえる!」
アリーナ「うんうん、自己アピールって、大切なのね。」
マーニャ「………………あんたたちねぇ…………。」
ミネア「ふふ……っ。姉さんの負けね。」
トルネコ「あー……あちらは凄く楽しそうですねぇ。…………それではこちらはこちらで、寂しく、男同士の自己アピールでもしましょうか。
まずはこの私、トルネコからですね。」
ブライ「トルネコ殿は確か、今はエンドールに店をお持ちだとか。奥さんが管理なさっておられるんじゃったのぅ?」
ライアン「おお、ネネ殿だな。ネネという名のご婦人は、昔からとても頭の切れる美しい女性が多いと聞く。さぞかし商才もおありでしょうな。」
トルネコ「いえいえ、お恥ずかしい限りですが、本当に私にはもったいないくらいの良妻でして──。」
クリフト「あのお店があれほど大きくなられたのも、トルネコさんのお人柄がよろしいからだと思いますよ。先日、エンドールに立ち寄ったときにも、王様も王女様も、トルネコさんにとても感謝しておられましたから。」
トルネコ「いやいやいや……それほどでも…………。」
ブライ「まぁ、商売というのは、時と運がモノをいうからの……これからもとくと気をつけよ、トルネコ殿。」
クリフト「……じいさま……。」
ライアン「そうだ、クリフト殿。前から気になっていたのだが──クリフトどのとブライどのは、血縁であられるのか?」
ブライ「いんや。こんな生真面目で固い男は、ワシの血縁であろうはずがないな。」
クリフト「またブライ様はそう言う風な憎まれ口を叩くのですから──ブライ様は、元々は国王陛下の教育係であらせられまして、姫様がお生まれになってからは、隠居同然の生活を送っておられたのですが、姫様のあまりのおてんばぶりに、再び教育係に戻られたのですよ……今度は姫様ご自身の。
私とブライ様は、その時からの付き合いをさせていただいております。」
ブライ「あの頃はおぬしもいたいけで可愛らしい子供だったのにのぉ……いつしか食えない男になりおって。」
クリフト「じいさまの教育が良かったですから。」
トルネコ「?? つまり、お二人は──……部下同士という間柄というわけですか?」
クリフト「じい様と司祭様が昔馴染みですから、私にとっては、本当の祖父のようなものだと思ってます。」
ブライ「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃのぉ。何歳まで寝小便垂れてたかも知っておるからの、わしは。」
クリフト「……じいさま……っ。」
ライアン「ははははは。そういう小さい頃のことを知っている人というのは、頭が上がらなくなるもんだな。ブライ殿は、アリーナ姫だけではなく、クリフト殿にとっても頭の上がらない人ということか?」
トルネコ「クリフトさんもまだまだお若いですからね。そういう目上の人は必要ですよ。」
ブライ「まーだまだ若輩じゃの。さて、ライアン殿は……バトランドの生まれじゃったの?」
ライアン「ええ。まだやんちゃ盛りの頃に皇太子であらせられた殿下とお会いして、そのお人柄に傾倒いたしまして──下で働かさせて頂いております。
そうですね、もう15年にもなりますか。」
クリフト「失礼ですけど、今30を少し過ぎたくらいだとお伺いしましたが──まだ10代の頃から、ずっと……?」
ライアン「はい。バトランドは剣士の国──幼い頃から皆、剣士を目指して育ちます。」
トルネコ「ああ、そうですね。バトランドは周辺を山山に覆われていて、他国に攻められることはないのですが、代わりに孤立無援の地に近く、モンスターに攻め込まれたときに応援を頼むことが出来ない──それが故に、剣の腕が発達したのだと聞いてます。あの国の城の中には、教会が無かったのも覚えてますが、魔法や神聖術は、やはり……?」
ライアン「ええ、その方面に関しては、恵まれた子が生まれることはありません。──私がお世話になっていた孤児院でも、100人いて一人も居なかったほどには。」
クリフト「……………………サントハイムでは、孤児たちは教会にて預かりました。バトランドには、国の元に院があるのですね──それは、自由意志を育むために、いいことなのかもしれません………………。」
ブライ「………………ふぅ、む──クリフトよ。」
クリフト「はい。」
ブライ「おぬしは……幼い頃から神のために生きることを望まれ──強いられ、それを苦痛と感じているか?」
クリフト「──いいえ。……ただ、私は、少しばかり異端らしいですよ、じい様。
神を盲目的に信仰する信徒ではなく、神の加護を得られぬわけでもなく──ですから私は、『戦う神官』を選んだのですから。」
トルネコ「──人は、皆、多くの物を抱えて生きていくものなんですねぇ。
まぁ、皆さんも、家庭をもつといいですよ。」
ライアン「──……?」
トルネコ「そうすれば、きっと、自分が今まで思ってきたものとは違うものが、見えてくるはずですから!」
ブライ「ふぉっふぉっふぉ──そうじゃの。若い頃ほど深く考えて、案外答えは、すぐ近くに転がってるものじゃからのぉ……。」
オリジナル設定:ライアンとクリフトは孤児。ライアンは戦争孤児で国の孤児院で育つ。クリフトは司祭に拾われた子供で、教会の孤児院で育つ。前者は才能がないと言われながらも必死で剣の力を磨いた大器晩成型。後者は、その身に秘める魔力値の高さゆえに、教会と魔法使いの間で政治的やり取りを何度か行われた天才肌。
マーニャとミネアと、ブライとクリフトの魔力は根本的に違う種類のもの。前者は精霊や自然。後者は自らのうちに秘めた力。
勇者が宿すのは、その両方の力──本来なら混在されぬべき力を有したのは、彼女が神からも、天界からも引き剥がされて育ったが故。