小話1 自己紹介 勇者ロト編

DQ1・DQ2・DQ3


ユーザ「自己紹介? 自己紹介って……誰にするんだ? そんなものしても、しょうがないと思うけど?
 ────ああ、なんだ、ただのページ取りか、それならそうと言えばいいのに、まったく。
 俺はユーザ。故郷の村は、攻めてきた竜王の配下のヤツらに滅ぼされて、復讐を誓ってたトコロを、今の養父に拾われた。
 年は16。あまり人と付き合うのは好きじゃないけど、まぁ、義兄と養父は別。死にかけてた俺を助けてくれたし、何よりも──俺がロトの末裔だってこと、最後まで王様に隠そうとしてくれたわけだしさ。
 ま、結局? 俺が故郷の村から唯一持ち出した──正しくは、母さんからコレだけはもって逃げろって託されたブツによって、アッサリと正体ばれて、なんだかんだで竜王退治の旅に出ることになったんだけど。
 これが、養父と義兄への恩返しになれば、と思って旅に出たわけ……復讐にもなるしな。」
ローラ「ユーザは、とても優しい方ですわ。──あなたは、復讐と、そう口にしながらも……いつも心に迷いをもっておられる。」
ユーザ「買いかぶりだよ、ローラ。
 俺は、本当はただの弱虫で──あの村でも、一番剣も魔法も弱くってさ、全部中途半端だったんだ。
 でも、そんなヤツラが……魔物が攻め込んできたとき、真っ先に俺を逃がしてくれた。
 お前が一番弱いから、とっとと逃げろって……………………それが、精一杯のことだったって、知ってたけど、俺は、逃げたんだよ。」
ローラ「……違いますわ。あなたは、彼らの心をココに受け取ったんです。
 だから、今、あなたは強くなろうとしている。
 復讐のためではなく……守るために。
 わたくしには、それが分かります。
 だってあなたは、──まっさきにわたくしの身を案じてくださったではありませんか。」
ユーザ「ローラ……。」
ローラ「ユーザ…………。」
ユーザ「俺は、ローラ……この戦いで、この旅で──変われたと、思っている。
 昔に……過去に自ら囚われ続けていた俺を、皆が解き放とうとしてくれた。
 そして、ローラ……君が。」
ローラ「わたくしは、そんなあなたに勇気づけられましたわ。
 ですから、今度は……わたくしの身を守るためではなく、民を守るために、立ち上がることができましたの。
 ──わたくしたち、出会えて……とても幸福ですわね。」
ユーザ「ローラ。」
ローラ「ユーザ。」
ユーザ「……旅に出よう、二人で。
 広く世界を見よう──二人で、成長していくために。」
ローラ「はい、ユーザ。わたくしを、いつもあなたの傍に置いてくださいませ。」





ユリウス「…………………………なぁ、これって、自己紹介じゃねぇのか? なんか、先祖、違う気がするんだけどよ?」
カイン「うん、そうだよー。だから、ユーリも、ちゃーんと名乗らなくっちゃダメじゃない。
 あ、僕はサマルトリアの第一王子、カインです。で、こっちが、僕の幼馴染の、ローレシアの第一王子のユリウス。通称ユーリ。」
リィン「はっ、こんなバカ、ローレシアのバカ王子って言う表現で上等よ。
 ──ちなみに私は、ムーンブルクの第一王女、リィンです。皆からはリンって呼ばれてるわ。」
ユリウス「だれがバカだよ、おい。」
セシル「ユーリ様に決まってるじゃないの! ほら、どいてどいて! もー、いっつも気を許すと、ユーリ様って、お兄様の隣に居るのよね!
 こんな害虫に隣に居られたら、セシル、心配で心配で、夜も眠れないんだから!」
カイン「あれ? セシル? どうしたんだい、可愛い格好をして。」
セシル「お兄ちゃん! うん、あのね、この間、お父様が、私の誕生日プレゼントにってくれたの! だから、私、お兄ちゃんに見せようと思って〜v」
ユリウス「けっ、良くいうよ。お前、カインが居ないところでは、『お兄ちゃんって、のんびりやさんだから、きっとどこかに寄り道してるんだわ。』なーんて大人ぶった口調しやがるくせに、よくもまぁ、カインの前ではそうも可愛いこぶるもんだ。」
リィン「ユーリ! あんたね、もう少し女心ていうのを知りなさい! まったく。
 これで、顔と剣の腕ダケはいいもんだから、女にもてるっていうのが解せないわ。
 あんた絶対、女で苦労して、三回は結婚に失敗するタイプね!」
ユリウス「そりゃお前もだろ。つぅかさ、カインを男としてみてるセシルは問題じゃないのか? あいつら、兄妹だぜ?」
リィン「だから、男としてみてるのはソッチじゃなくって…………〜〜! ──ああ、もう良いわ。
 あんたに言うことじゃないしね。」
カイン「ユーリ! ユリウス! ちょっとちょっとvv」
ユリウス「ん? なんだよ、カイン? こんな隅っこで。」
カイン「ちょっと耳貸して。」
ユリウス「ん?」
カイン「………………言っておくけど、リィンに手を出す分には、同意なら許すけど、セシルに手を出したら………………メガンテかますからね?」
ユリウス「……………………って、おい、カイン!?
 どうしてリィン相手に同意ならいいんだ!!??」
カイン「リンが許すなら、別にいいよ、って意味。
 でも、セシルはダメ。可愛い妹は、君にはやれませーん。」
ユリウス「謝礼金貰ってもいらねぇよ……両方とも。
 俺はどっちかって言うと、ルビス様みたいなのが好みだなー。」
ごんっ!
カイン「女神様相手に、なんて不埒なこと考えてるんだよ、キミは!!」
ユリウス「だってしょうがないじゃん、いい女なんだからさ。」
セシル「……………………。」
リィン「どうしたの、セシル?」
セシル「お兄ちゃん……またユーリ様と顔くっつけてる。」
リィン「ああ、あの二人、いちゃつくほど仲が良いってヤツだから。」
セシル「でもね、私、この間聞いたんだけど、普通男同士は、額を寄せ合って会話しないらしいわっ!」
リィン「それは、女同士でもそうだと思うわ。」
セシル「それにね、背中の流し合いはするけど、布団で一緒に寝たりはしないんですって!」
リィン「女同士は、その逆は良く聞くわね。」
セシル「…………ユーリ様……やっぱり、お兄ちゃんみたいなのが好みなのかなぁぁぁ?」
リィン「……………………────────────……………………いや、あの二人は、そーゆーんじゃないと思うけど。
 っていうか、もう少し疑問持ちなさい、セシル。
 その、自分の思考回路に。」





シェーヌ「ん、今日も上天気! 旅立ち日和だぜ!
 あーっ、こういう日は、腕がウズウズするよなぁ! おい、フィル! ここらで一発、朝稽古としゃれ込もうぜっ!!」
フィスル「………………ぐー。」
シェーヌ「寝るなよ! 根性なし! つぅか、おーきーろーっ!」
リィズ「シェーヌさん、それくらいにしてあげてください。昨日も徹夜で見張りだったんですから、フィルさんは。」
シェーヌ「だからって、朝から寝てたら意味ねぇじゃん、こんなの。
 ったく、これでもアリアハンの王宮仕えの戦士の一人だって言うんだから、親父が居なくなってから、よっぽど人材に飢えてたらしいってとこだよなー。」
ティナ「もぐもぐもぐ……ンン。
 でもさー、シェーヌ? アリアハンって言うと、かの勇者、オルテガって……あんたのお父さんだったっけ? その人を生んだってだけあって、戦士の層に関しちゃ、相当良いほうよ? 実際、ロマリアの戦士達に比べて、フィスル、すっごく強かったもの!
 私が膝をつかされたのって、フィスルが初めてよ?」
リィズ「……そういえば、ティナは、ロマリア王国で、戦士に勝負を挑んでいたんでしたっけ。」
ティナ「うん、そう! それで、全然相手にならないから、いっちょ私がカンダタを倒してやろうって思ってたのよ。
 まー、そこでウッカリ勘違いして、フィスルに襲い掛かっちゃったんだけどね〜v」
リィズ「……あれは、ビックリしましたよ。フィスルさんが、ついウッカリ塔の最上階から一階まで落ちちゃって、追いかけていったら──ティナと戦ってたんですから。
 てっきり、カンダタの残党かと思いましたよ、ティナのこと。」
シェーヌ「フィルー! 起きろっ、おーきーろってばーっ! ──ったぁく、いじきたねぇなぁ。
 しゃーない、ティナ! いっちょ、相手してくれよ!」
ティナ「はいはーい! やるやる! 私も、食後の運動がしたかったのよねー!!」
リィズ「って、ティナ! ご飯の直後に運動すると、胃がもたれますよ!」
レヴァ「って、もう遅いですよ、リィズさん。」
リィズ「…………あ、レヴァ。おはようございます。」
レヴァ「おはようございます。相変わらず、シェーヌさんは元気ですね……。」
フィスル「ん、あいつは、昔っから朝には強いんだ。──低血圧のくせに、起きるのは、一瞬。」
リィズ「あれ、フィスルさん、起きてたんですか?」
フィスル「起こされてた──眼がさめてるって知ってたら、俺がアレに付き合わされるからな。」
レヴァ「…………はは、確かに、朝からあれだけの組み手は辛いですね。」
リィズ「私もシェーヌさんとは幼馴染ですけど──フィスルさんは、家がご近所なんでしたっけ?」
フィスル「ああ、すぐ近く。俺とシェーヌの剣の師も同じだしなー。ま、アイツはなじみの塔の老人ところに、魔法習いにも行ってたみたいだけど。」
リィズ「はい、私の祖父の所ですよね。」
レヴァ「……? それで、フィスルさんとリィズさんは、同じシェーヌさんの幼馴染なのに、お互いの顔は知らなかったってことなんですか?」
フィスル「そ。シェーヌに、こんな綺麗でべっぴんさんな幼馴染が居るってことすら、聞いたことはなかったけどな。」
リィズ「……綺麗で……って、あの、フィスルさん? 私、男ですけど?」
フィスル「おう、わかってる。それが悔やまれるほど、お前は綺麗なんだってこと、いい加減自覚しろよ、リィズも?」
リィズ「はぁ?」
レヴァ「それで言うと、シェーヌさんも綺麗ですけどね。」
フィスル「あいつは、性格がダメだな。──ま、女にはもててたけど。」
リィズ「そう言えば、そうでしたよね……レーベでも、ロマリアでも──そうそう、ノアニールでも、女の人に誘われてましたっけ。」
フィスル「そうそう。それを片っ端から断って、『興味ない』だからなーっ。ったく、男の風上にもおけねぇぜ、あいつは!」
レヴァ「え、でも……普通は、断るものなんじゃないんですか?」
フィスル「そりゃ、お前が教会で育てられたからそう思うだけだって!
 男なら、据え膳は食べないとなー。」
リィズ「フィスルさん! 私も、神につかえる身ですよ……その私の前で、そういう発言をされますか?」
フィスル「……っと、悪い。」
レヴァ「え、いや──それ以前に。
 ……前から思っていたんですが、お二人とも、シェーヌさんの………………幼馴染、ですよね?」
フィスル「ああ、そうだけど?」
リィズ「はい、そうです。」
レヴァ「……………………。」
シェーヌ「おらおらおらおらーっ! これでどうだっ!?」
ティナ「ふっふーん! 遅い遅い! こっちから行くわよっ!!」
フィスル「普通に黙ってりゃ、女顔の綺麗な男なんだけどな、シェーヌも。」
リィズ「オルテガさんにも、目の辺りが似ているそうですから、男前ではありますよね。」
レヴァ「……………………えーっと………………。
 ──────…………シェーヌさんが、女だってことは……隠されていることなのかな?
 それとも……本気で、きづいて、ない…………?」
シェーヌ「こらぁ! フィスルっ! てめっ、だぁれが、女顔の男だとぉっ!?」
フィスル「うわっ、聞こえてたのかよ、お前!? わりぃっ! シェーヌは、立派な、男前です!!」
シェーヌ「……っ! わかってねぇだろ、やっぱりー!!!!」
レヴァ「────シェーヌさん、女だってことを隠しているようには見えないのに……見えないのに。
 どうしてみんな、気付かないんだろう………………?」




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