グレ坊のラブラブ小話っ! と言いきれないのが悲しい話3



スイ「〜♪ 今日はグレミオと一緒に遊びに行こうかな?」

グレミオ「ぼっちゃぁーん。ぼっちゃぁーん?」

スイ「? グレミオ?」

グレミオ「ぼっちゃんっ! どちらにいらっしゃいますかぁ?」

スイ「こっちだよー。グレミオ、どうかしたの?」

グレミオ「あれ? ぼっちゃん、何してらっしゃるんですか、そこで。」

スイ「お弁当作ってるの。」

グレミオ「火を使うときは私に断って下さいといつも申し上げているじゃないですかぁ。」

スイ「僕が作らないと意味がないんだもん。」

グレミオ「ぼっちゃんがお料理上手なのは知ってますけどねー、だからって……え? 意味がない??」

スイ「うん、グレミオと外で御飯食べようと思ったの。」

グレミオ「…………グレミオのためにわざわざ……? ぼぼぼ、ぼっちゃんっっ!!(がばぁっっ!!)」

スイ「わざわざっていうか、グレミオが作るお弁当は恥ずかしい愛妻弁当だからというか……まぁ、いいんだけどね。」

グレミオ「それじゃぁ、早速行きましょうか?」

スイ「いいよ、仕事が終わってからで……ん? 誰か来たみたいだよ。」

グレミオ「はっ! こういう時に邪魔しにくる人と言えば、リオ君ですねっ!」

スイ「それはないはずだよ。今日は確か、料理勝負が入っているからとか言ってたから。」

グレミオ「そぉですかぁぁぁー? リオ君のことですからねぇ……。」



ルビィ「グレミオ、速達だ。」

グレミオ「はいはーい。って、あれ? ルビィさん? 何やってるんですか?」

ルビィ「バイトだ。ここに判をくれ。」

グレミオ「リオくんじゃなくって良かった……。大変ですねぇ、復興金集めですか?」

ルビィ「リオ……? いや、まぁ、マイホームにな……──。」

スイ「あれ? ルビィじゃないか。」

ルビィ「スイ……久しぶりだな。」

スイ「そっちこそ。元気してた?」

ルビィ「ああ──お前は少し肉がついたな。(ぐいっ)」

スイ「うわっ!」

グレミオ「るるるるるるるるるるる、ルビィさんっ!!? 何をやってらっしゃるんですかぁっ!? 私のぼっちゃんを抱きしめたりなんかしてぇぇぇっっ!!」

スイ「ルビィ……放してよ、もう……──。」

ルビィ「……元気になったな──。」

スイ「何? 心配してくれたの?」

ルビィ「そりゃ、突然いなくなったからな──キルキスも死ぬほど心配していた。」

スイ「うん、知ってる。泣き付かれたし。」

グレミオ「ルビィさんっ! ちょっとちょっとっ! 人の物に勝手にそんな……っ! 腰にまで手を回してっ!!」

スイ「ちょっとグレミオ、何その『人のもの』って?」

ルビィ「……相変わらずだな、お前らは。」

スイ「まぁね。それよりもグレミオ、その速達、なんだって?」

ルビィ「レスターからだったぞ。」

スイ「レスター? そういえば、最近シチューの店を開いたとか聞いたけど?」

グレミオ「ええ、そうみたいですね……え、ええっ!? これは……──大変なことになりましたね。」

スイ「? どうかしたの?」

グレミオ「ええ、そうなんですけどね──どうやら怪我しているらしくて。」

スイ「ええ!? それは大変じゃないかっ! お見舞いにでも……ん? シチューの店で、グレミオに手紙で……?」

グレミオ「そういうわけで、私に、レスターさんが回復するまで、手伝いに来て欲しいと……──。」

スイ「やっぱりそう来るかっ!!」

グレミオ「だって大変じゃないですかー。お店開いたばかりですし。」

スイ「それはそうだけど、いつ帰ってこれるかわかんないんだろう!?」

グレミオ「それはそうですね。」

スイ「………………むぅ。────グレミオと離れるの、ヤダ。」

グレミオ「ぼっちゃん……何もずっと別々じゃないんですから。」

スイ「何だよっ! グレミオは平気なの!?」

グレミオ「まさかそんなっ! ぼっちゃんがお生まれになってから、このグレミオ、ぼっちゃんが遠征に行っているとき以外は一度たりとも離れた事がないんですよっ!? にも関わらず、離れていて平気だなんてそんなとんでもないっ! 私だって身も心も切られるようですが、でも……今のぼっちゃんは、リオ君たちにお力もお貸ししていますし。」

スイ「…………僕も行く。」 きゅむ

グレミオ「ぼっちゃん……──。」

スイ「行くからねっ! 絶対に!」 ぎゅっ!

グレミオ「…………はい。」 きゅ。

ルビィ「……じゃ、レスターにそう伝えとくぞ。」

スイ「あれ? ルビィ、まだいたの?」

グレミオ「ぼっちゃん、それは可哀相ですよ……。」

スイ「いや、だってお前の十八番じゃん、これ。」



リオ「ええっ!? それじゃ、スイさん、シチュー屋さんでウェイトレスするんですかっ!?」

スイ「ウェイトレスじゃなくって、ウェイター。」

ナナミ「制服はメイド風ですかっ!? 絶対行きますねっ! 確かレスターさんのシチュー屋さんて…………。」

ビクトール「おう、ジョウストンの近くだ。昼飯に行ける距離だな。」

スイ「来なくていいよ、別に。」

グレミオ「……ぼ、ぼっちゃんのメイド服…………。」

スイ「想像しなくてもいいし、うちのメイドに着せてる制服を包まなくてもいいから。」

ビクトール「ああ、なんだ、お前んちにメイド服あるのかよ?」

スイ「うん、まぁね。今は雇ってないけど、僕が小さい頃はメイドが何人かいたんだよ、執事もいたんだけどね、継承戦争後から雇わなくなったんだ。」

ビクトール「財政が厳しくてか?」

グレミオ「そんなわけないでしょうっ!」

スイ「僕が攫われたことがあるからだよ。その時にさ、何人かのメイドが深い傷を負っちゃってね、それからじゃないの?」

グレミオ「……嫌なことばかり覚えてますね、ぼっちゃんは。」

スイ「僕にとっては嫌なことじゃないもん。グレミオが助けに来てくれたから。」

グレミオ「……ぼっちゃん。」 ぎゅーっっvv

リオ「あ、僕も僕も。」 ぎゅぎゅーっvv

ナナミ「私も私もーっ!」 ぎゅぎゅぎゅぎゅっ!!

ビクトール「おっ! それじゃぁ、俺も……っ!」

スイ「来なくていいっ!」

げしっ!!

ビクトール「俺だけ蹴る事ないだろっ!」


グレミオ「それじゃぁ、クレオさん、パーンさん、二人っきりの生活を楽しんでください。」

パーン「おうっ! 留守は任せておけっ!」

スイ「クレオ、部屋の鍵はきっちり閉めて寝なきゃだめだよ。」

クレオ「はい、ぼっちゃんもですよ。」

パーン「…………二人とも、なに笑顔で…………。」

グレミオ「そうですよ、ぼっちゃん。どちらにしても私とぼっちゃんは一つのベッドで枕は二つ何ですから。」

スイ「え? 枕は二つもいらないじゃない。」

グレミオ「? どうしてですか? はっ! まさかグレミオに床で寝ろとっ!?」

スイ「だって、どうせグレミオの腕枕で寝るもん。」

クレオ「……──グレミオ、間違えても坊ちゃんをはらませるんじゃないよ?」

グレミオ「いやですねぇ、クレオさん。出来るものなら、今ごろ5人くらいできてますよぉ。」

スイ「なな、なに言ってるのっ!? 全くっ! ほら、行くよっ! レパントが来る前にっ!!」

グレミオ「そうですそうです。レパントさんが来るとうるさいんですよねっ! 坊ちゃんとのお別れに絶対2時間は費やしますからっ!」

スイ「それじゃ、行って来ますっ!」

パーン「向こうから肉とか送ってくれよなっ!」

グレミオ「…………………………パーンさんはそればっかりなような……。」


スイ「えーっと? たしかこの辺だよね。レスターのシチュー屋さん。」

グレミオ「赤い屋根が目印だって言ってました。赤い屋根、赤い屋根……と。」

スイ「………………グレミオ。」

グレミオ「はい? あっ! もしかして、お疲れですか? なんなら、どこかで休んでから……。」

スイ「いや、そうじゃなくって……──。」

グレミオ「あーっ! そう言えばレスターさんのお見舞い品買ってませんでしたね。それですか?」

スイ「いや……あの、目の前。」

グレミオ「え? ……何々、翠月堂……?」

スイ「これじゃないの?」

グレミオ「赤い屋根……ああ、そうですねぇ。これみたいです。気付かなかったですねっ!」

スイ「……………………。」

グレミオ「ぼっちゃん??」

スイ「翠って…………いや、まさかね──っていうか…………。」

グレミオ「? どうかなさったのですか?」

スイ「ううん、なんでもない。ただ、レスターまでレパントみたいなこと、してないよね、って、思っただけ。」

グレミオ「ああ、部屋にぼっちゃんのお写真を飾ったりしてないかってことですか? あははは、まさかそんな……──。」

からんからーん♪

グレミオ「……………………っ!!?」

スイ「…………帰る。」

グレミオ「ああっ! ぼぼ、ぼっちゃんっ!!」

スイ「なんで店の壁に、僕の肖像画がかかってるんだよっ! 帰るっ! 帰るったらぁっ!!」

グレミオ「ダメですよっ! ここまで来てっ! グレミオを一人にしないでくださいよっ!!」

スイ「だって……っ!」

グレミオ「ぼっちゃんと離れなくていいと思ったんですから、責任は最後まで取ってくださいよっ!!」

スイ「………………なんだよ、それは……。」

グレミオ「ぼっちゃんが一緒だと期待していたのを裏切られたら、とっても悲しいってことです。」


スイ「レスター、店先のあの絵のことを追求するのは、怪我が完治してからにするよ。(にぃっこり)」

レスター「(だらだらだらだら)……はい、すいません。」

グレミオ「そうですよ、レスターさん。あの肖像画はいけません。もっと綺麗なのがあるはずです。」

スイ「そういう問題じゃなくって。」

グレミオ「まぁとにかく、あの絵は外しましょう。人様に坊ちゃんの麗しい姿を見せるのはもったいないです。」

スイ「──親ばかだなぁ、グレミオは。っと、ところでレスター。この店、他に店員さんいないの?」

レスター「ええ、この間まではいたのですが、近くに定食屋が近々オープンするのですが、ソコのほうが待遇がいいからと……──。」

スイ「成る程……ってことは、ウェイターは僕一人ってことか。」

グレミオ「そして、厨房は私一人ですか。」

レスター「すいません。バイト募集はしてるのですが……。」

スイ「まぁいいよ。つまり、飢えない程度に客が入ればいいんだろ?」

レスター「そうですね。」

グレミオ「それじゃぁぼっちゃんっ! 今から接客とメニューを覚えましょうっ!」

スイ「……こんな感じ? いらっしゃいませ。(にっこり)」

レスター「………………。」

グレミオ「………………っ!!!」 ぎゅむーっっ!!

スイ「グレミオ〜?」

グレミオ「か、カワイすぎです。それは、ダメです。」

スイ「ダメって、あんた……──。」

レスター「そうですね、その笑顔はダメですよ。それを見せると、絶対お客さんは注文することすら忘れますからっ!」

グレミオ「そうですそうです。その笑顔だけでお腹いっぱいになっちゃいますよ!!」

スイ「ならないならない。」


スイ「いらっしゃいませ〜。」

リオ「スイさぁーんっ! さっそく食べにきましたvv」

スイ「…………来なくていいのに。──いらっしゃい。」

フリック「へぇ、結構しゃれた店だな。……ん? あそこの壁だけ色が違うみただけど?」

スイ「……こういうことだけ気付くんだよな、フリックは。日焼けしてないからだろ、壁が。」

フリック「ああ、そうか。ってことは、今まで何か飾ってあったってことだよな?」

スイ「じゃないの? 僕も最近店に来たばかりだから、よくわからなくって。あ、これメニューね。決まったら呼んで。じゃ。」

ビクトール「そっけねぇなぁ。あいつ、あれでほんとうにウェイトレスなんて勤まるのか?」

リオ「どんなのでもスイさんだと思ったら、勤まるんですよぉ。」

ナナミ「それに結構混んでるよね。うわ、おいしそー。」

フリック「ランチタイムっていうのもあるんだな。何々? シチューと、ライス、パンのセレクト、飲み物、サラダ、デザート。」

リオ「スイさんの笑顔ってないかな?」

ビクトール「ないない。」

スイ「いらっしゃいませ。手前失礼いたします。……こちらメニューになります。本日のランチセットはAランチからCランチとなっております。よろしかったらご利用下さい。それでは、ご注文が決まりましたらお呼び下さい。」

リオ「あそこで笑顔ふりまいてるスイさんが……っ!!」

ナナミ「いいなぁ、お客さん。見蕩れてる……。」

フリック「あいつ、接客できたんだな。」

ビクトール「グレミオの料理はうまいし、ウェイトレスはあれだし、こりゃ、これから来るの大変だぞ?」

ごんっ!

スイ「ウェイターだってば。」


グレミオ「あれ? すいません坊ちゃん、デザートの単品メニューなんですけど、アイスクリームは売り切れになったので、断ってくださいますか?」

スイ「え? ああ、いいよ。」

グレミオ「………………………………器用ですねぇ、ぼっちゃん。右手に皿を三枚も持って。さらに腕にまで乗せて。」

スイ「ファミレスの技を覚えて見たんだ。ちょっと練習したけどね。」

グレミオ「さらに頭にも乗せたらもう曲芸ですね。」

スイ「それは流石にいやかも……あ、グレミオ、ランチタイム終わったら、いったん店閉めるんだよね?」

グレミオ「ええ、そうなりますね。そのときにアイスクリームの材料を買いだしに行きましょう。」

スイ「僕も行く。」

グレミオ「先ほどから走り回られて大変でしょう? いいんですよ、休んでいてくだされば。」

スイ「いいの、デートみたいじゃない。」

グレミオ「………………ああ、ぼっちゃんがお皿を持っていなければ抱きしめられるのに。」

スイ「…………また、後でね。くす。」

グレミオ「はい、それではあと一時間、頑張りましょうか。」

スイ「うん、そうだね。」


スイ「あ、グレミオ。あれ……。」

グレミオ「? ……あ、ああ、新しくできるお店ですね。もう完成みたいですよ。」

スイ「看板できてるね。」

グレミオ「えーっと、店の名前は──………………。」

スイ「不吉だね。」

グレミオ「ですねぇ。」

スイ「ライバル店ができるのは嬉しいんだけどね。暇になるから。」

グレミオ「……(苦笑)、まぁ、ぼっちゃんががんばってくださっているから、お客さんがたくさん入ってますしねぇ。」

スイ「嬉しくないね……。」

グレミオ「そうですか? うーん、そうですねぇ、ぼっちゃんの魅力が他人に知れるのも考え物ですよねぇ。」

スイ「?? なに、それ?」

グレミオ「この数日で、ぼっちゃんも町の有名人になったなぁ、ってことです。」

スイ「ゆうめいじん?? 何が?」

グレミオ「そうですねぇ。ぼっちゃんが有名人になってしまうと、私のライバルがたくさんになっちゃうってことですよ。」

スイ「そうしたら、グレミオはどうするの?」

グレミオ「そうですねぇ、誰も手が届かないところに、駆落ちでもしちゃいましょおうか。」

スイ「駆落ちなの? 闘ってくれないの?」

グレミオ「だって、ぼっちゃんの大切な方もいらっしゃるかもしれないのに、怪我をさせるわけにはいかないでしょう?」

スイ「──そういうときは、そこまで気をつかわないほうがいいと思うよ。」



グレミオ「あれ? 今誰か……。」

スイ「? そのライバル店? クラウディア……あー、名前出すだけでも不吉。」

?「誰の名前が不吉だってぇ?」

グレミオ・スイ「…………っ!!!? そっ、その声はっ!」

クラウディア「ふふ、久しぶりだねぇ、マクドールの坊や。」

スイ「あー、出たよ、ケバイおばさん。」

クラウディア「けけけけ、けば……っ!!? あんたね、自分が若いからっていい気になってっ! あんたもそのうちしわしわのくちゃくちゃになっちゃうんだよっ!」

スイ「でも僕、不老だし〜。」

グレミオ「そうですよっ! ぼっちゃんの身体はやわやわのふよふよで、すべすべでつるつるで弾力もあって、毛も薄いし、それにあれもピンク色で……!」

がこんっ!

スイ「グレミオっ! 何言ってんだよ、お前はっ!!」

グレミオ「だってぼっちゃ〜んっ!」

クラウディア「ふん、ま、そんなことはいいんだよ。それよりも……あんたたち、そこのシチュー屋ではたらいているそうだね?」

スイ「だから死ぬ気でお客さん獲得してね。」

クラウディア「はっ、この私相手に挑戦かい?」

スイ「良かったね、グレミオ、クラウディアのおばさんが頑張ってくれるから、これで店も暇になるよv」

クラウディア「ちょ、ちょっとお前、私の話をお聞きよ。メニューも品揃えを揃え、ランチメニューも豊富で、何よりもウェイトレスに可愛い女の子を……──って、こら、スイ=マクドールっ!?」

スイ「あー、よかったよかった。早くあかないかな〜、クラウディア食堂♪」

グレミオ「だから、お客さん減ったら減ったで問題はあるんですよ。わかってます、ぼっちゃん?」

スイ「いいんだよ、べつに♪」


続きを見ます??