「お汁粉マジック」 ジョウイ「…………ねぇ、リオ?」 リオ「何も言わずに食べて。」 ジョウイ「いや……食べる、食べるよ? でも……ちょっと聞きたいんだけどね?」 リオ「食べるのは当たり前。僕が言ってるのは、何も言うなってことなの。」 ジョウイ「言いたくなると思うんだけど……コレって、お汁粉だよね?」 リオ「苦労したんだよ? ナナミがどうしてもぜんざい作るって言うから、そんな高度なテクニックは無理だって説き伏せるの。」 ジョウイ「そう……そうだね、ナナミぜんざいは困るよね……。 どうしてナナミって、見た目はちゃんと形になってるのに、色とか、香とか、具材とかが違うモノを作るんだろうね?」 リオ「アンコから作るって言うのだって、グレミオさんから貰ったあんこがあるから、って、止めさせたんだよ。」 ジョウイ「そう……それじゃ、コレでもマシな方なんだ……。 ……っていうか、どうしてグレミオさんから貰ったあんこを使ってるのに、こんな色とか匂いがするんだ……?」 リオ「多分ね〜、ジョウイが持ってる方は、ナナミが『ジョウイはコーヒーが好きだって言ってたから、アンコを水じゃなくってコーヒーで溶いてあげよう! ──あっ、ミルクもいるよね!』って、言ってたからだとおもうよー。」 ジョウイ「…………こ、コーヒーとミルク…………っ、か……っ! それならせめて、抹茶で溶くくらいにしておいたほうが……っ!」 リオ「いや、案外、黙って飲めば美味しいかもしれないよ、ジョウイ。」 ジョウイ「うぅ……、……じゃ、リオ? 君のソレ……さっきからなんだか、柑橘系の匂いがするのは──どうしてかな? 香付けに柚子とか、風流にお餅生地に柚子の皮がすりこんであるとか、そういうオチじゃ……ないよね?」 リオ「ナナミ、いまさ……、オレンジジュースとグレープフルーツジュースのミックスに嵌ってて……味も分からないくせに……。 で、今回、それとアンコを……………………。」 ジョウイ「……………………………………。」 リオ「食べてね、ジョウイ。 ちゃんと最後まで、一滴も残さず、食べてね? そうしないと僕が、残り全部食べるハメになるんだから……っ!!」 ジョウイ「分かってる……分かってるよ、リオ……っ! これが毎年の、僕と君との運試しだってことくらいは……っ! 年の初め早々からおなかを壊すか、無事に壊さないか……っ! それで毎年、僕たちは今年の運勢を占ってるじゃないか……っ! そうだよ、たとえ心から恐かろうとも、ちゃんと食べるよ、食べるに決まってるだろう──……っ! …………くっ……。」 リオ「ごめんね、ジョウイ──……それでも僕だって、頑張ったんだ……頑張ったんだよ、これでも──。」 ジョウイ「分かってる、わかってるよ、リオ。 ただ、その──どうしても、お汁粉だって言うのに、コーヒーのにおいがするのが、疑問だっただけなんだっ! ついでにどうしてか、正露丸みたいな匂いもするんだけど、ナナミ、まさか去年みたいに、『苦い漢方薬も、お汁粉の中に入れれば平気かと思ってv』とか言って、漢方薬とか入れてないよねっ!!?」 リオ「あ、それは違うよ、ジョウイ。」 ジョウイ「違うって……それじゃ、ただのお汁粉とコーヒーの匂いが混じっただけの……?」 リオ「それはね、僕が、どうせ今年も胃を壊すだろうと思って、前もって入れておいた正露丸の匂……。」 ジョウイ「リーオォォォーっ!!!! 正露丸は下痢のクスリだろっ! 下痢止めだろっ!! なんで胃薬じゃないんだっ!!」 リオ「──あっ、そっか! そうだよねっ! 正露丸って下痢止めだったっけ!!」 ジョウイ「もう! どうしてくれるんだよ、コレ! っていうかリオ!? 君一体、何錠くらい入れたのさ!?」 リオ「残ってるの全部。」 ジョウイ「リィィオォォォーッ!!!!」 リオ「まぁまぁ、ジョウイ、それならそのいろんな色が混じってる汁は飲まずに、お餅を食べて、口直しでもしてさ、ね?」 ジョウイ「まったくもう、お餅でしか口直しできないお汁粉ってどう……────。」 リオ「ま、それがナナミのお汁粉だから──……って………………何、このお餅?」 ジョウイ「…………青いよ?」 リオ「──……青いね。」 ジョウイ「……えーっと……草もち?」 リオ「アオカビ?」 ジョウイ「……うわ〜……伸びてる部分も青い……。」 リオ「……青いね…………。」 ジョウイ「………………。」 リオ「ナナミ……何を入れたんだよ……本当に…………。」 |