君はきっと幸せになる













 遠くで、フクロウの鳴き声が聞こえる。
 目を閉じて耳を済ませれば、すぐ近くを通り過ぎた風が、この村を囲うように覆っている木々の葉を揺らしていく。
 その音が、まるで細波のようで──まるで、海の中に居るようだと、そう思った。
 ツン、と鼻を刺激する匂いを胸の中に吸い込みながら、ティトスは、ゆっくりと双眸を開いた。
 目に飛び込んできたのは、口元まで漂う白い湯気。
 暖かな半透明ににごったお湯の表面が、胸下の辺りで揺れている。
 体の隅々まで染み渡るような優しい暖かさに、ティトスは懐かしい気持ちになって、す、と目を細める。
 ぴしょん、と、水滴が落ちる音がした。
 サラサラと、微かに水が流れる音が重なって聞こえる。
 ひんやりと涼しい──静かな夜の空気が頬を撫で、体は温かなお湯の流れを感じる。
 その心地よい感覚に、このまま眠ってしまいそうな幸せを覚える。
 そうだ──こういう時は、なんていうのだって……父さんは教えてくれたんだっけ?
 幼い頃に死に別れたきりの父の顔を脳裏に思い浮かべながら、ティトスは首を緩く傾けて──あぁ、そうだ、と、小さな笑みを零す。
「……ん、極楽、極楽。」
 とたん。
「ぷっ……。」
 ティトスの背後から──宿に続く野外脱衣所のある方向から、若い娘の笑い声が聞こえた。
 その聞き覚えのある声に……正しくは、つい数時間前に再会した幼馴染の声に、ティトスはビクンと肩を跳ねさせる。
 ぱしゃん、と湯音を立てて、慌ててティトスは鼻の下まで湯に浸かる。
 ぶくぶくぶく……、と泡が彼の口から零れだす。
「ちょっと、ティト。それ、あまりにもオヤジ臭いんじゃないの?」
 あなた、それでも私よりも二つも若いの? ──と。
 楽しそうに喉を鳴らしながら、ビアンカが脱衣所の扉を開く。
「び──ビアンカっ!?」
 ぺと、と、素足でこちらに近づいてくる音が聞こえて、ティトスは体を大きく震わせた。
 まさか──まさか、ビアンカも、入ってくるとか言うつもりなのだろうか?
 確かにこの温泉は、混浴で──この山奥の村の人たちは、日常的に……それこそ井戸端会議の場所として使っているくらい、普通に入っていると言っていたけれども。
 そう言えば、ビアンカも、毎晩夜遅くに入っていると言っていた。その時間だと、他に誰もいなくてゆっくりできるから……つい、泳いでしまうのだ、と。
「ごめんね、突然。ビックリした?」
 ひたり、と、ティトスのすぐ背後で足音が止まる気配がして、ティトスは思わず膝を抱え寄せた。
「あ、う、うん。」
 ティトスのすぐ背後で、ビアンカが跪いたのに気づいて、ティトスは口から心臓が飛び出してしまいそうな気持ちになった。
 山奥の村の人たちは、混浴でもなんとも思わないかもしれないけれど──ティトスはそうは行かない。
 ただでさえでも、幼い頃からずっと、女性にまともに接したことがないのだ。
 小さい頃に接した女性と言えば、ビアンカと彼女の母──そうして、妖精のベラやポワン様くらいのものだ。
 長じてからは、奴隷として毎日クタクタになるまで働いていたので、まともに話した女性といえば、それこそマリアさんくらいのもので。
 ちなみに、マリアさんには、最初からヘンリーがメロメロだったので、ティトスはそれに振り回されるばかりで、そういうのを意識している暇がなかったのだ。
 それほどまでに免疫のないティトスは、幼馴染とは言えど、美しい女性に成長していたビアンカと一緒にお風呂に入るなど──考えただけで、気絶してしまいそうな緊張に駆られた。
「び、びび……ビアンカ?」
 ごくん、と、喉を上下させたところで、
「ほら、ティト、石鹸とタオル、ここに置いておくからね。」
 ことん、と──ティトスが凭れている岩の隣に、ビアンカは持ってきていた物をおいた。
「──石鹸と、タオル?」
「ええ、うっかりしてたのよ。
 私たちは、宿屋のおじさんに預けっぱなしだから、入る時に、そこで受け取るだけだから。」
 ふふふ、と笑うビアンカは、どうやら風呂に入るために裸になったわけではなく──靴を脱いでハダシになっただけのようだった。
 ティトスはガックリしたような、微妙な気持ちを覚えて、はは、と笑う。
「ここ……、体を洗っても大丈夫なんだ?」
「ええ、そっちに洗い場があるでしょ? あそこで洗うのよ。
 ……って、やだ、ティト。あなた、頭も顔も洗ってないじゃない。汚れがついてるわよ。」
 す、とビアンカは体をかがめて、ティトスの顔を背後から覗き込む。
 そのまま、顔を歪めて、指先で彼の頬についた汚れを拭い取ろうとする。
 無意識の──まるで警戒もしていない仕草は、姉や母のような雰囲気が漂っていた。昔の、おせっかい焼きのビアンカそのものだ。
 間近に近づいた彼女の美貌に、ティトスはギクリと肩を揺らす。
「ぅわっ、び、ビアンカっ!」
 非難の声をあげて、ティトスはお湯の中で大事なところを隠しつつ、右へ数歩尻で移動する。
 逃げるティトスに、ビアンカはキョトン、と目を瞬いた。
「何よ、どうしたの、ティト?」
「ど、どうしたのって……僕、裸なんだけど──……っ。」
 更に近づいて覗き込もうとするビアンカに、ティトスは頬を赤らめて、更に後ず去りする。
 ビアンカは、恥ずかしそうに顔をクシャリと歪めるティトスを、マジマジと見つめて──プッ、と噴出した。
「──……、やっだ、ティトスったら! もしかして、恥ずかしいのっ?」
 バンッ、と、むき出しの肩を軽くどついて、あははは、とビアンカは笑う。
 快活な笑い声は、湿気に満ちた温泉場に、楽しげに良く響いた。
「はっ、恥ずかしいに決まってるだろっ。」
「やだ、ごめんごめん、そうよね、ティトスは恥ずかしいわよね〜。」
 ふふふ、と笑いながら、ビアンカは、ス、と立ち上がる。
 とがめるような視線を向ければ、ビアンカは首を傾げて──イタズラ気に双眸を緩めてみせる。
「もう、そんなんじゃ、背中も洗い流してあげられないじゃないの。」
「いらないよ……。」
 ぶす、と軽く唇を尖らせて──ぶくぶく、と再びお湯の中で泡を吐く。
 そんな彼に、軽く笑い声をあげて、ほら、早く洗いなさいよ、と言いかけたビアンカは……そこでふと、
「──……あ、そっか。」
 今の今までからかうような口調だったトーンを、一段階落として呟く。
 その、少し沈んだように聞こえる声に、ティトスは無言で目線をあげる。
 ビアンカは、岩場に両膝をついたまま、俯いていた。
「ビアンカ?」
「……あ、ううん、なんでもないのよっ。」
 怪訝そうなティトスの呼びかけに、慌てたようにビアンカは両手を振った。
 そして、とってつけたかのような笑顔を──けれど、筋金入りの、綺麗なよそ行きの笑顔を浮かべると、
「ただね、ほらっ、久しぶりに会った弟分の背中を流してあげたいのは山々なんだけど、さすがに……フローラさんに、悪いかなっ、って思っただけなのっ。」
 気にしないで、と、ビアンカはことさら明るい声でそう続けた。
 その言葉に──ビアンカの口から出てきた女性の名前に、ティトスは喉がつっかえたような気持ちになった。
 フローラ。
 その人は──今、ティトスが「求愛」していることになっている女性の名前だ。
 ビアンカと再会してから、互いの色々なことを話し──その中で、ティトスは彼女の名前も、当たり前のように出したのだ。
 生まれて初めて出会った、清らかで美しい女性──優しい笑顔と、心根のひと。
 女性にまるで免疫のないティトスが初めて──「女性」というのを意識した対象の人でもあった。
 近づけば甘い優しい香がして、触れたら壊れてしまいそうにはかなくて、柔らかくて。
 彼女が妻になるかもしれない、という未来は──酷くティトスの心に甘やかなものをもたらしてくれた。
「それ以前に、僕がイヤだよ。──恥ずかしいじゃないか。」
 何とも言えないものが心の中に蘇ってきて、ティトスはそれを誤魔化すように、ぷい、とビアンカから顔を背ける。
 そうすれば、ビアンカは片眉を跳ね上げて、
「あらっ、何よ、ソレ。」
 ぷく、とビアンカが幼い仕草で頬を膨らませた。
「今更恥ずかしがるような仲じゃないでしょっ。小さい頃なんて、私、あなたの頭を洗ってあげたことだってあったし、オムツを変えてあげたことも……。」
「オムツはないだろ。僕とビアンカは、二つしか違わないんだから。」
 お姉さんぶって、腕を組みながら胸を張ってそういうビアンカに、ティトスが言えば、彼女は片目チラリと開けて──ぺろり、と舌先を出して笑った。
「あら、わかった?」
「分かるよ、もう。
 ほら、いいから、出てってよ、ビアンカ。」
 ぱしゃん、とお湯を跳ねてそう言えば、彼女は飛んできた飛沫を避けながら、ヒョイ、と肩を竦めて身軽に立ち上がる。
 そんな仕草に、小さい頃に一緒に冒険したあの日の記憶が蘇ってきて、ティトスは双眸を細めた。
 そのまま出て行ってくれると思ったティトスの意図に反して、ビアンカは宿へと続く扉の前で、ふと足を止めた。
 そして、チラリと肩越しに後ろを振り返る。
 ティトスは、手の平で肩の辺りをさすりながら、立ち上がるところだった。
 ばしゃん、と水音を立てて立ち上がったティトスの背中に、ビアンカはビクリと軽く肩を跳ねさせる。
 幼い頃──一緒にお風呂に入ったり水浴びしたりした時は、ティトスの背中は小さくて、自分の小さな手の平でも、綺麗に隅々まで洗い上げることが出来た。
 けれど、いま、目の前に立つティトスの背中は、とても広くて大きくて……たくましくて、まるで、パパスの背中を見ているような既知感を覚えた。
 けれど、パパスの背中と違うのは、たった一つ。
 ティトスの背中には、無数の細かな傷がついていた。
「──……ティト……。」
 きゅ、と眉を寄せて、ビアンカは彼のしなやかな背中を見つめた。
 今は夜だから、良くわからなかったけれどその傷跡は──ふるい物も混じっているようだった。
 最後に別れたときには確かになかった。
 なのに──どうして今、その背にはこれほどの傷跡があるのだろう。
 ビアンカは、ふらり、と、ティトスの傍に近づいた。
 は、と気づいたティトスが、驚いたように彼女を振り返り──わっ、と声をあげて、慌ててお湯の中に身を再び沈めようとした、その瞬間、
「ティト……っ。」
 ビアンカは、衝動のままに、彼のぬれた背中に抱きついていた。
「──……び、ビアンカっ!?」
 驚いたティトスが呼ぶ声を耳に、ビアンカは彼の傷だらけの背中に頬を寄せ──その両手で彼の腕を掴む。
 そして──ぐ、と目を閉じた。
「ちょ、ちょっと、ビアンカっ?」
 どうしたんだよ、と続けるティトスに、彼女はそのまま──フルフルと力なく首を振った。
 ティトスに頬を押し付けたままの状態なので、それはティトスの背中に振動としてしか伝わらなかった。
 顔を真っ赤に染めて──耳まで赤くしながら、ティトスはお湯に浸かろうとした中途半端な体勢で、ビアンカを振り返る。
 しっかりと自分の背中に抱きついた格好になったビアンカの姿は、けれど、優しいひまわり色の髪以外、見えることはなかった。
「ティト……、ティト、ティトス。」
 すがりつくように、弱弱しくビアンカは呟く。
 彼女の手の平は、微かに震えていた。
「なに、ビアンカ? どうしたんだよ?」
 さっきの今で、一体、何が彼女にこのような衝動を起こさせたというのだろうか?
 何も分からなくて──何が起きているのか、全くわからなくて、ティトスは困ったように眉を落とした。
 ビアンカを振り払おうにも、自分の両腕はしっかりと彼女につかまれている上に、温泉の上から出かかった体は──裸だ。すっぽんぽんだ。
 そんなことをしたら、丸見えになってしまう。
 うぅぅ、と、ティトスは顔をあげて、羞恥に耐えながら唇を一文字に結んだ。
「……ごめん、ティト──、もう少しだけ。」
 頬を離して、ビアンカは自分の目の前に広がる広くたくましい背中を見つめた。
 間近で見れば、そこに刻まれた傷跡が、いろいろな形をしているのが分かった。
 古い火傷のような跡──これはきっと、パパスおじさまを失ったときの怪我だろう。これが一番古く……そして、幼い体を思えば、一番大きい傷のようだった。
 その上から重なるような裂傷は、縦や横にと、縦横無尽に背中一面に走っている。
 奴隷時代の──ティトスは、笑って、「僕とヘンリーはしょっちゅう歯向かってばかりで、良く叩かれたんだよ」と軽く言っていた。
 でも、ムチの痛みは知らないけれど、そこから逃げ出して数ヶ月以上経過した今でも、こうして残っているなんて……とても辛かったことだろう。
 この傷は、きっと、一生ティトスの背中に残るのだろう。
 彼はそうして、過ごしてきた辛い日々を、背中に負っていくのだ。
 今も──これからも。

 その時、傍にいる女が──フローラさんが、ティトスの心を癒してあげられたらいい。

 そう思って……ビアンカは、あら、と思った。
 ジンワリと、喉と瞼が熱いと思ったら……ほろりと、頬に涙が伝っていた。
 ぽろぽろと、涙が眦から零れていった。
「ビアンカ……濡れるよ。」
「……うん。」
 気遣うように、そ、と肩越しに振り返るティトスに見られないように、ビアンカは額を彼の背中に押し付けて、小さく頷く。
 そんな彼女に、ティトスは苦笑を浮かべたけれど、何も言わなかった。
 彼はきっと、自分の背中がどのようになっているのかなんて、知らないのだろう。
 それを見つめた自分が──今、どんな気持ちで居るのかも。
「ビアンカ……僕、寒いんだけど──。」
 風邪を引きそうだよ、と弱音を吐くティトスに、ビアンカは、ふふ、と笑った。
 その拍子に、眦に溜まった涙が、再び頬をこぼれた。
 ティトスの背中を──彼の人生を労わるように、彼女は彼の背中に手の平を押し当てる。
 私は、ティトスと違って、癒しの呪文を使えない。
 だから、この傷は癒してあげられないし──これから彼が負っていく傷も、癒してなんかあげられない
 けれど──フローラさんなら、それが出来る。
 できるんだわ。
 そう思えば、なんだか切なくなってきて、ビアンカは目の前に見えた広い背中の──肩甲骨の下辺りを、えい、と軽く爪先でひねった。
「──……っ! ちょ、ビアンカっ!!?」
 びくんっ、と反り返った背中に、あはは、と笑いながら──ビアンカは、手の平で乱暴に涙を拭い取った。
 ばしゃん、と湯を跳ね上げるティトスから、後ろ足で数歩下がる。
「なにするんだよっ。」
 もうっ、と、それでも律儀に体は前に向けたまま、肩越しにこちらを睨むティトスに、ビアンカは綺麗に……辛いときも、寂しいときも、そうやってきたように、とびきりの笑顔で笑いかけると、
「幸せになりなさい、ティトスっ!」
 手の平を後ろ手に組んで、ね? と、彼を見上げるようにして小首を傾げて笑った。
 そんなビアンカに、ティトスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になると──、少しだけ困ったような笑顔で、うん、と、一つ頷いた。
 その笑顔にも、どこか幸せの色が滲んでいる気がして……ビアンカは、ニコリと笑い返しながら──あぁ、と、切ない気持ちを飲み込んだ。
「じゃ、ごゆっくり。」
 ヒラリ、と手の平を揺らしながら、ビアンカは元来た道を歩いていく。
 ひたひたひた、とハダシで歩く床は、行きは冷たく感じなかったのに、今は──底冷えするように冷たく感じた。
 宿へと続く扉を開こうとすれば、後ろでバシャ、と短い水音が立った。
 ティトスが湯から上がったのか、それとも湯に入ったのか──分からなかったけれど、もうビアンカは振り返ることはなかった。


 だって、彼は──妻になる女性が、いる人なのだ。


 ティトスは、私の大切な弟分で幼馴染。
 昔、一緒に冒険をした仲間。
 だから。
「──……うん、ティトには、幸せな結婚をしてもらいたいもの。」
 小さく……心からの思いを、そ、と唇に乗せて。
 ビアンカは、優しく、とろけるように優しく微笑む。
 幸せな結婚をして、優しくて綺麗なお嫁さんと一緒に──彼は、幸せな人生を歩むのだ。
 それは、とても幸せな光景だった。
 そのために──私には、何が出来るのだろう?
 宿のおじさんに礼を言って外に出て──降るような満天の星を見上げながら、ビアンカは、そ、と息を吐いた。
 山の空気は変わりやすく、夜にもなれば、肌寒いほどの冷え込みがあった。
 吐いた息が白く色づき、す、と空気に溶けて消えていく。
 美しい星明りを見ながら、すぐ傍にいる幼馴染のことを脳裏に描いて、ビアンカは、キュ、と唇を一文字に引き結んだ。
 そして、やおら自分の両手を見下ろすと──いつもは気づかないフリで眠らせていた力を……魔力を、そ、と手の平の間に集めた。
「……メラ。」
 小さく呟けば、ぼっ、と明るい火が燃え立つ。
 幼い頃は、この呪文でティトスを助けたものだった。
「──うん、よし。」
 大丈夫。
 小さく笑みを乗せて、ビアンカはメラの炎を空中に掻き消した。
 大丈夫──大丈夫。

 私は……笑って、この恋に終わりを告げることができる。
 自覚したばかりの、消してしまわなくてはいけないこの想いを──、終わらせてあげることが出来る。
 そのために。

「ティト。──あなたが少しでも早く、幸せになれるように……一緒に、がんばらせて。」
 いいよね? と、宿の壁の向こう側に居るだろうティトスに向かって、問いかける。
 もちろん、答える声はなかったけれど──幼い頃のように、否やを言わせるつもりは、ビアンカにはサラサラ無かった。
 あの時は、プックルを助けるためという目的があったから、何が何でもイヤだなんていわせるつもりはなかった。
 けれど今は、誰かを助けるためでもなければ、どうしてもビアンカが出張らなくてはいけないわけでもない。
 危険度も、多分、あの頃よりもずっと高いことだ。
 更に言うならば、女性の身である自分が出て行くことで、フローラの気持ちを千々に乱してしまうこともあるかもしれない。
 けど──どうしても、譲れないの。
 だって。
「私、あなたが幸せになるのを、見届けたいのよ。」







 はじめてすきになったひとだから。
 











主フロだと、ラブラブいちゃいちゃになるのに、主ビアだと、切ない片思いに見せかけた両想い、を書くのが好きだっ!!


ということで、5主が水のリングを取りに山奥の村に行ったその日の夜のシーンですv
設定としては、再会してすぐくらいは、二人とも自覚が全くなく、まさに久しぶりに再会した旧友とか、姉弟みたいな感覚なんですね。姉分、弟分、みたいな。
で、ビアンカが突然こんな風に自覚して──、それから、5主が自覚するんですね。5主は恋愛と程遠い世界を歩いてきたので、気づくのは物凄く遅いです。下手すると花嫁決め前夜(爆)

5主はフローラに対しては、頼りがいのある男風な雰囲気が満々ですが、ビアンカに対してだと、ちょっと子供じみた部分が出てきます。
その違いがうまく表現できたかなー?

あ、ちゃんとこれ……主ビアになりますよ?(笑)
だってうちの主フロでは、ビアンカは5主のこと、なんとも想ってませんから(大笑)