スゥイート・ハニー










 今日も今日とて、神羅の一兵としての通常任務の後に、特別任務を遂行──後。
 ミッドガルでも有数の酒屋街の一つである、お洒落なバーの店員達にニコヤカに見送られて――なにも初見客相手に……、しかも延々とノンアルコールカクテル一杯で(本来なら、特務の経費から落ちるのだけれど、今回の聞き込みに使ったバーでも、なぜか黒服の店員が奢ってくれた)二時間も居座った客相手に、
「店員全員で見送ってくれなくても……。」
 淡いルージュに縁取られた唇に隠して、げんなりとつぶやきつつも、「クラウディア」は笑顔で「優しくしてくれた店員」たちに会釈をしてみせた。
 とたん、彼らは一斉に頬を赤らめ、先を競うようにガバッと頭を下げた。
「またのご来店を、心よりお待ちしておりますっ!!」
「…………っっ。」
 威勢の良い声に、思い切り引いたクラウディアは、ひきつった笑顔でもう一度会釈すると、あわててきびすを返して歩き出した。
 その背中を、男たちは惜しむように見つめてくる。
 こぞって店の前でこちらを見守る店員たちの態度に──普通ならありえないその様子に、道行く人が不思議そうに振り返っている。
 その気配を感じながら、クラウディアは肩甲骨の辺りで揺れる金色の髪を跳ねさせて、足早に駅へと向かう曲がり角を曲がる。
――怖い。ものすごく怖い。何か裏がありそうで……自分の経歴がばれたのではないかと、ヒヤヒヤする。
 そんな焦燥を抱えて街角に消えたクラウディアの背後──彼女の姿を見送った店員の一人が、はぁぁ、とウットリとした溜息を漏らす。
「ほんっと、綺麗な人ですよねぇ。」
「ほんとほんと。どっかのモデルじゃないのか?」
 うんうん、と頷く同僚たちの後ろで、店の客たちが肩越しに、同じような吐息を漏らす。
「綺麗な子だよなぁ、また来るかな?」
 サービスしたから、いい店だと思って、来てくれたらいいなぁ、と、誰も彼もが口々に呟く。
 好意的──というのは、ちょっと熱狂的にも映る様子で、今にもあの角から、忘れものをしただとか、店の連絡先を教えてくれないかだとか言って、戻ってきてくれないだろうかと、彼らは熱の篭った双眸で角を見つめる。
 しかし、クラウディアの影はチラリとも映らなかった。
 残念そうにため息を零して、男たちは店の中へと戻って行く。
──一方、彼らの心の鮮烈な思い出を残したクラウディアはというと、自分が立ち去った店の前でそんなことが起きているなんて想像もせずに、チラリと自分の肩越しに後ろを振り返る。
 それから、はぁぁ、と肩から力を抜いて、軽く眉を寄せた。
別段あやしい行動はしていないのだが、一体なぜ、こんなに注目されるのかと、クラウディアはため息を一つこぼす。
 昨夜の店でもそうだった。
 開店後まもない頃に入店したためか、人もまばらで、店員からの情報収集にはちょうどいい環境だと思ったのも、つか間。
 なぜか話している店員以外の店員が、しょっちゅうサービスしようとしてくれるし(水のおかわりだとか、おしぼりだとか、サービスタイムだとか。飲み物一つしか頼んでいないのに、過剰なくらいだった。きっと暇で時間を持て余していたのだろう)、そうこうしている間に、客がたくさん入ってきて――その人たちが、店員を独り占めしているように見えるクラウディアを注視してくれるから、聞き込みを再開することはできなかったのだ。
「結局、今日も収穫はナシ……って。」
 はぁぁぁ、と、がっくり肩を落として、クラウディアはうんざりと髪をかきあげた。
 脳裏に思い浮かんだのは、同室の「同僚」たちの言葉だ。
 彼らはこぞって、「クラウディア」には情報収集には向いてないと言い張ってくれた。
 そんなことはないと、そうムキになって言ったものの。
 結果は、二日続けて惨敗。
 一人でやってみせると言ったものの、時間だって無限にあるわけじゃない。
 この分だと、明日か明後日には、同僚たちの手を借りることになりそうだった。
 ──正直、すごく、悔しい。
「なにがダメなんだろう。」
 悩ましげな表情で、そ、と彼女がそう呟いた──その時だった。
 歩道を歩いていた少女の横手に、ゆっくりと黒塗りの車が近づいてくる。
 エンジン音も静かに横付けされた車を、習性のように顔を向けずに一瞥したクラウディアは、すぐに「運転席」に座る男の正体に気づいた。
 艶やかな黒髪を持つ、一度見たらそうそう忘れようのない整った容貌の男。
は、と目を見開き、イヤな予感が頭をかすめると同時――縦長の車の、後部シート側の黒ガラスが、静かに降りていく。
 ボックス席仕様になっている、「要人向け高級車」の、後部座席の後ろ側。開き始めた窓から見えた金色の髪に、クラウディアは絶望にも似た気持ちを抱いた。
 ただの一兵卒にすぎない「クラウド」には、こんな車に乗る知り合いはいない。――が、まことに残念ながら、「クラウディア」には、いてしまうのだ。
 そのまま脱兎のごとく逃げ出したい気持ちを堪えて、暗いディアはゴクリと喉を上下させ──開ききった窓を見つめた。
 果たしてそこには、【彼女】をいたくお気にめしの人の笑顔があった。
「やぁ、こんばんは、ディア。お出かけ中かい?」
 にこり、と。
 まさに完璧なまでの微笑みを浮かべて車上から挨拶をよこすのは、このミッドガルにおける最高責任者たる男の息子――御曹司様、その人だ。
 その、間違えようのない、「一介の新兵では、会うことすら叶わない要人」を前に、クラウディアはクラリと軽いめまいを覚えた。
 なぜ、こんな場所で、よりにもよってこの男と会うのだ!?
「こ、こんばんは、ルーファウス様。」
 あまりのことに、気の利いた言葉一つ出てきやしない。――いや、普段から出てこないけど。
 それでもなんとか微笑を浮かべて挨拶をすれば、相手は優しげな表情でクラウディアを見つめる。
「見たところ、一人のようだけど──流石にこの時間にお嬢さんの一人歩きは危ないよ。これから、どこの店に?」
 この辺りは、上品さが売りのバーが多いとは言えど、通っている客の全てが「品がある」わけではないのだ。
 怜悧な印象を与える容貌をしかめる彼に、「お嬢さんじゃないし」だとか、「っていうか、これでも兵士ですから」だとか、つっこめるわけもなく。
「いえ、もう帰るところでしたので──これから駅に。」
 すぐそこの、と、地下へと続く階段を指し示せば、ルーファウスはますます顔をしかめる。
「ディア、この時間に電車に乗る気か?」
 君は正気か、と言わんばかりの表情に、クラウディアは首を傾げる。
 この時間、と言っても、別におかしな時間帯ではない。電車だってまだ出てるし、通勤や通学で混んでいる時間でもない。
 何か問題があるのだろうか、と不思議そうな表情になる彼女に、ルーファウスは呆れたように眉間に指先を押し当てて、溜息を零す。
「ディア、君はどうやら、まだ自分の魅力が分かっていないようだね。」
 やれやれ、仕方のない子だ。
 そんな口調で言われて、クラウディアは、はぁ、と気のない返事を返す。
「まだ宵の口には違いないだろうけど、だからと言って油断はしてはいけないな。」
「……はぁ。」
 何の話だろう?
 意味がわからないまま、相槌を打つ微妙なクラウディアに、ルーファウスは魅惑的な笑顔を浮かべると、
「──ということで、ディア。」
「はい?」
「乗りなさい。」
 その笑顔のまま、呆然と立つクラウディアに向かって、命令した。
「…………はい?」
 思わず柳眉を顰めて声を跳ね上げて問い返したクラウディアに、当然だろう、というようにルーファウスは背もたれにゆったりと身を預ける。
「君のような魅力的な女性を、狼の巣窟である密室に、笑顔で送り出せるはずがないだろう? どうせ行き先は同じなんだ。」
 何の問題がある?
 そう朗々と続けるルーファウスに、クラウディアは目をパチパチと瞬く。
 そうして、「……狼の巣窟? 密室? ……どこの話だ?」と心の中で首を傾げる。
 必死で頭をグルリとめぐらせてみたが、ルーファウスの言う「魅力的な女性」だとか、「狼の巣窟」だとかに思い当たる節は全くなかったので、クラウディアはルーファウスの申し出を、丁重にお断りすることにした。
 そもそも、最初に仕事で一緒して以来、会うたびになんだかんだと肉体的接触が多いルーファウスとは、あまり一緒に居たくないのだ。
 女性を扱うのが慣れているせいなのだろうが、隣に立てば、必ずエスコートするように手や腰、肩を抱いてくれるから──それがスケベ心からとかではなく、本当に自然にやってくれるものだから、「男」の骨格が目立ってきた「クラウディア」的には、できれば接触を遠慮したい相手なのである。
 せめて、スケベ心からなら、イヤがって逃げる素振りも出来るというのに。
「あ、い、いえ。大丈夫です。一人で帰れますから。」
 パタパタ、と手を振って──駅もすぐソコですし、寮までほんの二駅ですから、と。
 そう断るクラウディアに、ルーファウスは顔を顰める。
 そして、大仰な仕草で溜息を零すと、
「──女性たるもの、たとえ知り合いの男であっても、車の同乗に危機感を感じるのは、いいことだとは思う。
 だが、ディア? 時と場合を考えなさい。」
「は、……はぁ。」
 まったく、というように髪を掻きあげるルーファウスに、何をどう言っていいのか……というよりも、何を言われているのか分からず、曖昧にクラウディアは頷く。
「さあ、分かったなら乗りなさい。」
 ……いや、あの……何がどう、分かったのか、全く分からないのですが?
 そう思いながらも、クラウディアはジリとも身動きできないまま、困ったように眉を寄せる。
 周辺で行き来する人々が、立ち止まったまま車と向かい合っている──しかも高級車だ──クラウディアを、チラチラと横目で眺めている。
 その視線を感じながら、居心地悪げに身をよじったクラウディアに、運転席に座っていた男が、ふ、と短く息を吐いたのが分かった。
 かと思うと、男は運転席の窓をゆっくりと開くと、
「ルーファウスさま。もしかしたら、彼女は用があるのではないでしょうか?」
 ルーファウスに、というよりも、クラウディアに話しかけるように問いかけてくる。
 チラリ、とクラウディアが目線を向ければ、男は目線だけで何かを訴えてきた。
 それが何を示しているのかは分からないが、助け舟であることは確かだった。
 時々、男……ルーファウス付きのような役割もしているらしいツォンは、こうしてクラウディアがルーファウスのわがままから逃げ出せるような声かけをしてくれることがある。
 今回も、そういう助け舟なのであろう。
 そう判断したクラウディアは、
「用? だが今、ディアは帰るところだと言っていたぞ。」
 何を言っているんだ、と言いたげなルーファウスの目線がこちらに向かい、そうだろう? と問いかけるのに、
「はい、帰るところは帰るところ、なのですが……。」
 言いながら、クラウディアはあたりを憚るように、そ、とそこでようやく車に向かって足を踏み出すと、ささやき声がようやく届くような距離で、
「仕事の帰りですので、本部に到着するまでが、私の仕事なのです。」
 そ、と──半分本当、半分ウソの言葉を告げた。
 確かに、仕事帰りは仕事帰りだ。
 だが実際は、通常任務とは違う特別任務の中でも、前調べ任務にあたるため、情報を掴み取るまでは報告の義務はない。
 なので、クラウディアはこのまま電車に乗ったら、素直に寮に直行するだけだ。
 しかし、せっかくツォンがくれた機会だ。
 これを逃す手はずはない。
「……この区画で仕事?」
 こんな酒場町で、一体何をする必要があるのだ、と不審そうなルーファウスに、クラウディアは唇にソと指先を押し当てて、
「たとえルーファウス様にでも、これ以上はお教えすることは出来ないのです。どうぞ、ご勘弁ください。」
 囁くように、そう告げる。
 そうしてうっすらと微笑めば、大抵の男は頷いてくれるのだ。──クリスとカシルがそう言っていた必殺技である。
 クラウディアは、これで完璧だと、そう思っていた。
 だがしかし。
 相手は、美女よりどりみどりの席に座り続けた強者であった。
 クラウディアの滅多に見れないそんな仕草に、は、と目を見開いたのは一瞬。
 すぐに彼は、陶然とした微笑を浮かべると、
「ディア。」
 優しく囁くように、そ、と彼女の頬に触れる。
「……。」
 頬先に触れるぬくもりに、ぎくり、とクラウディアは微かな動揺に目元を揺らす。
 しまった、近づきすぎた、と思ったけれど、もう遅い。
 ルーファウスは間近に見えるクラウディアの瞳を覗き込んで、仄かに香る甘い香水のような匂いを小さく吸い込む。
「そんな言葉が、この私に通用するとでも? ……なぁ、ツォン?」
 くく、と、楽しそうに喉を鳴らして笑いながら、ルーファウスが意味深に自分の前へと目を飛ばす。
 ツォンはその言葉を受けて──ふぅ、と溜息を漏らす。
 その「溜息」の意味を知って、クラウディアはクシャリと顔を歪める。
 泣きそうにも見える表情を、前を見据えたまま、ルーファウスは視界の端に映しながら、愉悦の笑みを浮かべた。
「クラウディア、車に乗りなさい。──君の任務は、これで終了だ。」
 果たしてツォンは、クラウディアが想像していた通りの言葉を吐いた。
 ──ルーファウスの「わがまま」を、受け入れたのだ。
「そ……そ…………。」
 そんな、と、先を続けることは出来なかった。
「君の上司には、こちらから連絡しておこう。任務の担当官は?」
 スラスラと続けられる内容に、クラウディアは当惑した表情を隠せなかった。
 だって──任務の担当官って、それはつまり、特務の担当官であるわけで。
 特務の存在自体が極秘だというのに、その人とのつながりをばらしてしまうわけには行かない。
 さて、どうしよう、と思ったところで、
「ツォン。いくらお前が相手でも、そう簡単に口を割っては、それはそれで問題だろう?」
 助け舟が──────思いもよらない場所と声で聞こえてきた。
 はっ!? と、ポカンと口をあけて、クラウディアは大きな目を更に大きく見開いて、聞こえてきた場所を凝視する。
「ふむ、確かにそれはそうだな。任務の担当官をこんな場所で口外などしては、問題だ。」
 優雅に足を組み変えて、ルーファウスはクラウディアから手を離して、顎に手を当てながら自分の「前」を見て頷く。
 運転席の後ろ側──車の進行方向側にある、ルーファウスに向かい側の席に、もう一人「男」が乗っていたのだ。
 しかも──この「声」の、主って、もしかして、もしかしなくても……?
 なんでこの人がココに居るのだと思うと同時、すぐにルーファウスの護衛か、と、クラウディアは気付いた。
 それでも、衝撃にも似た動揺は消えず、ぽかんと黒ガラスを見つめる。
「それは、そうですが……。」
 ならば、諦めてくださいますか、ルーファウス様? ──と、ツォンが続けようとしたところで。
「よし、ならディア? まずは車に乗りなさい。」
 ごくごく当たり前のように、ルーファウスが偉そうに告げた。
「……ぇ?」
 なぜそうなるのか、全く分からなくて、クラウディアはゆっくりと首を傾げる。
 車に乗りなさい? 電車に乗りなさい、じゃ、なくって??
 頭に激しくハテナマークを飛ばすクラウディアに、小さく苦笑する気配がしたかと思うや否や、
「ルーファウス。」
 たしなめるような声が、黒ガラスの向こうから飛んできたが、ルーファウスは気にした様子もなく、チラリと片目を瞑って「男」を見やると、
「連絡をする必要があるというなら、担当官に今から連絡すれがばいい。」
 それだけの話だろう? ──と。
 自分の懐からPHSを取り出して、それを左右に振って見せてくれた。
「流石に路上で連絡は出来ないだろうが、車の中でならできるだろう?」
 機密も保持できる。──何せこの車の中に乗っているのは、神羅の人間ばかりだ。それも、トップクラスの。
「え、えー、と。」
 けど、いくら神羅のトップクラスばかりとは言えど、任務に関わっていない人間の目の前でやっていたら問題があるんじゃないかな、と。
 そう続くはずだったクラウディアの決死の断り文句に続くはずの言葉は、けれど。
「確かに、ルーファウスの言うとおりだな。」
 スラリと零れてきた美声によって、綺麗に遮られてしまった。
「えっ。」
 自分の味方ではなかったのかっ? なぜそこでルーファウスの援護に回るっ!?
 思わず、黒ガラス越しに「声」の主を睨みつける。
 ──と、その睨みを感知したのか、がちゃ、と後部シートの扉が開いた。
 ハ、と身を強張らせたクラウディアが、咄嗟に後ず去る。
 その目の前で、スラリとした脚が飛び出てきた。
 いや、正しくは脚が地面に下りただけなのだが、飛び出してきた、という表現がふさわしいほど長く迫力のある脚だったのだ。
 さらにズサッ、と後ろに下がったクラウディアの前で、開いた扉の影からサラリと艶やかな光沢を持った銀色の髪が舞った。
 長い柔らかな髪。
 暗い夜の闇の中でも、ネオンの光に照らされて耀く、色に縁取られて現れるのは、青白い……病的なほどに白い、貌。
 怜悧な双眸が、緩やかな弧を描いてクラウディアを見上げる。
「──……っ、セフィ、ロス……っ。」
 車の中からその人が姿を表した瞬間、路上の人々が息を呑み、立ち止まるのが分かった。
 誰もが知っている、神羅の英雄。
 銀の髪と怜悧な美貌。
 長身を折り曲げるようにして車から降りたセフィロスは、優雅に立ち上がると、呆然と自分を見上げているクラウディアに紳士的な礼をする。
 まるでダンスパーティでダンスを申し込むような仕草に、クラウディアは呻くような声を漏らした。
 ざわめきが、耳に届く。
 あの英雄に、腰を折って誘われている少女は誰だ、と。
 英雄に誘われている彼女は、誰だ、と。
 ──……さいあくだ。
「どうぞ、クラウディア嬢。」
 これ以上もないくらいの完璧な仕草で、セフィロスは動けないでいるクラウディアの手を取る。
 さいあくだ、と、クラウディアは再び口の中で言葉を飲み込んだ。
 こんな衆人環境の中、セフィロスの誘いを断るなんて、できるはずがない。
 下手に目立つわけには行かないというのに。
 取られた手が強張っているのを承知で、それでもそれを自分の下に引けないクラウディアを見て、セフィロスは満足げに微笑む。
 そんな笑顔すら、見とれるくらいに格好よくて、くそ、とクラウディアは心の中で激しく舌打ちした。
 車の中で、ルーファウスは残念そうにため息を漏らすと──その役割は、本当なら自分がしたかったのに、セフィロスのほうが「目立つ」から、適任なのだから、しょうがない──、無言で自分が座っていた場所を助手席側にずれた。
 その意味を的確に悟り、セフィロスはクラウディアを車内の──ルーファウスが今まで座っていた場所へと導く。
 覚悟を決めて、クラウディアはふかふかの赤い絨毯が敷かれた車の上へ、そ、と脚を乗せた。
 …………刹那。
「よ、ディア。」
 ひらりん、と、助手席側に移ったルーファウスの正面に座っていた、「もう一人」が、にっぱりと笑って片手をあげてきた。
「──……ざ、っ、くす?」
 かぽん、と口を開いて、クラウディアは上り口に片足をかけたままの態勢で、ツンツン頭の青年を指差す。
 ──そう、ちょうど「セフィロス」の隣に当たる席に座っていたのは、「クラウド」も良く知るソルジャーだったのである。
 人好きのする笑顔を浮かべたザックスは、ヒラヒラと手を振りながら、軽く腰をあげると、
「ささ、どうぞお姫様。ルーファウス様のお隣へ。」
 自分を指差すクラウディアの片手を取ると、ぐい、と引っ張って体を車内に連れ込む。
 すかさずセフィロスが彼女の背中を押してクラウディアをルーファウスの横に座らせると、自らはその目の前に座り、そのまま車の扉を閉めた。
「ツォン、出せ。」
 きっちりと扉が閉まった瞬間、待ち構えたようにルーファウスが運転席に向かって命令を出す。
 そして、手にしていたPHSをクラウディアに差し出すと、唖然としたままの彼女の手に握らせると、
「さぁ、ディア。上司に電話をしなさい。
 もう少し早かったら、これから一緒に食事でも、と誘うところなのだが、残念だな。」
「……。」
 えー、と、と。
 クラウディアは手渡されたPHSを──自分が支給品としてもらっている物よりも、ずっと細身で軽いソレを見下ろす。
 良く見たら、カメラも付いているようだ。
 っていうかコレ、市場に出回っている最新機種よりも最新構造じゃないのだろうか?
 すごい、と、両手に感じる軽いはずのPHSが実際よりも酷く重く感じて、微かに手が震えそうになる。
 ──このPHSで、上司に電話って……? っていうか、報告も何も、まだ情報も何も集ってない状態だし?
 そもそも、PHSに履歴残っちゃったらマズイんじゃないか??
 っていうか、俺だって、PHS持ってるんだから、そっちでかけたらいいわけで。
 でも、これは必要ないです、と返せそうな雰囲気でも、ない。
 そんなことをグルグル考えこんで固まっているディアに、遠慮せずにかけろ、とルーファウスが告げる。
 静かなエンジン音と共に、ゆっくりと車が走り出し──外のネオンが後方へとたなびいて行く。
 それでも困ったようにPHSを眺めているクラウディアに、セフィロスが口を挟もうとした所で、
「けど、ディア、お前、上司の電話番号って知ってんのか? アレなら、お前の同僚に電話して、聞いたほうが良くねぇ?」
 シートにふんぞり返ったザックスが、小さな卓上テーブルの上からシャンパンを取り上げながら、そう「提案」してくれた。
「どう、りょう。」
「そ、いたろ? なんか可愛い感じの女の子。」
 くるくる、と指先で空中に何か描く仕草をするザックスに、ああ、とクラウディアは思い出して頷く。
 クリスのことだ。
 ザックスを寮の自室に招いたことは一度もないが(特務の規則上、関係者以外は立ち入り禁止になっている)、「クラウディア」でいたときに、「クリス」を紹介したことがある。
 そのため、ザックスは普段の一兵時のクリスのことを知らないが、「特務の同僚」としてのクリスは知っている。
 心の奥底からクリスが「女の子」だと思っているかどうかは分からないが、今はそれが問題ではないので、クラウディアは素直にザックスの言葉に頷いておくことにした。
 何にしろ、どうしたらいいのか、まったく見当がつかなかったからだ。
 かと言って、このまま「仕事している最中ですので」と言っておきながら、寮に戻るまで上司に連絡しないのもおかしな話だし。
「そうします。ルーファウス様、PHSをお借りしますね。」
 あまり下手に履歴などを気にしすぎて、裏をかかれても困る。
 特に自分の目の前で、楽しそうに目元を緩めているセフィロスとか、その彼の背中越しに運転しているツォンだとか言う、下手なことをしたら一発で正体を見破られてしまいそうな輩が居る以上、妙な小細工は下手を打つだけだ。
 ──まぁ、セフィロスに関しては、一度も「クラウディア=クラウド」だとばらしてはいないのだが、うすうす勘付いていて、それでも黙認してくれているような気がしないでもないのだが。
 ちなみにザックスに関しては、野生の勘で、初見で「クラウディア」がクラウドだと見破ってくれた経歴がある。
 ほんと、女に関しては無駄に勘が働くよな、というのがクラウドの意見であったが、ザックスはあくまでも「愛のなせる技だっつーの」と、親友相手に愛もクソもあるか、とクラウドが吐き捨てるような思いで感じたことを、真顔で告げてくれた。
 真横から感じるルーファウスの視線が、自分の一挙手一動に注がれているのを感じながら、クラウディアは無言でPHSを操作する。
 そのまま耳に当てて、振動をまるで感じない車の滑らかな動きに、やっぱり高級車は違うな、と感心してみる。
 革張りのシートとかのクッション性も、脚が埋もれそうな絨毯も──それから、当たり前のように設置されているテレビや、卓上テーブル。
 ルーファウスが当然のように車内に設置された小さなワインセラーから出しているワインの存在とか。──ちなみにそのピンク色のワイン、グラスに注いでるけど、もしかしてソレは、俺の分だとか言わないよな? 俺に呑めとか言うんじゃないよな? ……という小さな恐怖を覚えながら、クラウディアはあくまでも車内鑑賞に視線をひた置く。
 そうしないと、どうしようもない気持ちになるからだ。
 何せ、隣にはルーファウス──神羅の次期社長である御曹司。
 目の前にはセフィロス。全世界でも有名な……ちなみにクラウドもあこがれて止まない英雄その人がいる。
 斜め前に座っているザックスだって、本来なら憧れのソルジャーだ。──親友という席に座ってからは、たいして憧れは感じないが。
『はい、もしもし……?』
「あ、クリス? お……、わたし、クラウディアだけど。」
 「特務」用のPHSにかかってきた見知らぬ番号に、警戒をした声音で出た良く知った声に、クラウディアは努めて冷静に声を紡ぐ。
 途端、
『え、ディア?』
「うん。ちょっと人のPHS借りてるから、番号は違うんだけど……あ、別に何かあったわけじゃないから。」
 自分のPHSでかけたかったのだけれど、雰囲気とルーファウスの強引さ的に、無理そうだっただけで。
 現実をこの上もなく的確に示すだろうセリフは、こっそりと胸の内で吐いて……きっと寮に帰ってから詳しく話す羽目にはなるのだろうけれど、それでもこの状況を上手く説明できる自信はなかった。
 それくらい、今の状況は、雰囲気に呑まれた己にしか分からない状況なのである。
『ほんとに? 何か、変なことに巻き込まれてるとかじゃなくって?』
 心配そうに──クラウディアの美貌と、今日情報収集に出向いた先がバーだと言うことを照らし合わせて、そんな心配をしてくる同僚に、「変なことなら、今、まさに巻き込まれている」と答えたくなったクラウディアは、しかし、ルーファウスとセフィロスの視線を感じて、無言で飲み込んだ。
「うん、大丈夫。仕事も終わってるんだけど──、その、帰るところで、偶然、ルーファウス様に会って……。」
『デートに誘われたの、もしかして?』
「誘われてない。」
 そこのところだけは、しっかり即答しておく。
『えー? だって、ルーファウス様でしょ?』
 ディアを見つけてデートに誘わないなんて、ありえない。
 そうキッパリ断言してくれるクリスの後ろから、「それは確かにありえないね」と同意を示してくるカシルの言葉まで聞こえてきた。
 いや、ほんと、ないから。
 パタパタと手を振りたい気持ちになりつつも、それを堪えて膝の上で拳を握ると、
「ただ、夜道を一人で帰るのは危ないからって、送ってくれることになって──それで今、ルーファウス様の車の中なんだけど、その……。」
 そこで一度言葉を止めて、さて、なんて説明したらいいのだろうと、クラウディアは悩んだ。
 本来、クラウディアの仕事には報告義務はない。
 けれど、ルーファウスには職場に戻るまでが仕事で、上司に報告をしなくてはいけないと言ってしまっている。
 だから、ここでクリスに上司への連絡先を聞くフリをして、カシルあたりの電話番号を押して「報告するフリ」をしたらいいのだけれど。
 ──その辺りの口裏あわせを、ルーファウスたちの前で、果たしてできるのだろうか、自信がなかった。
 しかも、クリスに上司に報告したい、と告げてしまっては、まるで自分が今回の任務に成功したような意味合いを持ってしまう。それでクリスやカシルが本当に成功報告をしてしまっても困る。──だって、まるで情報はつかめていないのが現状なのだから。
 うーん、と悩みつつ、助けを求めるようにザックスへチラリと視線を飛ばせば、彼はシャンパンのつまみに、チーズを摘んでいた。
 そんなザックスの手をイヤそうに跳ね除けて、「このチーズは、ディアの分だ」と、ルーファウスがワイン片手にそう言う。
 ──いえ、チーズもワインもたしなみませんから、と、クラウディアは心の中で突っ込む。
「え、と。つまりその、本当なら真っ直ぐ直帰しなくちゃいけない、んだけど、ルーファウス様が、どうしても……いや、あの、ご好意に甘えて……。」
 えーっと、と考えながら、つっかえながら説明しようとするクラウディアの言葉に、ああ、とクリスはことの次第を悟ったようだった。
『分かったわ。大丈夫よ、ディア。
 実はね、A作戦の方に出向いていたカリアが、帰ってくるのが明日の明け方になりそうなんですって。』
 スラスラスラ……と、まさにそのクリスの後ろから、「カリア」その人が居るはずなのだが、盗聴されている──正しくは、セフィロスやルーファウスの耳に、クリスの声も聞こえている可能性を考慮に入れてそれが真実であるかのように、同僚は話をあわせてくれる。
「そ、そうなの?」
 この話の先がどう向かうかは分からなかったが、クラウディアはクリスの言葉に相槌を打つ。
『ええ、なんでも船に乗り遅れちゃったらしいのよ。
 でね、さっき、そのことを上官に報告に行ったら、任務報告はカリアが帰ってきてから全員で来るように、──って言われたのよ。』
 実際、報告しようにも、カリアの情報がないと、ねぇ? ──と、本当に困ったような口調で話しかけられて、そうだね、と、クラウディアはちょっと引きつった声で返した。
 それがクラウディアの精一杯だった。
 ──すごい、クリス。演技で食べていけそうじゃないか?
『ディアが帰ってきたときに、その分だけでも報告しましょうか、って言ったんだけどね。二度手間になるから、それくらいなら報告書をまとめて、明日一緒に出しなさい、ってことらしいわ。』
 だから、門限までに帰ってきたら、それでいいわよ、と。
 笑い声を滲ませながら──それは同時に、もしルーファウス様に誘われて、どうしても断れないようなら、門限までなら付き合ってあげなさい、と言われたということで。
 そのことを、喜ぶべきか悲しむべきか分からないまま、クラウディアは、そう、と返事をした。
「ありがとう、クリス。帰ってから、報告書を書いたらいいんだよね?」
『ええ、そうね。……だから、ルーファウス様の車で帰ってきたことは、私とディアだけのナイショにしておいてあげる。
 ──あ、ルーファウス様にも、ナイショにしておいてくださいね、って言っておきなさいよ。』
 ふふ、と笑って──最後に、本当の少女のような可愛らしい声音で、「帰ってきたら、何があったか教えてね」と続けるクリスに、ほんっと演技派だなぁ、とクラウディアは思った。
 何があったもなにも、何もないだろう。このまま帰るだけだし。
 そう思いながら、チラリと視線を向けたフロントガラスには、二番街が近くに迫っていることを知らせたカンバンが見えた。
 もう10分も経たないうちに、一番街に入ることだろう。
 この調子だと、車内でビップに囲まれて窮屈な思いをするのは、ほんの20分ほど。──20分か、と、ちょっとゲンナリ気分で、クラウディアは電話向こうのクリスにお疲れ様とおやすみを告げて、PHSの終了ボタンを押した。
 そして、通話口と耳に当たった液晶部分のファンデーションや吐息の痕をハンカチで拭うと、それをルーファウスに差し出しながら、
「ありがとうございました、ルーファウス様。
 上司への報告は、今日はもういいそうですので、お返ししますね。」
 必要以上のことは話さず──聞かれてもいないのに、無駄に話すのは、怪しんでくれと言っているのと同義語だ、と昔叩き込まれたことを実践しながら、ふんわりと微笑む。
「そう? 君の役にたてたなら良かったよ。」
 にこり、と笑う理知的な優しそうな男の笑顔は、普通の女性なら魅惑的に映るのだろうが、普通じゃない──ましてや女でもないクラウディア……クラウドにとっては、意味は全くなかった。
 むしろ、役にたてたもなにも、お前のせいでややこしいことになってるんだろーがっ! ──というのが、クラウド的な本音である。
 しかし、それもなんとか堪えて、ニコリ、と笑うことで済ませたクラウドは、改めて前を向き直り……そこに、ルーファウス以上に相手しづらいセフィロスのニコヤカな笑顔にぶつかった。
 セフィロスは、色気垂れ流しの微笑みでもって、クラウドを正面から見つめている。
「………………。」
 瞬時に、クラウドはザックスに向けて目配せした。
 このチーズ美味い、と食っているダメすぎる友人に睨み殺すかと思う視線を鋭く向けた。
 何でもいい。とにかく今すぐ何か話しかけろ──!
 じゃないと、この英雄、ロクなことを言い出さないに決まっているっ!!
 そんな気持ちを強く込めた視線をクラウドが向けたのに気付いたザックスは、こっそりと、イエッサー、と親指を立てた──と、同時。
「ディア、今日、今まで仕事だったと言うことは……。」
 セフィロスが、ルーファウスが話しかけるよりも早く、穏やかにそう切り出す。
 ルーファウスは、自分よりも先に話しかけてしまったセフィロスに、軽く不機嫌になるが、自分が言いたかったことも彼と同じことだったのだろう。
 無言でチラリとクラウドを見つめる──や否や、
「おっ! ディア、今気付いたんだけど、お前、もしかして髪形変えたんじゃねーか?」
 ザックスが、あまりにもわざとらしいほどわざとらしい言葉で、びし、とクラウドの髪を指し示した。
「……え、そ、そー……。」
 ですね、とも、じゃない、とも言えなくて、クラウドは言いよどみながら自分の髪に触れる。
 肩甲骨の下辺りまで流れる金色の髪は、クラウドの地毛である。
 カツラや付け毛など一切使ってはいない。
 そして基本、いつも一つに結わえっぱなしなのだが、「クラウディア」になる時だけは下ろす。もしくは、クリスやカシルに結ってもらうだけだ。
 だから、髪形を変えたという感覚はないのだが──、強引にザックスが話を自分に持ってこようとしてくれたのだから、コレに乗るべきだろうか、という戸惑いもクラウドにはあった。
 けれど、話に乗ってやろうにも──別段、何も変わった髪形をしているわけでもないので、困るのだ。
「髪形? 別段、いつもと変わってないだろう?」
 何を言っているんだ、と、セフィロスが呆れた目でザックスを見る。
 はい、その通りです。セフィロスの言うとおり、何も手は入れてません。──ただ、今日はバーに行くので(正しくは昨日も)、ちょっと大人っぽく髪をまとめているだけで。
 ザックスは、普段女の子大好きとか言っているくせに、女の子の気にして欲しいところには、なかなか気付かないところがある。
 もっとも、クラウドは女の子じゃないので、ザックスもそう気にしていないのかもしれない。
 ルーファウスも、クラウドの髪を見つめながら、そうだな、と頷く──が、ふと、
「いや、だが……この髪飾りは、先月発売したばかりの新作だな。」
 触るぞ、と前置きして、そ、とクラウドの髪に手を触れさせる。
 彼の手が硬質な物に触れるのを、首をすくめるようにして受け入れながら──あぁ、そういえば、今日はリボンじゃなくって、大人っぽく見えるようにと髪飾りをつけたのだった、と思い出す。
「そそ、それのことっすよ、ルーファウス様。さっすが副社長。気付いてくれたんすね〜。俺も、それに気付いて欲しかったんですって。」
 とたん、ザックスが何故か誇らしげにそう言い放つ。
 それに、セフィロスが冷ややかな目を向ける。
「……本当か?」
「本当だって。何せその髪飾り──俺が、ディアにプレゼントしたものだもんな〜。……な、ディア?」
 にや、と。
 してやったり、と言わんばかりの態度で満面の笑みを浮かべるザックスに、ふ、と指先を固めてクラウドを凝視するルーファウス。そして驚いたように軽く目を見張ったセフィロスが緩く眉を顰めてクラウドを見る。
「本当か、ディア?」
「え、ええ。」
 いつも静かな瞳が、微かな熱を持って自分を睨みつけているように感じて、クラウドは素直に頷く。
 頷きながら、「そういえば、先月ザックスがくれたんだっけ」と、髪飾りがそこから出たものだったということを思い出した。
 ザックスは、「クラウド」が「クラウディア」をしていると知ったときから、面白がって、あれやこれやと、クラウディア用の物を用立ててくれることがあるのだ。
 最初の頃は断っていたのだけれど、結局、貰い物のほとんどが「せっかく○○ちゃんに買ったのに、彼氏できたって言っててさー」だとか言う理由で流出してくるものばかりだと知ったので、それからは遠慮なく受け取るようにしていて──そう、だから、ザックスから女物を貰うことは、実は珍しくなかったりする。
 なので、この髪飾りも、なにだったかの理由で貰ったものだったよなー、程度の認識しかなかったのだ、が。
 なぜか、クラウドがそう頷いた瞬間、セフィロスとルーファウスの顔つきが変わったような気がした。
 ──いや、顔というよりも、空気、というべきだろうか?
「やっぱ、ディアのその髪には、そういう色の髪飾りが似合うよな。それ見たとき、絶対似合うと思ったんだよ。」
 セフィロスやルーファウスを出し抜いたような気分になりながら、ザックスはニヤニヤと手にしたチーズを掲げて笑う。
 そんなことをホザく男に、「っていうかお前、コレ、別の女にあげるヤツだっただろーが」と突っ込みたくなったが、クラウドはそれをあえて飲み込んだ。
「……ふん、確かに、ディアの髪には映えてはいるな。」
 ルーファウス的には、自分以外の男がやった贈り物なんて、けなしてけなしてけなしまくりたい気持ちがあったが──例えば、いくら映えていても、安物すぎて髪飾りがディアの髪に負けている、だとか──、他ならないクラウディアその人が身につけているものだ。……身につける前に貶めるならとにかく、彼女が気に入ってつけているものを、貶めるわけにはいかない。
 そんな憎憎しげな感情を捨てきれずに呟いたルーファウスに対し、セフィロスは、ふむ、と一つ頷いて、クラウドの髪を一房手に取ると、
「ディアの髪なら、大抵の髪飾りは似合うだろうがな。
 こういう色合いもいいが、シルバーの髪飾りも似合うのではないか?」
 暗に、己の髪と同じ色の物をプレゼントしよう、という意味を含めて、そんな甘い言葉を紡ぐ、が。
「シルバーアクセサリーですか? それなら、いくつかザックスに貰ったのが……。」
 あります、と。
 それも似合うのかなぁ、と小首を傾げて邪気なく告げるクラウドに、セフィロスの笑みが固まった。
 ザックスは、ふっ、と勝ち誇ったような笑みを口元に浮かべる。
 だてに、女性への贈り物と称して、見かけた店でクラウディアに似合いそうだと思うものを、次々に買ってプレゼントしているわけではないのだ。
 大抵の人が「ディアに似合う」と思うだろう物は、すでにザックスが手をつけた後なのだ。
 だから、クラウディアに感動してもらうプレゼント、というのは、よっぽどのことがない限り、出会うことはなかったりする。
 そんな地道な努力をしているザックスの気持ちに、当のクラウディアことクラウドは、さっぱり気付いていないのが現状だったが。
「そうか、ザックスが……。
 なら、ディア? 今度、つけているところを見せてくれるか?」
 だが、セフィロスとて負けてはいない。
 そう来るなら、こう来てやる、とばかりにあでやかな微笑を貼り付けて、「デート」の約束までこぎつけようとする。
「は、はぁ。」
 しかし、クラウドはそれには全く感づかず、困ったように眉を寄せる。
 だって、「クラウディア」というのは、仕事上の姿なのだ。一応、セフィロスはクラウディアが男だということを知らないことになっている。
 だから、セフィロスの前で「髪飾りをつけたクラウディア」を見せる、ということは、「仕事している最中」ということなのだ。
 いくらなんでも、仕事中に、セフィロスに暢気に髪飾りを見せるなんてこと……できるわけないよなぁ?
 かと言って、無理だと思う、なんて言えないし。
 さて、どうやって断るか、無難な言葉で治めようかと、困ったようにクラウドが眉を寄せる。
「お、いーじゃん、ソレ。俺にも今度見せてくれよ。
 お前、俺が贈っても、あんまりつけて見せてくれないしなぁ、贈りがいがないっていうか。」
「──……。」
 うんうん、と頷くザックスに、「いや、贈りがいってお前……」と、クラウドは彼の思いを知らぬままに、呆れた眼差しを向けずにはいられない。
「お前の髪には、大抵の髪飾りは似合うけど、やっぱ、チーズ色とかはダメだよな。お前の髪の色とかぶっちまうから、髪飾りが負けちまう。」
 したり顔で演説するザックスの言葉に、はいはい、と適当な相槌を打ちかけたクラウドは、そこでふと、動きを止めた。
 見れば、ルーファウスとセフィロスも、今耳にしたセリフに信じられないような目でザックスを見ていた。
「「「チーズ色?」」」
 三人三様、反応したのは同じところだ。
 とてもじゃないが、髪や髪飾りの色を指摘したとは思えない、色気のないセリフだった。
「そー、チーズ色。──っと、でも、ディアの場合は、もっと薄めの色だから、チーズっていうより……そうだな、とうもろこしじゃないかっ!?」
 手にした濃い色のチーズをかざして、ザックスは、「おお、俺って今、すごくいいこと言った!」的な顔で顔を輝かせる。
 ──が、しかし。
 それを聞いた三人は、三様に脱力したようにシートに体を預ける。
「と……とうもろこし……。」
「お前……、それはないだろう。」
「ザックス、それはさすがに、ディアに失礼じゃないか。」
 思わず自分の髪を一房手にとって呟くクラウドに、教育の行き届いていない部下に溜息を覚えたセフィロス、そしてやれやれと肩を竦めて頭を振るルーファウス。
 そんな三人の反応に、え? え? とザックスが目を丸くする。
 自分の何がいけなかったのか、彼は全くわかって居ないのである。
「ザックス、女性の髪の色を褒めるのに、食べ物はたとえには出さないだろう?」
 普通。
 せめて、蜜柑色とかレモン色とか、バター色とか……いや、やはりバターやバナナも微妙だろう。
 やはり女性を例える形容詞は、花ではなくてはいけない。もしくはそれに順ずる美しいもの、だ。
 米神に手を当てながら、しつけのなっていない部下に溜息を漏らしてセフィロスがそう告げれば、
「けど、とうもろこし色っていう感じだろ? 前髪のあたりとか。」
 ふわ、と上に出ているあたりを指し示すザックスに、つまり、チョコボのとさかだと良く言われる部分が、とうもろこしの毛に似ていると、そういいたいわけだな、と。
 クラウドは無言で拳を握り締めた。
 今、ここで、セフィロスやルーファウスの前で殴ることが出来ないのが、口惜しい。
 くそ、後で覚えてろよ、と一発殴る覚悟を決めて、クラウドが怒りに打ち震えていると、やれやれ、とセフィロスが吐息を零す気配がした。
 ふ、と自分の顔の上に影が落ちるのを感じ、顔をあげれば──思いもしないほど間近に、セフィロスの美貌が迫っていた。
 は、と息を呑んだクラウドの髪を、彼の形良い長い指が摘む。
「そうだな──ディアの髪は、外見からのイメージだと黄薔薇に称したほうがいいのだろうが、その内面はしとやかで可愛らしいからな。」
 甘く──甘く、囁くように耳元に唇を近づけて、セフィロスが優しく微笑む。
 まるで口説かれているような雰囲気に、クラウドはシートに背中を押し付けて、彼の陶器のように滑らかな頬から目をそらして、斜め下を見つめる。
 しかし、セフィロスがあまりに近づきすぎているため、視界の端に必ず彼の首筋や、顎のライン──そしてサラリと揺れる銀の髪が目の前いっぱいに広がっていて、頬が紅潮するのを止められなかった。
 鼻腔からは、彼がつけているのだろうか、ムスク系のような香水の香がする。
 これほど近くに──残り香が移りそうなほど近くに、セフィロスが近づいてきているというだけでも緊張のあまり、掌にジットリと汗ばむのに、
「だから、私のイメージ的には、ミモザやたんぽぽ、菜の花のような愛らしさを感じる。」
 ことさら優しく、ことさら甘く──セフィロスは指先をすりぬける髪の感触を楽しみながら、つい、と視線をクラウドに落とす。
 右側では、ザックスとルーファウスが、離れろ、とゼスチャーをしてきているが、それは無視だ。
 目を落とせば、睫を微かに震わせ──いたいけな唇を、乙女のように固く噤んだ少女のはかない美貌。
 その細い顎に、そ、と手をかければ、彼女はピクリと瞼を揺らした。
 ゆっくりと促がすように顔をあげさせれば、艶やかな双眸が、怯えのような色を宿して、セフィロスの顔を映し出す。
 その綺麗な色に、自分だけが映されているのを見下ろして、セフィロスは満足げに微笑むと、彼女だけに聞こえるように──彼女のすべてを包み込むように、甘い囁きを落としてやる。
 そう……頑なにつぼみを閉じ続ける花を、ゆっくりと開かせるように。
「だが、あえて一つに絞るというなら、ひまわり。
 ──ひまわりは、太陽をいつまでも追い求めて上を向き続ける健気な花だ。……まさに、ディアにぴったりだろう?」
 ダメ押しのように、間近で瞳をあわせて──唇に吐息が触れるほど間近で微笑めば、ぼんっ、と音を立ててクラウドの顔が真っ赤に染まった。
 あうあう、と、口を開け閉めする様が、また愛らしくて、セフィロスは楽しげにのどを震わせて笑った。
 ──ところで。
「はいはい、そこまでなっ、セフィロスっ! クラウ……ディアが、爆発しちゃうだろーがっ!!」
 ぐいっ、と、右肩をとられて、強引にクラウドから引き剥がされる。
 甘く漂っていた香水の香りが、ふわりと鼻腔を擽り、クラウドはますます肩を強張らせる。
 カチン、と凍りついたまま、残念そうに正面のシートに腰を落とすセフィロスを、ただ、呆然と見つめるしか出来なかった。
 頬や耳どころか、首筋すらも暑い。
「──……っ。」
 止まっていた思考が、ようやく正常に動き出し始め──うっわぁぁぁぁあーっ、と、クラウドは声にならない悲鳴を喉の奥で叫ぶ。
 頭がグルグルする。
 今、何が起きていたのか、分からない。頭の中がパンクしてしまいそうだ。
 口を震わせて、泣きそうな顔になる──何かを堪えるような表情で、強張り続けるクラウドを、セフィロスは楽しそうに目を緩めて見つめる。
 そんな彼に、あー、やれやれ、とザックスは溜息を零すと、
「おい、ディア、だいじょう……。」
 ぶか、と、続けようとした先で。
「ディア。」
 優しく、優しく……空気にソッと触れるような静かな声音で、ルーファウスがクラウドの名を呼ぶ。
 けれど、自分に手一杯なクラウドは、その呼びかけに気付かない。
 わーわー、と、頭の中で激しく叫びながら、脳裏に再生されそうなセフィロスの美貌や、彼の指先の感覚……そして一撃必殺のような低い美声を思い出さないように、フルフルと頭を振る。
 そんなクラウドに、ルーファウスは面白くなさそうに鼻の頭に皺をよせた後、ふ、と息を吐いて、
「確かに、女性を例えるのに食べ物を使うのは、不適合だろうが、な。」
 触れるぞ、とパニック中のクラウドに聞かれていないのを分かっていながら、ルーファウスは距離を詰める。
 指先で、肩から流れる金色の髪を手に取り、車外からの光りを受けて微かに煌く……夜の闇に沈む暗い黄金色。
「だが、それでも私はあえて、そう例えよう。」
「やっぱトウモロコシっ!?」
 そこですかさずザックスが、不穏な色めいた話になりそうな余寒に口を挟んだが、それをルーファウスはアッサリ無視をして、クラウドの髪に、そ、と唇を触れさせる。
 ぴくん、と肩を揺らしたクラウドが、ようやくルーファウスが何をしているのか気付いて、え、と目線を向けたのを捕らえて、彼は柔らかに微笑むと、
「ディア? ……君の髪は、蜂蜜のように甘い。」
「──……っ!!!」
 歯が浮くかと思うようなセリフを、甘い甘い声と笑顔で、ささやき落とした。
 途端、ぞわっ、と背筋に寒気が走ったクラウドが、目を大きく見開くのを見て、ルーファウスは彼の頬に手を伸ばしかけ……しかし、指先をおり込んで、あえてクラウドには触れない。
 柔らかな髪を指先で梳きながら、その流れに──微かに香る花の香りに唇を寄せて、
「あまりに一般的すぎる例えで恐縮だが、やはり君の髪はハニーブロンドという表現が一番あうな。
 ──光りに透けて耀き、口に含むと誰もを魅了する、…………甘い蜜のようだ。」
 その声こそが、蜂蜜のように甘い。
 そう表現できるような色に、クラウドは目に見えて赤くなった。
 赤くならざるを得なかった。
「……っっっ。」
 何も言えずに、いとしそうに髪に口付けるルーファウスを見下ろすことしか出来ない。
 震える唇を薄く開いたまま、羞恥に身悶える様を上目遣いに見上げて、ルーファウスはことさら嬉しそうに──楽しそうに目元を緩めて微笑む。
「さしずめ私たちは、そんな魅惑的な蜜に集る蜂のようなもの、かな?」
 あえて、蜂、と例えたルーファウスに、セフィロスは双眸を細める。
 ザックスはその真意に気付かず、くっさー、と顔を歪めて、砂を噛んだような顔で、それはナイナイ、と顔をフルフルと振る。
 甘い香りを放つ蜜に集り、それを吸うのは蝶だけれど──蜜を集めて「持ち帰る」のが、蜂、だ。
 遊びで味見をするのではなく、本気で彼女が欲しいのだと……そう暗に示す言葉に、運転席にいたツォンですら、苦笑を滲ませる。
「それは少し聞き捨てならない表現だな、ルーファウス?」
 セフィロスが、不敵な笑みを口元に刷きながら──余裕を崩さない様子で、ゆったりと脚を組み替えながらそう言えば、
「そう思うのかな、セフィロスは。」
 ルーファウスは軽口を叩くような気軽さで、クラウドの髪から顔を離して薄く笑みを刷く。
 けれどその手は、クラウドの髪に触れたまま──優しく梳く手はそのまま。
 ギン、とセフィロスの視線が鋭くなったのを受け止めて、ルーファウスは涼しげな笑みを……勝ち誇ったような笑みを貼り付けて、手を滑らしクラウドの肩へと腕を回す。
「だが、お前だとて同じ気持ちだろう? ──ディアは本当に、蜂蜜のように魅惑的で美しい。……だろう?」
 また密着してきた、と、ちょっと遠い目で思っていたクラウドは、突然耳元で囁かれるように抱き寄せられ、ぅぉっ!? と体を強張らせる。
 ルーファウスのなれなれしい態度に、セフィロスは眉を顰めたが、挙動不審気味に困った様子でルーファウスを見上げるクラウドを見て──その小動物のような仕草に、ふ、と目元を緩める。
「──それは、否定しないな。」
 その、いとしいものを見つめるような目つき二人に全く気付かない様子で、クラウドはジリジリと尻だけでルーファウスから少しでも距離をおこうと、ドアの方に体をずらしてみた。──あまり距離はとれずに、髪に触れそうだったルーファウスの唇が、吐息を感じない距離に開いた程度だったが。
「……なんか、何言ってるか、わかんない……。」
 うぅ、と、クラウドは、自分の分からぬところで目を合わせて笑いあうルーファウスとセフィロスに、へにょりと眉を落とす。
 そんな微妙な空間に同席せざるを得なかったザックスは、思わず顔を片手で覆った。
 本当は髪を掻き毟りたい気分だったが、それをすればルーファウスから叱責を受けるので、それだけで止めておいたのだ。
 しかし、そこは我慢できたが──溢れ出る堪えきれない声は、我慢できなかった。
「……ぅーわー……。何、コレ?」
 ──なんでこんな車中で、この二人は火花を散らしあうんだ。
 せめて、車の外にしてくれ……そうしたら、クラウドの腕を引っつかんで逃げるからさ。
 っていうか、コレ──どー考えても、クラウドの……否、クラウディアの奪い合い、だよ、な? 口説きあい、だよなぁぁ?
 ゲンナリした気分で、ザックスは当の原因であるクラウドに目をやる。
 果たしてクラウドは、その間に挟まれて、どう思っているのか、と。
 が、しかし。
「……??」
 クラウドは何が何だか分からない表情で、ルーファウスとセフィロスを交互に見ているだけだった。
 思わず、がく、とザックスの肩が落ちる。
 ──いや、まさかとは思うけど。
「……おま、もしかして、分かってない?」
 ルーファウスとセフィロスに気付かれないように、ほぼ唇の動きだけで、そう問いかければ、クラウドはザックスに気付いて、顔を顰めてみせる。
 表情があまりないクラウドではあるが、この表情をザックスは良く知っていた。
 親しい人間に──気のおける友人に彼が見せる表情だ。しかもザックスには、「特に」良く見せる。
 「なんだよ、コレ?」
 まさに、ソレだ。
 ザックスが理解不能なことや、バカをやらかすたびに、「バカか!」だとか、「何やってるんだ!」だとか叫ぶときの、アレだ。
 まるで、この状況を引き起こしているのはザックスの悪ふざけではないのか、と言うような彼の表情に、ザックスは安心半分、心配半分の気持ちで、苦笑を浮かべた。
 それから、やれやれと小さく溜息を零して、
「ま、後5分くらいの辛抱だから、がんばれや。」
 囁くような声でそう呟いて、ヒラリ、と、手を振った。
 ルーファウスもセフィロスも、お互いに牽制しあってくれるだろうから、おかしなことには決してならないだろう。
 そう分かっていたからこその、ザックスの呟きではあった、が。
「──……っ。」
 クラウドは、む、としたように唇をへの字にまげて、キッ、とザックスをにらみつけた。
 心の中を代弁するならば、「おまっ、後で覚えてろよっ!」と言ったところだろうか。
 しかし、その可愛らしい姿で睨まれても、全然怖くはない。
 愛らしい仔猫が、毛を逆立てて構ってくれと言っているようにしか見えないのだ。
 そんなクラウドの視線が、自分だけに注がれているのを確信しながら──こっそりとした優越感が自分の中に満たされるのを感じながら、ザックスは、ルーファウスのことを笑えない程度に漏れ出る笑みを隠そうともせず、そ、と視線を窓の外へとやった。
 窓に映る車内の様子は、耳に届く美声たちと同様、あまり楽しくない光景ではあったが。

──ま、それも、あと5分の辛抱。

 それに、どうせルーファウスとセフィロスは、こういう時でもなければ「クラウド」と接することもない。
 だから、後5分くらいなら、我慢してやらないこともない。
 そんな上目線で、余裕たっぷりに笑みを浮かべるザックスの表情は、車の外に向けられたままで、ルーファウスにもセフィロスにも──クラウドにも気付かれることはなかった。








──後日。ザックスの部屋で、
「ルーファウスもセフィロスも、天然たらしだっ! 絶対、あいつらとは一緒に車に乗ったりしないっ!!」
 可愛い顔を真っ赤に染めてそう叫ぶクラウドに、雑誌に目を落としつつ、適当にザックスは相槌を打ってやっていた。
「何がハニーブロンドだーっ!!! ハーブの蜜みたいな甘い匂いだっ! 俺の髪は、普通だっ!!!」
 防音なのをいいことに、思いっきり良く叫んでは、ザックス愛用のクッションをガシガシ殴りつけるクラウドをチラリと見て──思わず口元を緩めれば、
「何がおかしいんだ、ザックス! だいたいお前、なんであの時助け舟出さなかったんだよっ!」
「いやいや、クラウドだって、なんか嬉しそうに口説かれてたからさー。」
 柳眉を顰めた拗ねたよな顔でなじられて、ザックスは楽しそうに笑いながら適当に反論してみる。
 そうすれば、ますますクラウドはヒートアップして、
「そんなわけあるかっ!」
 殴っていたクッションを投げつけてきた。
 ぼす、とあたったソレを、笑いながら受け止めて──あぁ、とザックスはシミジミと噛み締めるのであった。

 クラウディアも可愛いけど──やっぱり、素のクラウドが一番だよなぁ、と。








→あ、ちなみに、クラウドとザックスは別にくっついてません。
 けど、距離感的には、ザックスがリード中って言う感じですね。

 意識しやすい位置にいるのが、セフィロスで、ルーファウスは苦手な部類に近い感じでしょうか、ね?




この女装話を書くとき、一番困るのが、クラウドの表記です。
クラウディア→クラウド、に変わる表記を、どこでしようか一番悩みました。
車内に移ったときに、完全に「クラウド」にしようと思ったんですけどー……、結局、「クラウディア→クラウド」であることを確実に知っているザックスが出た時、になりましたね。

最後のほうは、総受け気味にしたかったので、視点がコロコロ変わって分かりにくいかもー;



単に、ルーファウスとセフィロスに、砂吐きそうなセリフが言わせたかっただけのお話でした。

こういう、受けが天然で鈍い総受け好きです(笑)