夢見丘 9








SIDE:エアリス




 船を下りてから数分後……コスタ・デル・ソルの外──少し歩いた先にある木陰で、エアリスはヴィンセントと合流を果たした。
 「星の声」を聞くことが出来るセトラの力を存分に発揮できる「今」のエアリスにとって、追っ手を撒くことなど、造作もなかったのである。
「本当はね、ミッドガル、出たときから、見張りが居たの。」
 ヴィンセントと共に、華やかな観光地のムードが広がるコスタ・デル・ソルから遠ざかりながら、エアリスは肩越しに名残惜しげに町並みを見つめて、小さくため息を零す。
「そのときも、ちゃんと、撒いたのよ。」
 一緒の乗合バスに乗っているときに気づいたから、バスを乗り換えるときに、さりげなく、撒いて見せたのだ。
 そうじゃないと、モンスターに遭遇したときに、まともに戦えなくなってしまう。──彼らには、自分が攻撃魔法の最高クラスまで使えるマテリアを持っていることは、知られたくなかったから。
 そんなことで旅の遅れを作ってしまうのもイヤだったし、常に監視されている旅なんて、全然気が休まらない。
 そう思ったからこそ、乗り換え地点で、さりげなくバスを通り抜けたりなんかして、撒いたというのに。
──ジュノンで船に乗るときには、撒いたはずの監視員が、背後にベッタリとついていた。
 しかも部屋だって、間隣だったし。
「おかげで、せっかくの船旅が、台無し。」
 ヒラヒラ、と手を振って肩を竦めるエアリスに、横をスタスタと歩いていたヴィンセントが、呆れたようにチラリと視線を向けた。
「当たり前だろう。
 お前が、ジュノンからコスタ・デル・ソル行きのチケットの手配をしたことくらい、ミッドガルを出る前に調べ上げているはずだろうしな。」
 だから、どこで撒かれたとしても、最終的にエアリスがジュノンに来るのは分かっているのだから──便の時間まで分かっているのだから、何を焦ることがあるだろうか。
 そうアッサリと吐くヴィンセントに、エアリスは、むぅ、と下唇を尖らせる。
「それは、そうだろうけど!
 でも、監視は欲しくないってこと、もう少しくらいツォンがわかってくれるかと………………、って、あ、そっか。
 私、まだ、ツォンとは、ちゃんと会ってないんだよね。」
 小さく拗ねたような口ぶりで言いかけたエアリスは、すぐに合点が言った表情で、そっかそっか、と呟く。
 そう言えば、このときはまだ、ツォンはタークス主任ではなくて──エアリスも、何度か顔をあわせたことがあるくらいで、直接話をしたことは、片言くらいしかなかったのだ。
 それも、神羅ビルの研究室の中とか。
「うーん、それじゃ、しょうがない、かなぁ?」
 腕を組んで、難しい顔でそう呟きながらも──やっぱり納得できないなぁ、と言う顔になるエアリスに、ヴィンセントは、仕方ないだろう、と告げる。
「お前は、最後のセトラだ。
 しかも今の時点では、『セフィロスの最有力候補』だろう?」
「ぅわっ! ソレ、大反対! ヴィンセント、それ、言っちゃダメですーっ!」
 意味深に声を低くするヴィンセントに、エアリスは肩を大きく跳ねさせ、持っていたロッドでポカリと彼の背中を叩く。
「だが、実際、今の段階の宝条は、間違いなくソレを考えてるだろう? ジェノバがセトラではないと、分かっているのだから──なら、ジェノバとセトラを融合させようと、な。」
 こんなうららかで心地よい天気の中でする話じゃないと分かっていながらの会話に、エアリスは大仰に顔を顰めて、プクリと頬を膨らませる。
「迷惑だよね、あの人の頭の中。
 だって、昔……今からだと未来だけど、私、ナナキと子供作らされそうになったんだよ!?」
「…………なら、今からその、未来のだんな様と会うわけだな、エアリスは。」
「ヴィンセント!」
 再びロッドを振りおろしたエアリスに、ヴィンセントはうっすらと笑みを浮かべながらヒラリと距離を置く。
 少し離れた場所に軽く足をつけてから、少し離れた地点へと視線を走らせると、
「とにかく、さっさとナナキと合流して、コレルへ向かうぞ。
 バレットが短気を起こさぬうちにな。」
「うん。
 ふふ……私も、みんなと、早く、会いたいなっ!」
 腕に巻いていたマントを手早く身につける彼に、エアリスはホロリと花ほころぶように笑って頷く。
 ティファからの手紙で、ユフィやケット・シー以外のみんなと連絡が取れているのは知っていた。
 ヴィンセントとシドが大陸を走り回って、ナナキとバレットと連絡を取ってくれたことも。
 ──そのとき起きた一悶着について、ティファは言葉を濁していたから……ニブルヘイムに向かう途中、口の軽いバレットとナナキを突付いて、聞いて見ようと、こっそりとほくそ笑んだ。












SIDE:ティファ






 古びた給水塔の上に登って、いつかのように、ブラブラを足を揺らして空を見上げる。
 ただし、見上げる空は、あの頃のような満天の夜空ではなく、青い──透き通るように美しい水色の空。
 あの時は、隣にクラウドが座っていた。
 夜の闇の中でもはっきりとわかるほどに白く鮮明な面差しが、星明りに照らされて、青白く浮き上がり、幻想的に見えたっけ。
「もう、そろそろ着くはずなのよねー。」
 顎をそらしてあたりを見ながら、ティファは漏れ出る笑いを堪えるように、そ、と右手を口元に押し付けた。
 それでも、唇の端から、ふふふ、と笑い声が零れて、ティファは、参ったなぁ、と空を仰いだ。
 体中が、そわそわしているのがわかった。
 目を閉じても、大きく息を吸っても、治まるどころか、指先から、足先から、震えだしそうなくらい、落ち着かないのだ。
 目を閉じている間に──瞬き一つの間に、空を飛ぶ影を見失うかもしれない。
 そう思うと、とてもではないけれど目を閉じてなんていられなくって、ティファは思い切って両足を振り上げると、給水塔の上に立ち上がった。
 すらりと天に向けて伸びた塔の先に手をかけながら、ぐんと踵を上げてはるか遠くの空を見渡すように、視線をあげる。
 澄み渡った青い色のはるか向こうまで見渡すように目を細めて、きゅ、と唇を一文字に引き結びながら、空の果てから、タイニーブランコの姿が見えないかと、見つめる。
 シドの予定では、コレルからタイニーブランコに乗って、ニブルヘイム平原に来るはずだった。
 だから、やってくるならこっちの方角ね、と。
 ティファは給水塔の上をグルリと回るように体を反転させて、コレルの方角の空を──美しい青い空を流れる雲を、じ、と見上げる。
 待っている時間は、それほど嫌いじゃない。
 会ったら何をしようか考えるだけで、胸がドキドキしてくるからだ。
 ──過去の「今」も、同じように空を眺めて、ミッドガルに行ったクラウドが、いつ帰ってくるのだろうと、そればかり考えていたっけ。
「今日中に着くかしら。」
 予定では、今日くらいのはずなんだけど、と、少しだけ心配の色を滲ませて、ティファは目を伏せる。
 エアリスが、「ちょっとしたお小遣い稼ぎ」で、ニブルヘイムまでの──正しくは、コスタ・デル・ソルまでの旅費が溜まったと、報告してくれたのが、つい一週間ほど前のことだった。
 それも、いつもの文通手段ではなく──普通書簡だと、届くのに10日〜2週間強。飛空艇書簡だと、目が飛び出る価格で3日で届く。もちろん、至急ではない限り、エアリスもティファも、普通書簡でやり取りをしている。返事を待っているのが待ち遠しくて、つい、返事も来てないのに、1週間に1回書いてしまったりもしているけれど──エアリスは、PHSから電話をくれた。
 家の電話に出た瞬間聞こえてきた記憶にある声と──それよりも少しあどけなさが残る声に、ティファは、本当に目が飛び出るかと思ったくらい、驚いたものだ。
 すっとんきょうな悲鳴をあげて、挙句の果てに、ボロボロ泣き出して……父が、オロオロと心配そうに右往左往していたっけ。
 遠距離電話は雑音も入るし、お金がかかるから、手短にね──と、エアリスが語ってくれた話は、一度こっちへ顔を覗かせる、ということだった。
 みんなが「この時代」にやってきて、はや数ヶ月が経過しようとしている。
 そろそろ、一度みんなで集って、本格的な情報交換をしようじゃないか、──というのが名目。
 けれど、その本当の目的が、「みんなで会うこと」であることは、口に出さなくても誰もが理解していた。
 一人で居れば、押しつぶされそうな重圧感に──厳しい未来を知っている現実と、周りにある……「幸せだったコロ」の記憶そのままの現実に、挟まれて、悲鳴をあげそうな現状を、緩和し、認識を新たにするいい機会でもあった。
 仲間がいる。
 そのことを、再認識し、気を引き締めるためにも、必要なことだ。
「……本当は、クラウドにも、会いたかったんだけどなぁ。」
 それは、さすがにムリよね、と。
 苦笑めいた笑みを浮かべて──ティファは、一瞬だけ、切なげに双眸を細めた。
「元気に、してるかな。」
 どこまでも澄み渡る空を見上げながら、ふとティファは、その青のイメージをまとった青年の姿を思い描く。
 脳裏に浮かんだのは、ほんの数ヶ月前まで「一緒に暮らしていた」青年の面差しだった。
 ニブルヘイムを飛び出たばかりの少年時代ではなく、多くの苦難を乗り越えた青年の顔だ。
「エアリスが居るから、妙に凹むことはないと思うけど。」
 クラウド、ちょっと目を離すと、すぐに凹むから。
 ──もっとも、数ヶ月前の……正しくは、「9年後」の凹みの原因が、目の前で生きているのだから、逆に腰を据えて前を見てくれているかもしれないけれど。
 ティファは、大きく両手を広げて、空を抱くように顎をそらしながら、
「──でもやっぱり、クラウドの顔が見れないと、心配、かな。」
 少しだけ寂しげな笑みを口元に浮かべると、今度こそ、自分がミッドガルに行こうと、心に決めた。
 ──最も、ミッドガルに行く許可を「娘バカ」の父から得るためには、今回、エアリスがどれほど信頼がおける人なのかを、十二分すぎるくらいに理解してもらわないといけないのだが。
 元々、過保護な方だとは思っていたが、
「まさか、最高価格の護衛付きのツアーじゃないと、許可しない──なーんて言われるなんて、思っても見なかったわ。」
 まったくもう、と。
 ティファは腰に手を当てて、呆れたようにため息を一つ零す。
 けれど、自分でもよく分かっていた。
 しょうがない、と、首を振りながらも──その口元が、嬉しさに緩んでいるということを。

 あの頃は──父が当たり前のように生きていて、ずっと生きていて、今日の続きに明日があるのだと信じていた、あの頃の「今」は。

 過保護に干渉してくる父が、うっとおしいと思い眉をひそめることだって、ケンカに発展することだって、日常茶飯事だった。
 同年代の子たちがミッドガルに行ってしまうのを見送るたび、これみよがしに、さびしげな態度を見せたりもしたものだけれど。
「……まさか、あの頃は、父さんの過保護な姿が見えなくなることが、寂しいと思う日が来るなんて…………思っても見なかったのよ、ね。」
 ふ、とかげりを目元に落として、ティファは苦笑めいた笑みを浮かべた。
 師匠についてザンガン流格闘術を習い始めたときも、年頃の女の子が怪我をして、嫁にいけなくなったらどうするんだと、顔を渋くすっぱくして言っていた父。
 毎日怪我が増えるティファを、厳格な表情で叱りながらも、毎晩こっそりと心配顔で寝顔を見に来ていた父。
 愛されているのを疑うことは1度もなかった。
 それが嬉しいと思うと同時に、邪魔だと思うこともあった。
 でも。
 当たり前のようにあったものが、突然消えたあの日。
 悪夢のような出来事に、頭が真っ白になって、セフィロスの剣を抱えた走ったあの日。
 目覚めたら、何もかもが夢で──心配そうに覗き込む父の顔があるに違いないと、そう、切なく願った……あの運命の翌朝。
 自分を覗き込む顔が、父ではなく、師匠であることに気づいた瞬間の──胸を襲った絶望。
 今でも容易く思いだせるあの瞬間の、表現できない荒々しい気持ちを、ぐ、と奥歯に噛み締めて。
 ティファは、胸元で強く拳を握り締めた。
「──……止めて見せる。」
 低く……呻くように呟いたのは、たった一言の決意の言葉。
 この星の命運がかかった「戦い」のきっかけは、すでにもう、始まってしまっている。
 「今」からでは、止められないのは分かっている。
 セフィロスはすでにこの世に生み出され、ガスト博士は亡くなってしまっている。
 ジェノバは掘り返され、その遺伝子を受け継いだソルジャー達が生み出され続けている。
 星の命は吸い上げられ、毎日誰かが消費している。

 それらすべてを、正しく導くなんてことは、今から初めても到底ムリだろうと思える。
 けれど。
 あのニブルヘイムの悪夢を──セフィロスが狂った最初の夜を、かえることだけは。

「──……それさえ乗り越えれば。」

 きっと未来は、開ける。
 そう──……開けるはずだ、と。
 ティファは、1度強く目を閉じて、心を奮い立たせるように──めまぐるしく蘇ってくる記憶を一つ一つかみ締めて、グ、と顎を引いた。
 逸る気持ちと高ぶる思いを無理矢理飲み込むように、ティファはパチン、と掌に拳をたたきつける。
 そうして、深く深呼吸を落として、再びコレルの方角に続く空を見上げた。
 まだ、蒼い空の向こうには待望の機体は見えない。
 やっぱり、今日中に着くのは無理なのかもしれないと、ティファは小さく肩を落とす。
「焦らなくても、会える、って、わかってはいるんだけど……。」
 それでも──それでも。
 早く、一刻も早く、無事な姿を見たいを言う思いがある。
 その焦燥感が何から湧き出てくるのか知っているから、ティファは切なげに眉を寄せることしか出来なかった。

 目覚めたら冷たくなっていた隣のベッド。
 荷物は残っているのに、姿だけ見当たらない人。
 大丈夫、きっと無事だと思いながら追いかけたその姿が──煌く刃の向こうに隠れた、あの瞬間。

「……大丈夫、大丈夫。」
 自分に言い聞かせるように繰り返して、ティファは胸元に手を置いた。
 どくんどくんと逸る心臓の音を落ち着かせるように、ただの杞憂に終わるだろう夢想を、振り払うように頭を振った。
 けれど、ジリジリと滲み出るような不安は、どうしても払拭することが出来ない。
 本当にエアリスは来るのだろうか。本当にエアリスと会えるのだろうか。本当に手紙のやり取りをしていたのは、「エアリス」なのだろうか。あの電話の向こうの声は、本当の本当にエアリスだったのだろうか。
 そんな答えの出ない問いかけが、グルグルと頭を回りだしてしまうのだ。
 ここが過去の世界だと知った時に最初に抱いた懸念や疑惑が、心を巣食うかのように侵食してくるのだ。
「あぁ、もう……クラウドじゃないんだからっ! しっかりなさい、ティファ!」
 パシン、と頬を軽くたたいて、ティファは混み出てくる悪い考えを強引に振り払おうと試みる。
「ほんと、クラウドじゃないんだから、ずるずるずるずると、見えてもいないことで悩んでも仕方ないじゃない。」
 うんうん、と、自分に言い聞かせるように呟いて──ふぅ、とティファは吐息を唇から零す。
 見えてもいないことで、悩んでも仕方がない。
 エアリスがホンモノかどうかは、会えば分かるのだから。
 というよりも──今考えるべき問題は、ソコではないのだ。
 考えなくてはいけないのは、早くて今夜にも行われるであろう、「今後について」 の相談の内容である。
 ヴィンセントやシドと、ある程度は話してはいるが、具体的なことに関しては──正しくは、誰がどういう役割分担をするのかは、メンバーが揃わないと出来ない。
 特に要になってくるのは、ミッドガルに一人でいる「クラウド」だ。
 本当なら、この会合にだって、参加してもらわないといけないのだが──神羅の新兵であるクラウドには、遠く里帰りできる自由はない。
 だから、エアリスに媒介となってもらうしかないのだが、
「クラウドと、どこまで密に連絡を取れるのか、が、結局のところ問題なのよね。
 エアリスに会ったら、そのあたりも聞かないと……。」
 アパランチに所属していた時に、神羅のことについては、それなりに調べたから知っている。
 新任の兵士たちには、いつも厳しい監視の目が光っているということ。
 届いた荷物や電話の着信・発信履歴はもちろんチェックされるし。下手をしたら、自室に盗聴器が取り付けられている可能性すらあるという。
 だから、下手にクラウドに連絡を取れば、こちらの存在が神羅上層部にばれてしまうことになる。
 特に宝条達に知られるのは困る。これから起きる「事件」の要である彼に、すべてを悟られ、先手を打って逃げられては元も子もないからだ。
 しかもその上、クラウドと自分たちの仲介役になる「エアリス」の立場も、微妙なのだ。
 彼女は、最後のセトラであり、神羅に監視されている人でもある。人権は尊重されてはいるらしいが、それでも彼女が手にした物──手紙やPHSの類のものは、全て検閲されていると言っても過言ではない。
 だからこそ、エアリスもティファも、「セフィロス通信」を通じて知り合った文通仲間、というスタイルを、手紙の上では決して崩さないのだ。
 その中にちりばめられた互いにしか分からないような表現で、状況を把握したりはしていたけれど──やはり、具体的なことは書けないままなのには違いない。
 本当は、シドをせかして、すぐにでもミッドガルに行って、クラウドと連絡を取ってくれと──そう言いたいところなのだけれど。
 クラウドの立場が、細かく分からないので、手のうちようがないのだ。
 正直を言えば、リーブと連絡が取れないかと──リーブがクラウドに味方してくれれば、ひとまずは安心ではないかと、そう思ったのだけれど。
 シドの持っているPHSやデータでは、リーブに連絡を取るのはムリだと言うことがわかっただけであった。
 彼は、9年前も、「それなり」の地位に居るということなのだろう。
「なら、リーブから連絡取ってくれてもいいだろうに!
 ──って思ったけど、自分だけが記憶持ってるかもしれない〜……なーんて思ったら、まぁ、できないわよね。」
 はは、と、乾いた笑いを零して──ティファは、今も「知らない」ままで、一人で居るだろう、リーブとユフィに思いを馳せる。
 ユフィは──まぁ、あのとおりの性格だから、きっと、今頃はウータイで「あそこにマテリアあったよね〜♪」と、マテリアを集めているに違いない。
 自分達の強さは、どうやら当時よりも少しか弱くなっている程度のようだし──ユフィも体が10歳くらいとは言えど、元々の強さを思えば、ウータイに居るモンスター程度にてこずることはあるまい。
 だから、大丈夫だとは、思うけれど。
「……何にしても、最終的には、飛空挺が居ることには変わりないのよね……。
 黒マテリアの確保に、ココのジェノバの破壊。
 それから、アイシクルエリアにいるジェノバ本体の破壊と──リユニオンを誘発しないための方法も考えて……。
 ジェノバの細胞を全部消滅させるのが一番なんだけど。
 後は、神羅に魔晄の採掘を止めさせて──あぁ、今のアパランチを味方につけるって言う手もあるわよね。」
 考えることは、たくさんある。
 でも、一人で考えても──これだ! と思うような案は浮かばず、根っこのないアイデアのようなものが、次々に浮かんでくるだけだった。
 だから、待ち時間に先のことを整理して考えようとしても、すぐに諦めのため息が零れて、思考は散り散りに溶けて行った。
 そうして、物憂げな時間は、すぐに消えてしまい、ティファは俯いていた視線をあげて、真っ青な空を見上げる。
 その青の色に思い出すのは、クラウドの不思議に耀く蒼い瞳だ。
 なのに、ふ、と思い浮かんだ言葉は、
「エアリス、早く来ないかな。」
 待ち人のこと、だった。
 名前を思せば、焦るような気持ちが、再び胸の中に蘇る。
 それが、エアリスの顔を見れば、薄れることを、ティファは知っている。
 「彼女を今度こそ失いはしない」という思いが、その焦りの中の重要なことだったから。
 ティファは一度目を閉じて、記憶の中に居る大切な親友の容貌を思い浮かべて、大丈夫、ともう一度呟く。
 大丈夫、──きっと大丈夫。
 すぐに、エアリスに会えるよ、きっと。
 記憶の中のエアリスが、そ、と微笑むのにあわせて、ティファも小さく笑みを浮かべる。
 暖かな気持ちが胸の中に広がるのを覚えながら、ゆっくりと双眸を開き、穏やかな風の流れる青い空を再び見上げる。
 どこまでも続く青い……青い空のその向こうに。






 キラリと光る、タイニーブランコの機体の輝きが見えたのは、その瞬間だった。









To Be Contenude





まだニブルヘイムに到着していない面々……(爆)
ニブルヘイム編、まだもうしばらく続きそうです。

ていうか、いつまで続くんだ、この話……(遠い目)
クラウドサイドも書かないといけないのに……_| ̄|○i|||i



2010.12.18改稿