あてんしょん ぷりーず ここは、「そういえば、パラレル話の注意書きに、『明訓女子高校とか言うバカなことをするかもしれません』と言って置きながら、書いてなかったな……っ! ということに気づいた管理人が、閉鎖前にやってしまえと自暴自棄(笑)になって書いてみたネタです。 ので、明訓高校に在籍している人間は、すべて「女」であることを前提に描いた、ロマンちっくで恋愛要素があって野球で(謎)、そして失笑を前提にした、 限りなくバカワールドです。 太郎君や岩鬼君が、明訓高校の女子の制服を着ているシーンをアリアリと想像できちゃうあなたっ! 危険信号です! このまま読んでやってください(大笑)。 あ、ちなみに設定は、お笑い前提なので、「山田総受け」です(大笑)。 |
「あの、すみません……野球部のグラウンドって、どこですか?」
突然、軽やかな声が聞こえてきて、何気に振り返った彼は、思いも寄らない顔をそこに発見して、ハッ、と息を呑んだ。
私立白新高校の校門から校舎へと続く、小さな桜並木──薄紅色の華奢な花が満開に咲き誇る春風の下で、スクリと立つその面差しは、ヒラヒラと舞う桜の花びらが良く似合っていた。
小さな白い容貌に、柔らかな輪郭を際立たせるサラサラの漆黒の髪。大きくパッチリとした目は愛らしく、ふっくらとした唇は、リップも塗っていないのに艶やかな桃色。
「──……ぅわっ、さ、さとなかっ!?」
その間近に見える容貌に驚いて、ずざっ、と後方に退いた大げさな仕草をする男子高校生に、呼びかけた少女はムッとしたように鼻の頭にシワを寄せる。
「そうですけど──、俺が明訓の里中だったら、なんだって言うんですか?」
気分を害した様子を隠そうともしない里中に、男は慌てて両手を振って、そんなことはありません、と早口に続けた。
「いや、あの──と、突然目の前に有名人が居たら、驚くじゃないっすか、普通はっ!
あ、あの──……は、春の甲子園での優勝、おめでとうございますっ!!」
そのまま彼は慌てて、手の平を自分のズボンにこすり付けると、ガシッ、とその手で里中の手を握り締める。
驚いたように目を見張る里中の背丈は、テレビで見るよりもずっと小さくて、ずっと可愛らしかった。
その手の平は、自分の手にすっぽりと収まり──確かに野球をしている少女らしく、普通の少女の手よりも硬くしっかりとしてたが、それでも女の手には変わりない。
強引に引き寄せれば、あっけなく自分の胸元に飛び込んできそうなほど、目の前の少女は小さくか弱そうに見えた。
──が。
「──……それはどうもありがとう。……で、手はいつ放してくれるんだ?」
キン──と、下から睨みつけてくるような、苛立ちと怒りが篭った目で見上げられた瞬間、びくんっ、と我知らず肩が震えた。
そのまま、バッ、と手を放す男に、里中は鷹揚な仕草で頷いた後、握られた手を忌々しげに見下ろし、ぴっ、とそれを振るような仕草をすると、
「──野球部のグラウンドは?」
再び、ジロリ、と睨み挙げてくる。
長く揃った睫の奥から睨まれたその目の輝きは、ひどく綺麗で、ひどく美しくて。
その目に見とれながら、彼は知らず手の平を上げ、
「あ、あっち──です。」
唖然としながら、そう答えた。
その答えを聞いた瞬間、里中はニッコリと笑み崩れると、
「そっか。サンキュ。」
身軽な動作で、トン、と男の肩を叩いて謝礼を述べ、ヒラリとスカートを翻して駆けて行く。
慌てて里中を追うように彼が振り返ったときにはもう、里中の小柄な姿は、すでにもうグラウンドの方角へと抜けていくところだった。
軽快に走る違う高校の制服を見て、ギョッとする生徒を見て、やっぱり驚くよなぁ、と彼は思う。
それに付け加え、異様なほど目立つオーラ。
この学校の野球部に在籍している「不知火」も、同じように一際目立つ人ではあるけれど、彼女の「目立つオーラ」は、また格別だ。
ぼんやりと彼は、あっという間に姿の見えなくなった里中の居たあたりを見つめて──はぁ、と浮かれたような溜息を一つ零す。
「……やっぱ、実物のが、かぁわいいよ……、うん。」
先ほど小さな手を握り締めた手を、キュ、と握りながら──しばらくこの手は洗わない、と、心に決めるのであった。
白新高校の野球部──今年の新入部員を相手に、ノックしている連中を横目に見ながら、不知火はゆっくりと振りかぶる。
真夏の灼熱の太陽とは比べ物にならない、春先の穏やかな日差しは、あまりに穏やかで心地良くて、引き締まった気持ちが緩やかにほどけていってしまいそうに感じる。
けれど、そんなふやけた気持ちは授業中だけで十分だ。
練習用のユニフォームに身を包んだ瞬間から、部室に掲げてある「打倒明訓、打倒山田」の文字が、アリアリと脳裏に焼きつく。
一瞬で心のスイッチが切り替わるのだ。
思えば去年の春、「山田」が明訓を選んだと知ったときから、彼女といつか予選で戦うだろうとは思っていた。
あの夏は、山田に負けたと言うよりも、秋から春先にかけてともに山田を追い続けた「少女」が、とんでもない変化球投手だったことに衝撃を覚えた方が先だった。
というか、明訓の「個性ぞろい」にギョッとしたというかなんと言うか。
投手としての「打倒山田」は、刻み込まれたが、まだ「打倒明訓」までには行かなかった。
けれど、白新高校を倒し、さらには雲竜の居る東海高校を「ノーヒットノーラン」で制して優勝した明訓が、思った以上に強いチームと育っていったのを、甲子園大会で目の当たりにさせられた。
そして続く秋季大会、関東大会──果てには、春の甲子園でも、明訓は「無敗」を誇り続けた。
今や明訓は、去年の今頃言われた、「女ばかりのお遊び野球チーム」ではなくなった。
その、全国各地で望まれている「打倒 明訓」に、真っ先に挑めるのが、自分たち神奈川の高校だ。
「…………今年の夏こそは、負けん。」
キッ、と、不知火は自分の前でキャッチャーミットを構える男を睨み据えた。
その、あまりの不知火の鋭い視線に、ビクンっ、と男は肩を震わせた。
振りかぶった腕をガバッと後方に引き、そのまま──投げる……っ。
ビュゥンッ、と風を切る音が、心地良く耳元で鳴った。
間をおかず、バシィッ、と心地良い音が耳に届く。
不知火の速球を受けたキャッチャーが、ボールを受けた瞬間、かすかに痛みに顔をゆがめるのを認めて、不知火は思わず口から零れそうになる溜息を飲み込んだ。
──まだ、夏の予選までは時間がある。
「ナイスピッチ、不知火!」
言いながら、パシン、と投げ返してくる男に鷹揚に頷いて、不知火は再び振りかぶろうとして──向けた視線の先に、ふと見慣れた人影が居るのに気づいた。
チラリと目をやると、少女はかすかに動揺の色を示したが、すぐにそれを飲み込み、ジ、と不知火の一挙手一動を見つめる。
その強い輝きが宿る瞳には、どこか切羽詰ったような色が見えた。
「──……。」
無言で振りかぶる不知火に、少女も無言でこちらに視線を向け続ける。
痛いほどの眼差しからは、羨望の色が見えるような気がした──いや、嫉妬の色、か。
振りかぶり、そのまま投げた球が、鋭い音を立ててミットの中に収まる。
ひぃ、と、短い悲鳴を押し殺したキャッチャーが、それでも必死の様相で、不知火にボールを投げ返そうと手をあげた──時点で、
「──…………っ!!!」
塀の向こうに立つ「偵察者」に、気づいた。
と同時、その手からポロリとボールが零れた。
「……おい。」
思わず眉を寄せて呼びかけた不知火に気づかず、彼は唖然と目と口をほうけさせて、他校の制服に身を包む少女をマジマジと見つめる。
そんな無遠慮な視線を受けた少女は、不愉快気に眉を寄せたが、自分が偵察に来ている身だということを熟知しているためか、それ以上何も言わずに口をつぐみ、フイ、と彼から視線を背ける。
「──明訓の里中の……制服姿…………は、初めて見た………………。」
頬を赤く染めて、呆然と呟く彼を見下ろしながら、不知火は吐き捨てるような溜息を一つ零す。
そう言えばこいつも、「里中ファンクラブ」とか言う、白新野球部にあってはならないようなものに入っていたような覚えがある。
「────…………。」
全く、といらだちながら、自ら練習用のマウンドを降りて、転がったボールを手に取り顔をあげると──グラウンド中全員、と思うほどの人数が、こちらを見て愕然と目と口を開いていた。
その視線の先に居る人というのが──……、
「里中………………。」
今現在、白新高校の「貴重な練習時間」を邪魔してくださる、じゃじゃ馬娘であった。
誰も彼もが、里中の滅多に見ること適わない制服姿に、釘付けなようである。
なんでこんなところに里中が来るんだ。普通、偵察って言うのはマネージャーの役目だろうが。
そう忌々しげに思う不知火は、自分もたまに偵察と称して明訓に山田を見に行っている事実を棚上げしていることに気づくことはなかった。
もちろん、心の中で突っ込んでいるので、誰かに突っ込み返されることはなかった。
どうしてココに里中が居るのか──その答えは、ひどく簡単だ。
彼女がこの春の甲子園で、腕を故障させたというのは、有名な話だからだ。
明訓も新しい「新入部員」が居るこの大事な時期に、エースピッチャーが自ら偵察に来ているということはつまり──そういうことなのだろう。
だからと言って、同情するつもりなどなかった。
大体、新聞や雑誌の記事や同輩達の「里中情報」を聞いている限り、彼女は永遠に野球ができないわけじゃなくって、時間が必要なだけだと言う話だ。
そもそも、あそこまで山田に喰らい付いていた彼女が、「故障」が原因で、野球を止めることなど、想像ができない。
彼女はたとえどういう状況でも、その強い目で乗り越えていくような気がした。
甲子園に間に合わなくても、俺たちには来年がある。
最低でも秋季大会には復活できるはずだ。
そんな彼女に、何の同情を寄越してやる必要があるのだろう?
「そもそも、明訓の心配などしている場合じゃないな。──俺たちはそこに付け込むほうだ。」
そう自分に言い聞かせるように呟きながら、不知火はボールを拾う自分にも気づいていない様子のキャッチャーに、溜息を漏らす。
──やっぱり里中はかわいいな〜、今からでもうちのマネージャーになってくれないかな〜、とか。
そんなことをでれでれした顔で思っているらしいチームメイトが、そこらじゅうにゴロゴロ居るのが現状だ。
だから、不知火は持ち上げたボールを持ったまま、マウンドに近づき、行くぞ、と目の前でほうけているキャッチャーに声をかけた後、里中を改めて見て、ニヤリ、と笑いかけた。
──どちらにしても、彼女がココに居る限り、まともな練習になりそうにないのは確かだ。
それなら。
「里中。」
彼女には、憤りを覚えさせて、この場から立ち去らせるのが一番だ。
それでも彼女がココに来ると言うなら、山田に会いに行ってでも、ココから去らせる。
「今年の夏は、去年のようにフラッグで勝てると思うなよ。」
「──……何っ!?」
キッ、と、からかいのイミを理解した里中が、白い頬を怒りに赤く染めるのが、またかわいいと、思わず目を奪われたキャッチャーのミットめがけて投げた球が、がしっ、と鈍い音を立ててはじかれた。
不知火はソレに顔を歪めて──なんでもないことのような仕草で、顔を赤く染めている里中をさげすむように見下ろした。
「お前のところに、うちを偵察している余裕があるとは、驚きだな。」
ふふん、と、さらにオマケのようにせせら笑いをつけてやると、カッ、と里中が怒りに顔を染めて、不知火を睨み上げたあと──悔しげに右肩を握り締めるのが見えた。
それをただ笑いながら見下ろしていると、里中はキリリと桃色の唇を噛み締め、
「そんな余裕でいられるのも、今のうちだけさ──お前もな……っ。」
そう負け惜しみのような一言を叫び捨てて、肩を怒らせてクルリとスカートを翻して去っていった。
その小柄な背中を見送って、ふぅ、と不知火は肩から力を抜いて吐息をつく。
そして改めて──これでようやくまともな練習ができるかと、正面を向いた先で。
「────…………里中………………。」
ぼー、と、里中が去っていった方角を見つめているキャッチャーが居た。
その足元で、コロコロと先程投げた球が転がっている。
「…………………………………………………………。」
不知火は、その「里中効果」に、ぷつり、と米神の辺りの血管が一本、切れる音を覚えた気がした。
と同時、自分でも自覚しないまま、叫んでいた。
「貴様らっ!! 何をぼんやりしてるんだっ! とっとと練習に戻れっ!!」
だがしかし、この恐るべし「里中効果」は、その日の練習が終わるまで続いたとか言う伝説が、新たに「里中ファンクラブ」会誌に、加わったとかどうとか……。
+++ 里中はアイドル! +++
山田が不知火のアイドルなら、里中は神奈川県下のアイドルです……つぅことで(笑)。
あー……本当に書きたかったのは一体何だったんでしょうねぇ〜。
里中ファンクラブ会誌って……
殿馬「づら〜、おっよぅ、やーまだよ。」
山田「うん、どうしたんだい、殿馬?」
殿馬「これ、やるづらぜ。」
ばさり。
山田「やるって……雑誌? ……かな、ずいぶん薄い雑誌だね?」
殿馬「会誌づらぜ〜。」
山田「いや、殿馬、俺、音楽関係はそれほど詳しくないから…………って、えっ、な、なんで里中の写真が表紙になってるんだっ!?」
殿馬「よーく見てみるづらぜ。ちゃんとよぅ、『里中ファンクラブ会誌』って書いてあるづんづら。」
山田「あ、ほんとだな、里中ファンクラブ会誌第69号って……へー、もう69号まで……って、なんでこんなのが出てるんだよっ!!!!?」
殿馬「モテモテづらな〜。」
山田「いや、ちょっと待ってくれ、殿馬っ! これっ、こんなもの、一体どこで手に入れたんだっ!?」
殿馬「山田よ、おめえも、サトのことになるとよ、動揺するづらな〜?」
山田「だ、誰でもこんなもの見せられたらビックリするだろ。
そうじゃなくって、これ、一体どこで……っ!? 69号ってことは、他にも出てるのかっ!?」
殿馬「こないだよ、飛行機で小林と会ったづらよ。
そん時によ、小林から貰ったづんづらぜ。いまんとこよ、週刊で出てるづらぜ。」
山田「こ……こ、小林君が……こ、これを………………?」
殿馬「おうよー。黙ってればサトはカワイイっちゅうて言ってたづらぜ。」
山田「……(ガーン)……そ、そうか…………そ、それは……貴重な情報を……ありがとう…………。
…………ていうか…………、ファンクラブ会誌……週刊……なんでアメリカにいる小林君がそんなものを……………………。」
→全国各地の高校で、毎週どこの高校が担当するか決められてて、毎週、発行する高校が違うんです! で、69号はちょうど東郷学園の会だったんですよっ!(笑)
東郷学園の号は、中学時代の里中を惜しむ特集記事(笑)。絶対他では手に入らない、ブルマ姿の里中とか、水泳の水着姿の里中とかが載ってるんです。で、山田は更なるショック。里中を朝も昼も夜もお出迎えするようになるんです。
──って、何を考えてたんだ、あたしは……(笑)。