あてんしょん ぷりーず



ここは、「そういえば、パラレル話の注意書きに、『明訓女子高校とか言うバカなことをするかもしれません』と言って置きながら、書いてなかったな……っ!
ということに気づいた管理人が、閉鎖前にやってしまえと自暴自棄(笑)になって書いてみたネタです。
ので、明訓高校に在籍している人間は、すべて「女」であることを前提に描いた、ロマンちっくで恋愛要素があって野球で(謎)、そして失笑を前提にした、

限りなくバカワールドです。

太郎君や岩鬼君が、明訓高校の女子の制服を着ているシーンをアリアリと想像できちゃうあなたっ! 危険信号です! このまま読んでやってください(大笑)。


あ、ちなみに設定は、お笑い前提なので、「山田総受け」です(大笑)。








「明訓女子高校 男達のユメ」












 神奈川県下の野球部では、最近「生写真」が流行っていた。
 テレビで笑っているアイドル歌手や、女優よりも明るい笑顔の良く似合う、さんさんと降り注ぐ太陽の下で、満面の微笑を浮かべる、「野球界のアイドル」。
 しなやかに伸びた手足と、かぶった帽子の中にすっぽりと入ってしまう短い黒髪。
 形良い鼻梁と、零れ落ちそうなほど大きな瞳。長く整然と揃った睫に、ふっくらと柔らかそうな唇。
 小柄な体は、多分きっと、抱きしめたらすっぽりと体の中に入るだろう。
 ユニフォームもアンダーシャツも、襟首の辺りにゆとりがあって、少しかがめばくっきりと浮き出た鎖骨が見える。
 無邪気に笑いながら、帽子の縁に指をかける姿──その桜色の形良い爪先が、明訓のユニフォームに映えている。
 目の前でその小さな体が動いているときには、ただ圧倒されるように見とれることしかできなかったけど、こうして光沢のある写真の中に写っている「彼女」を見ていると、いろいろな発見がある。
 本物の彼女を、じ、と見つめることはできないけれど、テレビ画面を通した彼女や、写真ごしの彼女なら、どれだけでも見つめていることはできる。
 何せ「媒体」を通した彼女は、闘争心をむき出しに睨みつけてくることもなければ、切れ味鋭い変化球を投げてくることもない。
 何よりも。
「……──はぁ……やっぱり里中って、かぁわいいよなぁ〜。
 そこらのアイドル、顔負けだぜ。」
 どれだけ見ても見飽きない美貌に見とれていても、それに気づいた「女傑」どもから、睨まれたり影に引っ張られて腹にキツイものを一発食らわされることもないのである。
「その分だけ、明訓のガードって、かったいよなぁ〜。」
 同じく、「明訓女子高校のエース 里中智」の貴重な生写真を眺めている仲間から、そんな悲しみに満ちた声が飛んでくる
 それに、うんうん、と頷くクラス内の男子が複数。
 彼らの手にも、先日の秋季大会で撮ったばかりの明訓高校のエースの生写真が握られている。
 アイドル歌手や女優の生写真と違って、派手なフリルも透ける布地も、ちょっぴり嬉しいパンチラもない、泥と汗にまみれたユニフォーム姿だったが、それが余計に彼女の美貌と愛らしさを引き立てているのだから、不思議だ。
 フラッシュを反射して煌いている汗は、どんなライトよりも彼女を引き立てる──とは、「里中智ファンクラブ会員」が口を揃えて言う言葉である。
「もともと明訓ってさ、土井垣『おねえさま』目当てに、男女問わずに人気あったけどさ、里中が入ってから、すっげぇよなぁ。」
 凛々しく勇ましく、格好よい「お姉様」は、明訓女子高校内ならず、他校の女生徒からも黄色い悲鳴を貰うほどの人気だ。
 男顔負けの豪打でならした土井垣将子は、良い監督に恵まれはしたが、良い選手に恵まれなかった──正しく言えば、良い投手に。
 そのため、全国に名を轟かせていたものの、決して彼女は甲子園を掴み取ることはできなかった。
 それでも土井垣は、県下では他に類を見ないほどの人気で、いつも明訓のバックネット裏には、「将子おねえさま〜んv」と叫ぶ女子高生で一杯になっていた。
 あの当時は、その中に男子高校生が混じると、教師達から竹箒を持って追いかけられたが──、今は、それがなかった。
 そのため、今彼らが握っている生写真の量が実現できるのである。
「その分だけ、教師の締め付けは前ほどきつくないけどさ。」
 甲子園で優勝した彼女達の元には、男も女も問わず、憧れて集まる記者達で一杯になり、それが故に教師達も、バックネット裏でフラッシュが焚かれても、容認されるようになった。
 それに混じって、写真をパシャパシャと撮るのは、以前よりもずいぶん楽になった。
──が、
「それでも里中の写真を撮るのは苦労するよな。」
 溜息を零しながら、ズラリと机の上に並べた写真は、すべて試合中の里中の写真ばかり。
 ゆっくりと振りかぶったところ。
 汗をぬぐうワンシーン。
 タオルを頭から被って、山田の肩に手を置いて前を見据えている所。
 しかし、試合中ではないシーンに飛ぶと、「前面に立つ山田の太い腕の影から里中の帽子の縁が見えているところ」だとか、「岩鬼がカメラ目線になっている後ろで、里中のグローブが見えているところ」だとかになる。
 ──他にまともに里中が写っている写真はなかった。
「そうっ! 絶対、山田が隠すんだよ。」
 バンッ、とその写真の束を叩きつけて、男は頭の後ろで手を組んで、天井を仰いだ。
 そんなチームメイトに、うんうん、と頷いて、同意を示す
「あと岩鬼。」
「微笑もだぜ。」
 横に広い山田さんと、縦横標準以上サイズの「明訓野球部の女子プロレスラー」こと岩鬼さんと、女子の標準身長をグンと引き離した成長を見せる微笑さん。
 この三人が、常に里中をカメラから守っているような気がしてならない。
 そううなる彼らは、「写真小僧」では決してない。
 正真正銘、この白新高校の野球部員である。
 そして同時に、この夏──初めて大舞台に姿を見せた「里中」に、魅入られたファンどもでもある。
 小柄な体で胸を張り、自信に満ちた美少女を見た瞬間、ある意味毒気を抜かれた彼らははじめ、顔がカワイイだけの「バッティングピッチャー」だと思っていた。
 こんな一年生を出してくるとは、お色気作戦で凡打を狙おうとでも言うのか、と。
 ところが、キャッチャーが横に広い男に変わった途端、少女は変貌を遂げた。
 バッターボックスに入り、ヒタリと自分を見つめてくるかわいい顔に見とれている場合ではなくなった。
──いや、逆だ。
 見とれてるしかできなくなった。
 はっきり言って、キリキリ舞わされてしまった。
 そこで本来なら、「女のくせに、何だっ!」と思うところなのだが、試合が終わった直後、初勝利に本当に嬉しそうに笑ってキャッチャーに駆け寄る少女を見た瞬間、誰の脳裏からもそんな悔しい気持ちは吹き飛んだ。
 それどころか、同じグラウンドでその満面の笑顔を見れたことに感謝してしまうくらい、頭の中で花が吹き荒れた。
 白新高校の男子野球部員のほとんどが、彼女のファンになった瞬間であった。
 小柄で愛らしい面差しと言うだけでも、普通の男のハートを射抜くのに十分すぎるほどの魅力があると言うのに、勝気な性格と、少し天然が入った無邪気さ。まっすぐで少し頑固なところ。
 甲子園中継で、苦しそうに息を吐く赤い唇に、潤んだ瞳、上気した頬。
 それが狙っているかと思うほど見事にアップで映し出された瞬間、彼らの心は完全に決まった。
 翌日には、「里中智親衛隊」の一員になっていたとも言う。
「俺、明訓の試合は全部ビデオに撮ったぜ。」
「雑誌の切り抜きはすべてファイルしたぜ。」
 夏休み中の会話は、前日見た明訓の野球部の試合の話で、いつも持ちきりだった。
 ただしそれは、監督が求めているような崇高な話では、決してなかったが。
 そんな彼ら──秋季大会が終わって、来年の夏まで暇な状態である野球部員達は、今、「対明訓対策」をしていた。
 が、「明訓対策」は「明訓対策」でも、この冬の彼らがしているのは……、
「とにかく、この間の里中のコート姿っ! あれを写真に収めたい……っ!!」
 「里中の写真を撮るための対策」であった。
 そんな思春期真っ盛りな彼らは、どこからどう見ても、
「なのに、山田がぁぁぁっ!」
「岩鬼がぁっ!!」
「この間は殿馬がぁぁーっ!」
 頭を抱えて悶え苦しむバカどもである。
 すでに心境はファンを通り越して、コレクターに近い状況になっている。
 夏のユニフォーム姿の里中の写真は、試合中のものがある。
 彼女の体育祭のジャージ姿も、記者筋から手に入れて手元にある──ほとんど半分以上が、岩鬼や山田、殿馬や明訓の2年生どもに邪魔されていたが。
 さらに文化祭の時に、山田とたこ焼きを半分こする里中とか、土井垣新監督と「お姉様と子羊」と名づけられた写真に納まる里中とか。
 だがっ、ここには、里中の冬の装い姿がなかった。
 それが欲しい──……っ!
 彼ら白新高校の野球部員は、切実に願った。
 おそらく、それを狙っているのは彼らだけではなく、
「東海のヤツラには負けたくないなっ。」
「横浜の連中にだって、後を引きたくないぜ。」
 それよりも先に、手に入れてみせる……っ!
 そう拳を握り合い叫びあう姿は、一種異様で、同じクラス内に居た女子は、遠目にそれを眺めていた。
「同じクラスでさえなかったら、『対明訓対策に燃えてるのね』って思って済むところなんだけど……、同じクラスだからこそ、ヤツらが何の明訓対策をしてるのかまで分かるんだよね……。」
 ヤだなぁ、──もう来年の夏は、うちの野球部の応援に行けそうにないよ、と。
 そう眉を寄せる女子達は、そのままチラリと野球部員の住処になっている教室の片隅へ視線をやり、一人ポツンと離れた場所で本を開いている男を見た。
 窓辺で、冬の穏やかでありながら暖かい日差しを浴びて、彼は雑誌を開いていた。
 しかし良く見れば、いつまで経ってもその手が動かないことに気づいただろう。
「不知火君だけよね……里中さん、里中さんって騒いでないのは。」
「不知火君は、打倒山田さんに燃えてるものね〜。」
 彼は別格だわ、と、うっとりと見とれるような目でそう呟く。
 野球部の連中は、秋が終わってから以降、「やっぱり里中の居ない明訓は楽しくない」だとか言い続けていて、正直、うっとおしかった。
 その中、不知火だけは来年の夏に向けて、山田研究に余念がない。
 現に今も、熱の篭った女子の視線を受けた不知火が広げているのは、発売したばかりの「高校野球」という雑誌だった。
 その表紙を飾るのは、もちろん今年人気沸騰&話題一番の、明訓高校のメンツである。
 それを真剣な表情で見下ろす不知火の横顔は真剣そのものである。
 真剣、そのものである、が。
「……………………………………。」
 不知火が握り締めている雑誌の「捲られないページ」に、挟まっているものがあることに、誰も気づいてはいなかった。
 白い縁の、どこにでもありそうなありふれた写真。
 しおり代わりに使うには、少しばかり大きいそれは、チームメイトが里中の写真を写そうとして、山田に邪魔されたものであった。
 つまり写真には、厳しい表情をして里中をさりげに庇っている山田が写っている。
 その顔は、彼女がバッターボックスに立ち、真剣な顔で自分を睨みつけるように見ている顔に似ていた。
 不知火はジ、とそれを見つめ──、
「…………山田…………。」
 暗い色を込めて、そう呟く。
 秋季大会で、自分を翻弄させたあの山田の顔が、山田の表情が、アリアリと脳裏に浮かび上がる。
「────………………。」
 不知火は無言で雑誌に挟んだソレを見つめ続ける。
 そうして見ていると、フツフツと山田に対する闘志めいたものが、胸の内から湧き上がってくるようだった。
 そう。
 これは──……、
「夏は、必ず……勝つ。」
 燃える闘志なのだと、不知火はそう信じて疑っていなかった。
 そして彼はそのまま、写真を雑誌から抜き出すと、ズボンの後ろポケットから取り出した財布に、しっかりとソレを挟み込む。
 これでいつでも山田の写真を取り出し、この写真を見て、常に闘志をみなぎらせることができる。
「Never Give Up……っ。」










──後に、「山田」の写真を、財布に入れては、しょっちゅうそれを引き出し、その写真を眺めている不知火の姿を、チームメイトが何と呼んでいたのかは…………誰にでも分かることである。















+++ 不知火→山田ですねっ! +++


はいはい、もうこのネタはやめるとか言っておきながら(しかも更新停止してるのに)、また書いてますよ、私。
……バカじゃないですか…………。

…………でもまぁ、しょうがないですよねっ!
仕事中に突然、

「山田の写真を熱いまなざしで見つめる不知火」

が、ポコン、と浮かび上がったんですからっ!
ということで、このシリーズでは(えっ!?)、不知火と雲竜は恋のライバルみたいです。
………………ん、そういうことなんです。


どういう噂って……こういう噂?↓




「山田っ!!」
「ん、どうしたんだ里中……って、里中っ! いつも言ってるだろうっ! タンクトップ一枚で歩いてるんじゃないっ!」
「だって風呂上りでアツいんだもん。いいじゃん、どうせ女しか居ないんだからさ。」
「いや、そりゃ合宿所内はそうかもしれないが、でも窓から誰が見てるか分からないだろ……。」
「そんなことはどうでもいいんだっ! それよりも山田っ!」
「いや、よくない。良くないから、里中。」
 諦めたように溜息を零しながら、里中に上着をかけてやる。
「ん……あ、サンキュ。って、そうじゃなくって、山田、お前、これから気をつけろよっ!」
「気をつけるのはお前のほう……て、何がだ、一体?」
「お前、狙われてるぞっ!」
「────…………何にだ?」
「不知火にっ!!」
ババーンッ。
「…………………………………………。」
「気をつけないとっ。」
「──……え、いや、不知火はお前が……あ、いや、不知火が俺に勝とうとしてるのは、前からお前だって知ってることじゃないか。」
「そうじゃないんだっ、そうじゃなくって……えーっと…………なんて言ったらいいんだろう?
 (まさか、不知火が毎日山田の写真を見て愛をささやいてるなんて噂を、そのまま伝えるわけにも行かないしな……うーん…………)
 ……とにかく山田。これからカメラに気をつけろっ!」
「────…………そっくりそのまま、お前に返すよ、里中。
 とりあえず……いくら風呂上りだからって、タンクトップ一枚は止めろ……な?」
「ん? ん……良くわからんが、分かった。
 これからはシャツにしとく。」
「そうだな、そうしてくれ……。」