あてんしょん ぷりーず ここは、「そういえば、パラレル話の注意書きに、『明訓女子高校とか言うバカなことをするかもしれません』と言って置きながら、書いてなかったな……っ! ということに気づいた管理人が、閉鎖前にやってしまえと自暴自棄(笑)になって書いてみたネタです。 ので、明訓高校に在籍している人間は、すべて「女」であることを前提に描いた、ロマンちっくで恋愛要素があって野球で(謎)、そして失笑を前提にした、 限りなくバカワールドです。 太郎君や岩鬼君が、明訓高校の女子の制服を着ているシーンをアリアリと想像できちゃうあなたっ! 危険信号です! このまま読んでやってください(大笑)。 あ、ちなみに設定は、お笑い前提なので、「山田総受け」です(大笑)。 |
──放課後、野球部合宿所内が個々の部屋。
窓のカーテンを閉めて、山田と里中は服を脱いで練習用のユニフォームに着替えていた。
学校の教室で体操服姿に着替える時は、ブラウスで隠して下着にならないようにうまく着替えるが、合宿所内ではそんなこともない。
何せ、四六時中一緒に居る間柄の人間ばかりがいるのだ。隠れてこそこそ着替えていようものなら、岩鬼から「女らしゅうないわい!」と後ろ襟首引っつかまれ、真っ裸にひん剥かれて風呂に放り込まれるのがオチである。
脱ぎ終えたブラウスを床に落とした里中は、そのまま上半身を屈めて、丁寧に折り畳んで置かれているユニフォームを手に取ろうとしたところで、ふと、その手を止めた。
視線をあげた先では、山田がブラウスを脱いだその手で、丁寧にブラウスを折りたたんでいるのが見えた。
別に、脱いだ後は洗濯に出すだけなのに、山田は本当に几帳面だ。
その山田の背中を、なんとなくユニフォームを手に取ったまま見つめていた里中に、
「……ん? どうかしたのか、里中?」
山田が、不思議そうに振り返ってくる。
そんな彼女の下着以外身につけていない上半身に、里中は慌てたように顔の前で手を振り、ううん、とかぶりを振った。
「早く着替えないと、体が冷えるぞ。」
穏やかに微笑む山田に比べて、里中は華奢で細く、肉付きもあまりよくない。
だから季節を問わず風邪を引きやすいのだ。
しかも冷え性。
そんな里中のことを思って忠告をしてくれる山田に、そうだよな、と笑ってから、里中は無言で自分の体に視線を落とし、
「………………………………。」
しばらくの沈黙の後、
「山田って……いいよなぁ…………。」
ポツリ、と、自分にしか分からない呟きを零した。
そろそろ冬の色が見え隠れし始めた明訓高校野球部がグラウンド──今日も元気良く集まってきた二年生と一年生は、グルリとグラウンドを見回して、先日の関東大会から監督になった土井垣先輩を探すが、その姿は見えない。
吹いてくる北風に、ピョンピョンと飛び跳ねながら、
「土井垣さんが来ないなら、先に走りこみしちゃいましょーよ、俺、すっごく寒いんですけど。」
里中がそう訴える。
キャプテンの山岡は、そうだな、と首を傾げると、校舎のほうを振り仰ぎ、多分、今の時期の三年生は忙しいから、そんな理由で遅れているのだろうと判断して、
「それじゃ、とりあえず先に走りこみするか……。
よーし、それじゃ、まずは走る前に体をほぐすぞ! ほら、いつものように二人一組になれ!」
パンパン、と手を叩いて、一同を促す。
はーい、と返って来る甲高い声に、うん、と頷くと、山岡も手近にいた石毛と組み、ストレッチを開始し始めた。
もちろん、里中は隣にいた山田と組み、微笑が岩鬼と、そして殿馬は北と組んでストレッチを始める。
背中同士を合わせて、ぐぃーん、とお互いの体を背中に背負うストレッチでは、微笑が巨体の岩鬼相手にヒィヒィ言っていて、北が殿馬とならちょうどいいと喜んでいて。
「……里中、大丈夫か?」
山田は、厳しい顔つきで自分を背負おうとがんばる里中を見下ろした。
自分の力だと、小柄で軽い里中は、ヒョイと持ち上げられる。
けれど、里中はそうも行かないだろう。
「う……ん、もうちょっと…………っ。」
苦しそうにそう呻く頬が、赤く染まっている。
桃色の濡れた唇から零れる荒い息に、山田は困ったように眉を寄せた。
もうちょっと、と里中は言っているが、正直な話、山田の体はピクリとも動いていない。
どうしようかな──と、山田は同じグラウンドで、ギッコンバッタンと運動している面々を見回す。
その面々のさらに向こう──グラウンドと学校との間を隔てるバックネット裏には、練習を始めた当初には居なかった人影が、たくさん群れていた。
夏の甲子園で優勝しただけでも、記者や人気であふれていたが、先日の秋季大会で優勝して以来、人数はドッと増えてしまった。
特に、同じ年頃の男子高校生や、大学の男学生が。
彼らの興味津々の、少し興奮したような面差しと、手にしたカメラの先が、自分が背にしている少女の下に照準を合わせられているのは間違いなく──思わず山田はその視線をたどって、自分の背中で呻いている里中に視線を落とした。
「んーぅっ。」
自覚のない整った容貌に、興奮の色がにじみ出た赤い頬。キュ、と結ばれた桃色の唇と、力みすぎて微かに潤いを纏った瞳。
その容貌をアップで映し出す望遠レンズが、どういう意図を持って彼女に照準を合わせているのか、山田はようやく理解して、慌てたように里中の腕から自分の腕を引き抜いた。
「わっ!なっ、なんだよ、山田っ!?」
そのまま前のめりにつんのめった里中は、とっさにバランスを取り、クルリと身を翻す。
「いや、里中──ほら、もう時間がないから、柔軟に入ろう。」
ヒラヒラと手を振って、山田は周りを示した。
里中はそんな彼女をいぶかしげに見上げたが、見回した周囲は確かに、揃って地面に座り込んでの柔軟体操に入っていた。
「……すまん、山田……。」
しょぼん、と肩を落とす里中に、まぁまぁ、と山田は笑いかけると、彼女に座るように促した。
素直にチョコンと地面にしゃがみこむ里中の背を、ゆっくりと押しながら、山田はクニャリとやわらかく地面に突っ伏す里中の向こうに見える、里中ファンを見やり、渋面を作る。
──このままじゃ、里中によくないことになりそうだ。
後で監督に相談しておいたほうがいいだろう。
山田は、こっそりとそんなことを思って、溜息を一つ零す。
里中は無言でそんな山田の溜息を、肩越しに見上げて──視線を彼女の視線の先へと飛ばした。
バックグラウンドに鈴なりのようにたむろしている男ども。
女学校には不似合いな光景は、本来なら教師達によって追い出されてもおかしくないが、この野球部のグラウンドだけは別。
青春の汗を流す人間を見学するものに、不埒な動機などないと、そう信じているのだろうか?
──だと、しても。
「…………………………。」
里中は、それを見ながら、先日の秋季大会の時の試合のことを思い出して──ベンチで試合を見ていると、第三者の目で見えることがある。
そのことで、里中は気づいたことがあった。
それは──、不埒な動機で女子野球部を見ている人間の「目」のことであった。
グ、と腰を折るようにして、ペッタリと地面に張り付きながら、里中は視線を中空にさまよわせる。
「……山田は絶対自覚がないから、俺がなんとかして守らないとな……っ。」
山田が、そっくりそのまま同じことを思っているとも気づかず、里中はひっそりと決意の色を込めて、そんなことを呟いた。
山田は、自分の隣に座る里中を、心配そうにチラリと横目で見やる。
自分たちと同じように、毎日残暑の日に焼かれているというのに、白く透き通るような滑らかな肌の里中は、自分では自覚がないだろうが、同じ学校の生徒の憧れの的だ。
額に零れる短い前髪が、サラサラといい香を零すのを見下ろしながら──自分たちと同じシャンプーを使っているはずなのに、里中だけは特別のいい匂いがする。彼女が他に何かつけているわけではないことは、同室の山田が良く知っていることなのだが。
「……里中、食事が進んでないようだけど、気分でも悪いのか?」
今日の練習はハードだったからな。
そう心配そうに尋ねる山田に、里中はゆっくりと顔を上げて、軽く首を傾げる。
「……いや、ちょっと考え事をしてたんだけど……。」
続けて、里中は視線を自分の目の前のプレートに落とした。
今日の夕食の中身が乗ったプレートは、まだ一口二口しか手をつけられていない。
「なんや、食欲ないんやったら、わいが食ったるで。」
ほれほれ、と大きな手の平をヒラヒラと舞わせる岩鬼の手の平を、ブッスリ、と隣の殿馬が持っていた箸で突き刺し、
「里中の飯を取るんじゃねぇづら。食べれるときによ、ちゃんと食べねぇとよ、またすぐにバテバテになるづんづら。」
「そんなに俺はスタミナがないわけじゃないぞっ。」
ム、と唇を尖らせた里中が反論する。
「里中……ご飯が進まなくなるくらい、一体何を考えてたんだ?」
もしかしたら、またどこか肩か肘でも故障したのかと、そう心配そうに尋ねる山田に、里中は殿馬達に向けた拗ねたような表情のまま、クルリと彼女を見上げた。
満面の微笑を零せば、砂糖菓子のように甘い色のにじみ出る里中の、拗ねたような表情も、愛らしい──が、その愛らしい顔を持つ少女は、山田を大きな瞳で、ジ、と見上げたかと思うやいなや、
「うん、実はな。」
真摯な言葉で、真摯な表情で──続けた。
「山田……何を食べたら、そんなに胸が大きくなるんだ?」
ことのついでのように、里中は箸を持っていないほうの手の平で、山田の胸に手を当てる。
──と同時、
「ぶほっ!!」
「ごほごほっ!!」
その里中の正面に座っていた山岡と北が、口の中のから揚げの破片を噴出した。
「って、ぅわっ、何するんですか、突然っ!」
里中は、そんな突然の暴挙に出た山岡と北に、ひどく不快げな視線を向けるが、ごほごほと激しい咳き込みに襲われる二人はそれどころではない。
慌てて山田が立ち上がり、手近なヤカンを取り上げると、二人のグラスにお茶を注ぎ、
「キャプテン、北さんっ! お茶です!」
必死で机に向かって咳き込み続ける二人へと、お茶を差し出す。
二人は、涙目になりながら、コクコクと必死に頷く。
そして山田が差し出してくれたお茶をガッと必死になって飲み込んだ。
「もー、そうやって山田の手間を増やさないでくださいよね。」
まったく、と腕を組む里中は、自分が食事中におかしな発言をしたという自覚はないらしい。
そんな彼女に、あははは、と山田は乾いた笑いを漏らすばかりで、突っ込むことはしなかったが、山田の隣に座っていた微笑は違った。
「智ちゃーん。食事中に、突然そんな話されたら、普通、誰でもビックリすると思うよ?」
「え、そんな話って、なんだ?」
首を傾げる里中の愛らしい容貌に、微笑も、あはははは、と乾いた笑いを零す。
やっぱり自覚はないらしい。
「そんな話っちゅったらよぅ、山田に乳のでかくなる秘訣ちゅうのを聞いてたことづらよ。」
ぐーらぐらと、椅子の後ろ半分の脚でバランスを取りながら、殿馬が説明してくれた。
「ち……ちちって……いや、確かにそう…………なんだけどさ…………。」
山田の出してくれたお茶で、どうにか咳き込むことを必死に終えた山岡が、げほっ、と最後に一度咳を零して、苦しげにうなる。
かすかな羞恥で、頬を赤らめる山岡と北と異なって、里中は憤慨したように頬を赤く染める。
「誰も秘訣なんて聞こうと思ってないよ! ただほらっ、山田は胸が大きいから、どうしてそんなに大きくなったのかなー、とか、疑問に思うだろっ!」
バンッ、と片手で机を叩く里中に、誰もが「それを胸が大きくなる秘訣を聞いた」っていうんだよっ、と思ったが、懸命にも口に出すことはなかった。
同じ風呂に入っている者同士、いろいろ思うことはあっても、口に出すことはしないのだ。
──が、しかし、
「サトは、まずしい乳しとるからの。」
味噌汁をカポッと一口で飲み込んだ岩鬼が、里中のひそやかなコンプレックスを刺激するようなことを零した。
と同時、里中はカッと頬を赤く染めると、
「なんだとっ!? そういう岩鬼なんて、胸じゃなくって筋肉しかないだろっ! お前の胸なんて、ただの鉄板じゃないかっ!」
思いっきり良く叫んだ。
だがしかし、そんな里中の台詞を、ふん、と岩鬼は鼻息ひとつで吹き飛ばし、
「て、鉄板で上等やないけ。おんどれの洗濯板よりも、頑丈で立派やさけの。
折れたらえぐれるんちゃうかー、って心配せんてもすむやないけ。」
「……くっ。」
「岩鬼っ! いいすぎだぞっ!」
キュ、と奥歯を噛み締めた里中が、爆発するよりも先にと、慌てたように山岡が止めようとするが、
「山田っ! こうなったら奥の手だっ!」
里中は、くるりと体を回転させて、山田を見上げると、彼女のふっくらとした手の平を握り締め、グイッと彼女に顔を近づける。
鼻と鼻が触れ合うほど間近に迫る里中の美貌に、一瞬山田は息を呑む。
これほど間近で見ても、毛穴すら見えない綺麗な肌を持って、彼女はこれ以上何を望むというのだろう?
「お、奥の手って……?」
なんだかイヤな予感がして、ジリ、と椅子の上を後退した山田に、さらに里中は近づき、ギュ、と彼女の手を握り締めると、この上もなく真摯な眼差しで、彼女の手を引き寄せ、
「今日、クラスの男子が言ってたんだけど。」
そのグローブの良く似合う安心感漂う肉厚の手の平を、自分の胸に当てる。
とたん、自分のものとはまったく違う、初めて感じる他人の胸の感触に、山田は目を白黒させながら、
「…………………………さっ…………と、なか………………。」
何をするつもりだと、唇をゆがめる中。
「誰かに胸を揉んでもらったら、大きくなるって言ってた。」
里中は、ひたすら真摯だった。
「……………………智……………………。」
「里中……。」
「…………────あぁ……言うなぁ、そういえば…………。」
そんなばかばかしいほど愛らしい少女に、微笑も先輩達も、なんだか生ぬるい微笑みを浮かべた。
なんというか、バカな子ほど可愛いというか、それで胸を揉んでもらう相手に山田を指定するその可愛いっぷりに、かいぐりして撫でたくなるというか。
「山田っ、頼むなっ。」
キリ、と真剣な顔と真剣な声でそう言う里中に、山田は必死で手の平を強張らせながら──少しでも手を動かせば、里中の胸を押してしまいそうで、怖かった。
「い、いや、あのな、里中……っ、そそ、そういうのは、そう! 彼氏にお願いするものじゃないか……っ!?」
動揺した山田の台詞に、しかし里中はアッサリと、
「山田のほうがいい。」
「………………────────。」
「………………………………。」
「……………………………………。」
微妙な沈黙が、食堂に下りた。
山田は、完全にフリーズしてしまっている。
そんな中、ギィ、ギィ……、と、殿馬が一人マイペースに椅子を傾ける音が響いた。
そして一拍後。
「──里中。」
「うん。」
「俺は──その、小ぶりのほうが、動きやすいし、可愛くていいと思うぞ。」
山田は、少しばかり引きつった笑みを浮かべて、そう告げた。
里中は、小動物のような大きな目で山田の顔を、ジ、と見つめると、
「そっか……山田よりも大きくなろうかと思ってたんだけど──……。
うん、……山田がそういうなら、今のままでいいや。」
にっこり、と花綻ぶように笑った。
その綺麗な笑顔に、ホ、と胸をなでおろしつつ──、
「…………………………………………。」
「山田が言うなら」と──そう嬉しそうに笑う里中の言葉の深い意図を、決して山田は突っ込むことはなかった。
聞いたら、なんだか怖い世界が待っているような気がしてならかなったからである。
+++ え、里→山ですかっ!?(笑) +++
なんでこんなにおバカなんだろう……(涙)。
おバカすぎていとしいと思います
っていうか、もういい加減このネタやめようよ……(笑)。