あてんしょん ぷりーず ここは、「そういえば、パラレル話の注意書きに、『明訓女子高校とか言うバカなことをするかもしれません』と言って置きながら、書いてなかったな……っ! ということに気づいた管理人が、閉鎖前にやってしまえと自暴自棄(笑)になって書いてみたネタです。 ので、明訓高校に在籍している人間は、すべて「女」であることを前提に描いた、ロマンちっくで恋愛要素があって野球で(謎)、そして失笑を前提にした、 限りなくバカワールドです。 太郎君や岩鬼君が、明訓高校の女子の制服を着ているシーンをアリアリと想像できちゃうあなたっ! 危険信号です! このまま読んでやってください(大笑)。 あ、ちなみに設定は、お笑い前提なので、「山田総受け」です(大笑)。 |
歩道橋の真下──パタパタと歩道を掛けていくずんぐりムックリの後姿を見下ろして、青年が隣に立つ人影二つに向けて呟く。
「山田は、明訓高校か。」
薄い唇に浮かぶ、冷笑とも嘲笑とも見分けがつかない笑みを見下ろして、細身の青年の二周り以上は巨体の男が、カッカッカッと快活に笑った。
「不知火、そういうおはんは、どこの高校に決めたと?」
かく言う彼が羽織るガクランは、つい一ヶ月前に見た時と同じものに見えたが、格段に真新しく、付けられた金のボタンには、「東海高校」の校章がきらりと光っている。
そんな雲竜を見上げて、不知火はニヤリと笑うと、
「見ての通り、白新高校さ。」
すでに切れ目の入れてある学生帽の中央に表示された校章を示してみせた。
そして彼は、自分たちに比べてさらに小柄な人影──スラリとした立ち姿の、愛らしい面差しの少女へと視線を落とす。
髪を長く伸ばして微笑みさえすれば、清楚で可憐だと騒がれそうな雰囲気を持つ美少女は、しかしその繊細な容貌にはまったく不釣合いな、大きな瞳に強い輝きを宿して、ニ、と二人を見上げた。
初対面の時から、「もったいない……」とシミジミと思ってしまうほどに、彼女は外見に反した性格をしている。
「そういう里中、お前はどこなんだ?」
見下ろした先で、少女はニッコリと可憐に笑った。
白い面差しが、ホロリと花咲くようにほころびるのに、思わず不知火も雲竜も息を詰める。
──まったく、黙って座って笑っていれば、可愛いのに。
彼女は先日彼らと会ったときに着ていたのとは違う制服を──白いブラウスの胸元についた、細く赤いリボンを指先でクイと引っ掛けると、
「俺は、見ての通り明訓高校さ。」
愛らしい桃色の唇から零れるとは思いもよらない、男言葉でそう笑った後、歩道橋の手すりに落としていた腰を、ヒョイとおろすと、
「──……なにっ!?」
驚いたような顔の彼らを振り返って、イタズラめいた笑みを浮かべると、
「山田と同じ制服なことくらい、見て分かるだろ。」
そんな子憎たらしい言葉を残し──だが実際、歩道を走っていた山田と同じ制服に身を包んでいるのに、まったく気づかなかったのは不知火たちの過失である。たとえ、目の前の美少女と山田が着ていた制服が、同じように見えなかったのだとしても、だ──、彼女は軽やかな足取りで、歩道橋から降りていった。
その、弾むような小柄な背中を見下ろして。
「……くっ、まさか山田が、よりにもよって、女子校に入るとはな……っ。」
悔しげに、不知火と雲竜が、歯を食いしばった。
「山田さん。」
ヒラリ、と手を振った先にたつ美少女を見て、山田は驚いたように目を見張った。
自分と同じ制服に身を包み──それがまた、その場に居る誰よりも似合っている──、ニッコリと花のかんばせをほころばす少女は、この場に居る誰よりも女らしく、愛らしく見えた。
だがしかし、山田は知っている。
目の前の彼女は、中学時代に「女だから」という理由で、野球部のマネージャーしかさせてもらえず、それを改革するためだけに、自分を追いかけてきたという、根性の持ち主であることも。
しかもその挙句、中学で名を馳せた「怪腕不知火」に対して、ライバル心を強く持ち、なおかつ「豪打雲竜」の手に噛み付くほどの「おてんば」なのである。
「さ、里中さん……まさか、君もこの高校だったのかい?」
驚いたように目を見張る山田に、里中は嬉しそうに顔をほころばせると、まるで踊っているかのような軽やかな足取りで山田の下に近づいてくると、
「もちろん! 女だてらに野球なんて……とか言いやがる男どもを、滅殺するためには、山田さんの力が、どうしても必要なんだ。」
ギュムッ、と、「山田の手の平ってグローブみてぇ」と、中学時代に男子からからかわれた山田の手を、白魚のような白く繊細な手が握り締めた。
その、握り締めたら壊れてしまいそうな小さな手に、山田はなぜか焦り……そして同時に、驚いた。
彼女の手は、見た目どおりの繊細で華奢な柔らかい手ではなかった。
その掌の皮は厚く、バットタコも出来ている──それは、野球をしている人間の、掌だった。
「里中さん──……。」
どう見ても、自分とは違って女らしくて可愛らしい容貌の里中を見下ろし、とまどうように名を呼んだ山田に、彼女はキラキラと輝く目をして──繊細な容貌に、その強い意志を秘めた瞳は、ひどく不釣合いに見えると、初対面のときにはそう思ったものだけど、今は純粋に、目の前の目が綺麗だと思った。
「山田さんっ。一緒に、前人未到の、女子野球部の甲子園制覇を目指そう!」
彼女の目は、本気だった。
「………………里中さん…………。」
ただその迫力に圧倒されて、山田は彼女の名前を呼ぶことしか出来なかった。
この高校に山田が入ったのは、「ソフトボール部」ならぬ、「女子野球部」が存在する唯一の高校であり、同時に山田が尊敬する「土井垣将子」が居るからだった。
女子高生にして、男子高生顔負けのスラッガーでもある土井垣は、山田と同じポジション──捕手ということもあって、彼女は土井垣からすこしでも多くのことを吸収して、彼女の後継者になれたらいいと、そう思ってこの高校を選んだのである。
甲子園を目指せるものなら目指したいという気持ちが、ないわけではなかった。
けれどもそれよりも山田は、ただ純粋に野球をしたくて──そして自分をライバルだと認めてくれた不知火や、雲竜と言った男達に出来る限り応えたいと思っただけなのだ。
「山田さんがこの明訓を選んだのは、絶対正解だよ。
あのキザな不知火や、力バカの雲竜なんかと一緒に野球をやるためじゃなくって、山田さんは、俺とバッテリーを組むんだから。」
何を根拠にそういいきるのか分からないが、彼女の目は真剣で、キラキラと輝いていて──、その目を見ていると、漠然としか抱いていなかった「女子野球部甲子園初出場」だとか、「史上初の女子野球部の甲子園出場」だとかが、夢ではないような気がしてきた。
──何よりも、この高校には土井垣さんが居て、さらに言うならば中学の時に作った野球部で出会った「殿馬」や、「岩鬼」も居る。
そんな彼女たち全てが、野球部に入ってくれたなら。
その夢は、見果てぬ夢では、ないのかもしれない。
山田は、視線を落として里中の小さな手が握り締めている自分の手を見下ろす。
自分の手よりも、ずっと小さくて細い里中の腕が、不知火や雲竜のものよりも、ずっとたくましく見えたような気がした。
目を上げれば、山田が「うん」と言ってくれるのだけを信じて待つ、少女の瞳。
山田はそれを見返して──けれど、口に出しては言わず、ただ、コクリ、と頷いた。
途端、パァッと花がほころぶように、満面の笑みになった里中は、
「それじゃ、山田さんっ! 今日から一緒に、頑張ろうなっ!」
漏れでる嬉しさを噛み殺せないかのような笑みで、山田の掌を強く……強く握り締めた。
そんな二人の少女を見ていた、
「……おぅよぅ、山田は、男だけじゃねぇと、女にもてるづらな〜。」
「な、なんじゃい、あのドブスコンビは……吐きそうやで。」
今年の新入生の中でも、際立って目立つ小柄な『キワモノ』ピアニストと、際立って大柄で迫力のあることで目立つ『トラブルメイカー』お嬢様とが、野球部に入るのは、このすこし後の話である。
+++ 帰らせてください…… +++
──────土井垣将子さんが名前しか出てこなかった……(大笑)。
ということで、お遊びで作ってみました! 設定がバカなので、シリアス風に見えても、ギャグですよ。
ほら、この設定の背景を考えれば考えるほど、ギャグっぽく思えてくるじゃないですか!!(笑)
ちなみにその他の設定も色々と考えてみた(……考えるなっ、と言いたいところですが、これが二次創作作家の性ですので)。
→里中 智
外見は女らしくて可愛いのだが、口を開くと台無しになる美少女。
自分の外見にコンプレックスを持っていて、女あつかいされるとムッとする。
自分的には、鏡の中に見える顔が、土井垣さんのようだったら良かったのに、と思っているらしい。
凶暴犬注意報が常に発令中。高校在学時代に、撃破したチカンの数は、100に上るとかいう伝説ができる。
在学中の彼女の名台詞「山田と付き合いたかったら、甲子園で優勝してみせろっ!」と、「山田、お前の貞操は俺が守る!」は、有名(笑)。
→山田
外見はずんぐりむっくりで、掌はグローブのように厚くて大きい。
中学時代は捕手に打撃手にと大活躍した、女とは思えない立派な経歴の持ち主。
なぜか男に(しかもピッチャー)に良くもてる。
小林さんが初恋の相手らしいが(爆笑)、小林さんは決して山田を女として見てくれはしなかった……(涙)。稔子は山田の気持ちを知っていて、色々と協力してくれていた。
夏子さんからライバル視されている(笑)。
里中が自分の貞操を守ろうとしてくれることに苦笑しつつ、「お前を狙ってる男のほうが多いから……。」と、いつも気を揉んでいる。
→岩鬼 正美
いいところのお嬢様。けれど、上のお兄様方と同様、お父様に似てしまったのが運のツキ。女とは思えないほどの怪力と体躯を持ち、全女プロレスから勧誘が来ていたが、それを断り明訓女子高校に入学。
同学年の夏川夏子さんのようになりたいと彼女にアコガレ、密かに彼女のことを心の中で、「心のお姉さま」と呼んでいる(大笑)。
→殿馬
天涯孤独の孤児であるが、そのピアノの腕を買われて、年上の男のパトロンが居る(笑)。その彼の家から学校に通い、明訓女子高校に入学。パトロンの彼の元からすでに数枚のCDを名前を伏せて出している様子。
彼女がいどっこ弁なのは、そのパトロンがいどっこ弁だからだとかどうとか……(大笑)。
→不知火
山田の野球を見て彼女にほれ込んだ1男子学生(笑)。
山田と一緒に野球をしたいと言う気持ちと、ライバルとして戦いたいという気持ちがない交ぜになって困っている。そしていつしか、「将来、結婚するなら山田のような女と……」とか思い始めるくらい、頭が山田一色になる可哀想な人(コラコラ)。
→雲竜
小さい頃に、「女に相撲で負けた」ことにショックを抱き、打倒山田を目指すかわいそうな少年パート2(笑)。ちなみに本人気づいてませんが、山田が初恋の相手らしい(大爆笑)。
スラッガー山田に打倒を燃やし、こんまい女は苦手なので、里中とサチ子が苦手。
さらには、立ち去り際、山田にプロポーズをかますという大それたことをして、里中から蹴りを貰うことになる(笑)。
→小林
山田の小学校時代からのライバルで友人。山田が神奈川に越してきた時から一緒に遊んだ幼馴染だったが、山田家両親がなくなるすこし前にアメリカに旅立ち、中学で再会を果たす。
小さい頃は山田が実は女だったということに気づいていなかったが、中学で気づきビックリして、山田の繊細なハート(大笑)を傷つける。
あくまでも「野球」を通して山田を求めるあまり、山田の本心に気づくことはないどころか、彼の好みのタイプは里中のような外見の美少女だった……(笑)。
ちなみに、「黙って座って笑ってれば、好みなのに」とは、小林が里中に常日頃から向けている感情らしい(笑)
→土井垣 将子
明訓女子高校野球部のキャプテンにして、明訓女子高校&近隣の女子から絶大な人気を誇る「お姉さま」(笑)。
背も高く、凛々しい面差しをしているため、校内での人気は常にナンバーワン。女子野球部に入っている面子も、実は「お姉さま」目当てだとかどうとか。
里中と二人並ぶと、「心の潤い」と近隣の男子高生から絶賛されるほどの百合ぶりらしい。
→夏川 夏子
鷹丘中学時代からの、岩鬼のよき理解者(?)にして、岩鬼のアコガレの女性。
実は浮気症で、男に岡惚れしやすい性格をしているが、お母さんみたいな性格を慕われて、女子からは頼れる姉御あつかいされている面も。
里中のような顔に生まれたかったと思う反面、自分とそう体格的にも変わりない山田が、格好いい他校の男にモテモテなのに、密かに嫉妬している(笑)。
不知火は、自分の高鳴る胸にソ、と手を押し当てながら、自問自答する。
──俺は、一体、どうなってるんだろう?
そう問いかけながらも、自分自身の事ながら、一体、「何」が「どう」なっているのか、さっぱり分かりはしなかった。
中学時代は、ただ、ぽっちゃりとした女子生徒が、男に混じって(だが良く見てみれば、平気で腹を出していたセカンドも、男顔負けの巨大のピッチャーも、女だった)、ガッツとファイト溢れるすばらしい野球センスを持っていると、目をつけていただけだった。
けれど、それでも所詮は女──、ともに野球をし、野球で競えるはずもないと、そう思っていたはずだった。
なのに、「明訓高校の徳川監督さま」だと名乗った酒飲みに連れられていった先──彼は、「不知火を勧誘」しに来ていたのだ──あの東郷中学と鷹丘中学との試合で。
怪我をしても尚、「大丈夫です」と笑うポッチャリした顔や、その後の怪我の様子が気になって、コッソリと彼女の自宅に訪れていった際、突然目の前からやってきた美少女に驚いて屋根の上に昇ってみて……その末に、「このサラシをありがとうございました。」とペコリをお辞儀する、ぽっちゃり体とか。
「………………俺は、最近……山田のことばかりを考えている気がする…………。」
小さく呟いて、彼は、このたとえようもない気持ちを、持て余していた。
この思いが何なのか──そう思うたび、
「──俺はここまで、打倒・山田に燃えていると言うのか……っ!」
彼は、すっかりその気持ちを違う方面にカンチガイして認識していた。
そんな風に、悩める青少年になった不知火を遠目に見ながら、
「不知火、またうちに来てるけど、練習はいいのかな?」
山田は、チラリと自分の隣に居る美少女を見下ろした。
自分が高校に入る前は、不知火は良く彼女一緒にいた──もしかして、不知火は、里中のことが好きなんじゃ……。
そう山田が思っているとも気づかず、里中は鈍い彼女と違って、ピンと来た女の勘に従い、キッ、と山田を睨み挙げると、
「山田っ!」
がしっ! と、彼女の大きな手を握り締めて、
「お前の貞操は、俺が守って見せるからなっ!」
「って……え、さ、里中……?」
なんでそうなるんだと、頭にはてなマークを飛ばす山田を見上げた後、里中はさらに視線を転じて、明訓女子高校野球部のグラウンドに鈴なりになっている「見学者」の男どもをギロリと睨みつけると、
「お前等っ、山田と付き合いたかったら、甲子園で優勝してみろっ!!」
「……里中ーっ!!」
焦る山田の隣で、小さな胸を突き出して、腰に手をあて──、愛らしい眼差しで彼らを順番に睨みつける。
そんな彼女と視線があった男が、片っ端から赤くなって視線をそらす光景から、かれらの目当てがふくよかな捕手ではなく、小柄で愛らしい美少女のピッチャーであることは、丸分かりだろうに──。
「ふん、自信がないヤツラばっかりだな。」
里中は、視線をそらされたのは、そういう理由だと、信じていた。
──けれど。
その里中の視線を、真っ向から受ける男がいた。
「…………しらぬい…………。」
小さく呟いて、里中はそんな彼を、目に力を入れて睨み返す。
里中はもちろん、「お前みたいな男に、山田はくれてやるもんか」と思っていた。
しかし不知火は、「打倒やまだ。甲子園は俺が……っ」と思っていた。
この視線でのカンチガイは、決して縮まることはないのである。