シャワールーム

エロ注意報。ヤマなしオチなしイミなし絶好調。
いや、いっそ、18禁。












 夕方近くの今日の練習が終る時間帯になれば、汗を流そうとした選手達でにぎわうシャワールームも、まだ昼過ぎになって間もない時間ともなれば、ガラリと空いている。
 遅くまで練習する山田がシャワーを使うために訪れる時は、いつも軽く汗を流した選手達で賑わい、湿気に満ちている脱衣所も、早い時間に来るとカラリと乾いていて、普段は気にならない換気扇の音が嫌に耳に付いた。
 床の板も、脱衣所とシャワールームをつなぐ曇りガラスの開き戸の前に置かれた、水切りマットも、カラリと乾いている。
 いつものように腰にタオルを一枚巻いて、開き戸を開けると、普段は白い湯気がモウモウと湧きあがっている所だが、今日ばかりはカランとしていて、視界も良好だ。
 気をつけてタイルの床に踏み出さないと、濡れた床に足を滑らせるところだが、今日はそんなことはなかった。
「誰も居ないな。」
 呟いて、山田は右と左に連なる個室のシャワールームを見やる。
 湿気が篭らないように、水捌けが良いように、個室を仕切っている壁は左右ともに下と上の部分がす通しになっている。
 その個室に入る扉部分は、体がすっぽりと覆い隠されるような構造になっていて、顔と足が外からでも見える。
 そのどの扉にも、誰かの顔は見当たらない。
 いつもなら、開いてるシャワーを探すだけで一苦労なのだが。
 その「シャワールーム争奪戦」は、山田家に風呂ができる前に、近所の銭湯で「数少ないシャワー」を獲得しようと虎視眈々と狙うオヤジさんたちみたいだと、プロ生活の最初の頃に思っていたのが、懐かしく感じる。
「そりゃ、まだ昼休み中だしな。みんな、食堂でゆっくりしてるぜ、きっと。」
 後ろから快活な声が響いて聞こえてきて、山田が振り返ると、同じように腰にタオルを巻いただけの里中が、シャワールームの中に入ってくるところだった。
「そうだな──普通、こんな時間に入って来ないからな。」
「俺も、こんな時間にシャワーを使うのは初めてだ。」
 踏み出した足が、ヒヤリとしたタイルに当たって、どこか心地良く感じる。
 いつもなら、湯気だの排水溝に流れるお湯だので、温められているため、冷たいというどころではないからだ。
 ヒタヒタと床を歩きながら、適当な個室のドアを開く。
 先に使った人で濡れていない床やシャワーヘッドが、ひどく新鮮に感じた。
「他に誰も居ないのって、なんだか、使うのが悪い気がするな。」
 小さく笑って、ひどく寂しい気のするシャワールームをグルリと見回す山田が入った個室の隣から、シャー、とお湯が噴出す音が聞こえる。
「そうか? 気兼ねなく浴びれるじゃないか。」
 いつもなら、待っている人間が居るからそ、そそくさと浴びるだけだけど、今日は体の芯まで温まるまで浴びていられる。
 そう言いながら、里中はタオルをヒラリと扉に掛けて、シャワーヘッドを掴むと、白い湯気の立つお湯を足に当てて温度を確かめると、ゆっくりと体に当てた。
 疲れて凝り固まった気のする筋肉に暖かな湯を当てると、ほぅ、と知らず安堵の吐息が漏れる。
「確かに、ゆっくり浴びられるのは浴びられるけどな……どうせなら、湯船に浸かりたい所だな。」
 山田もタオルを扉に掛けると、その手でシャワーのコックをひねり、お湯を出す。
 シャワーは手軽に汗を流せていいかもしれないが、体から疲れが染み出すような優しい暖かさは無い。
 夏場はいいが、冬はすぐに湯冷めするしな、と溜息を零す山田の声が、シャワーに掻き消されて聞こえなくて、里中はキュ、とシャワーを止めると、
「何か言ったか、山田?」
 ヒョイ、と扉から顔を覗かせるようにして、隣のシャワーブースを覗き込む。
 狭いシャワーの左右に、かすかな隙間を残して、ビッシリと詰まっている山田の背中を見て、里中は軽く目を瞬く。
 そう言えば、こうしてマジマジと山田の裸の後ろ姿なんて見るのは、久しぶりだ。
 思わずマジマジと、ガッシリとした体つきの山田の背中を見つめていると、彼の肩甲骨の少し脇よりの辺りに、見慣れない赤い糸のような線を見つけて、思わず里中は首を竦めるようにして視線を反らした。
「ん、いや、シャワーだけで済ませると、どうも体に疲れが残っているような気がするな、って思っただけだよ。」
 言いながら、山田はシャワーヘッドを壁に備え付けて、お湯を止めると、シャワーの隣に設置されているシャンプーに手を翳した。
 そのまま、プッシュスイッチを押すが──、カコン、と手ごたえのない感触が帰ってきた。
「……ん、アレ?」
 おかしいな、と、プッシュ口の下に左手を差し伸べながら、右手でさらにプッシュスイッチを強く押す。
 けれど、シャンプーの入れ物からは、何も出てこなかった。
 白いプラスチックの容器の蓋を開けて、中を覗き込むと、本来なら透明な濃厚な液体が入っているはずなのだが、今日は空っぽだった。
「おかしいな──掃除の人が入れてくれてるはずなんだが……。」
「どうかしたのか、山田?」
 掃除の人のチェック忘れだろうかと、シャンプー容器の蓋を戻す山田に、里中が首を傾げる。
 自分のブースの扉に腕をかけて、覗き込んでくる里中を肩越しに振り返りながら、山田はシャンプーを指で示しながら、
「シャンプーが空っぽなんだ。」
「……もしかして補充されてないのか?」
 山田の示す先と同じ場所にある、自分のブース内のシャンプーの容器を振り返って、里中は山田と同じように手の平をプッシュ口の下に手をあて、スイッチを押した。
 とろり、とした透明な液体が太い糸状になって手の平の上に落ちてくる。
 それを手の平で擦ると、すぐに白い泡が立った。
「俺の方には入ってるぞ。山田、こっちのを持ってくか?」
「……そうだな、そうするよ。」
 隣に向かって声を張り上げる里中に、山田は一瞬何か考えるような間を置いたが、里中の言葉に甘えることにした。
「悪いな、里中。」
 ひょい、と里中のシャワーブースを覗いた先──扉越しに見える、くっきりとした肩甲骨と、すらりと続くしなやかな背筋。
 彼は、手の泡を洗い流そうと、シャワーのコックをひねって、お湯を流し始めたところだった。
 その薄い筋肉が乗った背に、微かに残る薄紫色の跡。
 それが何だったのか、思い出す必要もない。
 お湯に濡れて体温で温められたのか、白い肌にくっきりと色づくソレを認めた途端、ずくん、と鼓動が強く鳴るのを覚えた。
 シャワーで手の泡を洗い流した里中は、一向にブースに入ってくる気配のない山田に首を傾げるようにして後ろを振り返ると、扉の向こうに立っている彼に気づいて、あぁ、と目を丸く見開いた。
「すまん、俺が邪魔だったな。……ほら。」
 入って来いよ、と、ドアパネルを外に開いて促すと、山田は、
「あ、あぁ、それじゃ……邪魔するぞ。」
 なぜか慌てたように踏み込んでくる。
 どこか動揺している様子の山田に首を傾げる里中の隣をすり抜けるつもりで、手を伸ばしてシャンプーに手をかけようとするのだが、狭いシャワー室内で、大の大人の男だ二人入って、すり抜けられるはずはなかった。特に片方の体型が体型である。
 手を伸ばしてシャワーの横のシャンプーに手を届かせようとすると、否応無く体が密着した。
 シャワーを一度体に浴びた後の里中の、健康的に日に焼けた腕の部分と対照的に映える、アンダーシャツ型に焼けた内側の白い肌──滴る雫が、どこか淫靡に見えるのは、ただの目の錯覚に違いないのだろうが……。
 さきほど里中が泡を立てたシャンプーの臭いが、狭いブース内に立ち込めている。
 その香の先を見るように視線を落とせば、お湯の温もりでかすかに火照った里中の頬が、あどけない表情で山田を見上げていた。
 その腕や体が、ごく普通に接触しているのを感じるのが、なおさら自然に受け流せない。
 気まずい気分で視線を逸らす山田の顔を見上げていた里中は、どうかしたのかと彼の顔を覗き込もうとサラに密着して──そこでようやく、変化に気づいた。
 思わず視線を落としそうになる里中の肩を、山田が軽く引き寄せる。
 その動作のおかげで、顔を落とすことはできなかったが、代わりに足の付け根の辺りに当たる重量感に、里中は恥らうように首を竦めた。
「──…………や…………山田………………。」
「──……す、すまん。」
 ジ、と目の前に見える山田の首筋を見つめながら、里中は居心地悪げに視線を反らした。
「すまんって……、お前──。」
 どうしよう──……と、お互いに思いながら、そのまま身じろぎもできずに、ただ立ち尽くす。
 その耳に、手を洗い流すために出しっぱなしにしていたシャワーの水音が、響く。
 ザァァァ……と打ち付ける暖かな湯が、里中の左腕を濡らし、山田の右肩でお湯がはじいている。
 濡れた床に叩きつけられたお湯は、そのまま白い湯気を立てて排水溝に流れていく。
「──……悪い、今、シャワー、止めるな。」
 腕に触れるお湯よりも、山田の体温の方が心地良くて、そのまましがみつきそうになるのを堪えて、ぎこちなく体をずらしながら、里中は腕を伸ばして、シャワーのコックをひねろうとした。
 けれど、その手がコックに触れるよりも早く、キュ、と、山田がシャワーを止める。
「サンキュ。」
 小さく笑って──、一瞬、どうしようかとチラリと考えたけれど、そのまま顔を上げれば、すぐ目と鼻の先に、山田の顔があった。
 多分、分かりきっていたことなのだと、思う。
「さとなか……。」
 肩を抱く手に力が篭った。
 名を呼ぶ声に、熱が入っていた。
「うん、山田──。」
 同じように、熱に浮かされたように返して、里中はシャワーに伸ばそうとしていた手で、彼の腕を掴んだ。
 キュ、と力を込めると、それがまるで催促の合図のように、山田の顔がゆっくりと傾いてくる。
 一瞬、ここがドコだったか思い出すように何かが脳裏を掠めたが、それもほんの一瞬だけ。
 すぐに合わさった唇をさらに求めるように、彼の肩に置いた手を、するりと首に回した。
 角度を変えて唇が重ねられ、緩く反る背中に手を添えられる。
 片手で腰を引き寄せられると、すでに興奮した状態で、微かに強張りを持っている山田の物が下腹部に当たった。
「──……っ、ん……。」
 その拍子に、唇が震えた。
 わなないた唇の隙間から、スルリと舌が滑り込んできて、それを待ちかまえていたかのように舌を絡める。
 重ねた唇を、甘く噛むようにして軽く歯を立てて、さらに深く唇を重ねた。
 歯列をなぞるようにして上顎を舌先でなで上げ、再び舌を絡めあう。
 触れ合った舌がそのまま溶けてしまいそうな気持ちの良さに、ゾクゾクと背筋が震えた。
 一度舌を離して、小さく甘えるような吐息を零すと、里中は名残惜しげに彼の唇に触れるだけのキスをする。
 ほんの少しの隙間を残して、すぐ目の前に見える山田の目を見つめて、里中は唇をほころばせて微笑む。
「……山田。」
 小さく呼びかけると、それに答えるように再び吐息ごと口を塞がれた。
 体を摺り寄せるようにして深い口付けを交わすと、微かに赤く火照った里中の頬が、目に見えて分かるほど赤く色づく。
 下腹部にこすり付けられるように当たる、確実に堅さを増した物の感触を感じながら、腰に血が集まるのを覚えた。
 そのまま何度か角度を変えて口付け合ながら、肌と肌を合わせ、しっかりと抱き合う。
 山田の大きな手の平が、里中の背中をゆっくりとなで上げる。
 なだめるようにではなく、滑らかな肌を丁寧にじっくりと──快楽を引き出すように。
 ピクリ、と里中の肩が跳ねるたびに、その熱い吐息をすべて飲み込もうとするように、山田がさらに深く唇を重ねてくる。
 それに答えながら、里中は彼の足に熱が滾り初めた己の物を摺り寄せる。
 膝がガクリと折れ、ニ、三歩足がよろめき、背中に壁が当たった。
 壁に体重を掛けるようにすると、山田が上に圧し掛かるようにして膝の間を足で割られる。
 ぐい、と立ち上がりかけていた物に、山田の足が押し付けられた。
「──……ん。」
 触れられていなかった場所が、しっかりとした筋肉のついた腿に押し上げられるようにして刺激を与えられて、ずきんと腰が痛むような熱が走る。
 微かに眉を寄せて、喉で啼いた声を堪えると、米神に口付けが落とされ、そのまま唇が頬にすべり、唇の端を掠めるようにして首筋に落ちていく。
 チュク、と、吸い上げられる手前の口付けを喉元に一度。昔と違って、今はどれくらいならキスマークが付かないか、山田は良く知っている。
 そして、どこに口付けを残せば、里中の背がしなるのか、も。
 まるでその跡を鮮明に残していくように、口付けは順番に一つ一つ落ちていく。
「ちょ……──、や、まだ……っ。」
 胸の飾りの周りで、幾度か肌に噛み付くようなキスをすれば、痛みからか、じれったさからか、目の端に涙を浮かべて、里中が抗議の声をあげる。
 肩に掛けられた手が、微かに震えていた。
 ペロリと舌先で桃色に色づいた胸の突起の端に触れれば、足先から脳天まで電撃のようなショックが走る。
「──……ふ……ぅぁ……っ。」
 顎をそらせて、キュ、と唇を噛み締めた里中は、その強烈なまでの快感をやり過ごし、そのまま体を俯けるようにして山田の頭を抱え込む。
 ゆっくりと山田の頭が下に落ちていく──否、彼が床にひざまずいたのだと気づくのに、一瞬の間があった。
 口付けで火照った唇をわななかせて、里中は小さく山田の名を呼ぶ。
「──や、まだ……たのむ……これ以上は……。」
 懇願するように呟いた声はけれど、けれどそのかすれて熱を持ち、誘っているような色を宿していた。
 ちゅ、と音を立ててわき腹に口付けられて、ピクリ、と体が揺れる。
 止めてくれ、と言いかけた言葉は、体に走った熱によって、つむがれることはない。
「里中──。」
「──ん……。」
 肌をなで上げる手が、淫猥な色を持って、確実に里中のポイントと突付く。
 指先で柔らかに撫でられ、微かに揉まれ──そのたびに意識が散らされ、山田が触れる場所に熱を感じた。
 背中に当たる壁が冷たいと思うのに、体の中が熱い。
 まだ触られてもいないのに、腰がうずくような痛みを張り詰め始めている。
「……な……本気で──……するの?」
 だって、ココ……シャワー室だぞ?
 熱を持った瞳で見下ろされて、山田は手を止めることはなく、目の前のへそをペロリと舐める。
 ぞくぞく、と走る快感に、がくん、と里中の膝が折れた。
 壁にもたれることでは支えられなかった体が、あっさりと山田の手の中に落ちてくる。
 山田はしなやかな筋肉のついたその体を受け止め、目の前でホンノリと赤く火照った白く細い喉元を、軽く甘噛みする。
「──……ん……。」
 小さく喉を鳴らして、里中は緩く首を傾けるようにして山田の肩元に顔を埋めた。
 さらけ出される項に指先を這わせて、ツ、と濡れた肌の上を滑るように撫でれば、ピクリ、と里中の背中が震えた。
「大丈夫だ──……。こんな時間から、誰も来ないよ。」
「──……って…………、だからって……。」
 力なく──それでも必死に床に膝を立てるようにして、山田の肩に手を置いて上半身を立て続ける里中の、ほんのりと火照った頬を見上げながら、山田は穏やかに微笑む。
 里中を少しでも安心させるように、山田は彼の頬を両手で包み込んだ。
「な、里中? ……お前だって、このままじゃ……辛いだろう?」
 グイ、と──山田の足を挟みこむようにして開いた脚の間に、山田は自分の膝を押し付ける。
 深いキスで起ちあがりかけていたものに、直接的な刺激を与えられて、里中はそのままガクリと山田の体に体重を乗せるようにして、クタリ、と上半身を落とす。
 山田は倒れてくる里中を受け止めながら、彼の背中にするりと手を回した。
「や──……まだぁ……。」
 かすれた、甘えるような響きを宿した震える声に、ゾクリと背筋が快感に揺れた。
 耳元で、頬を摺り寄せるようにしてささやかれた声は、ダイレクトに山田の脳裏に突き抜ける。
 ぴったりと密接した里中と自分の胸が、ドクドクと早い鼓動の音をかき鳴らしている。
 その音がどちらのものなのか──……そして、肌を滑る水滴が、シャワーから零れ落ちたお湯か、自分たちの体から滲んだ汗なのかも分からないまま、促すように里中の顔を起こして──ふっくらと紅色に染まる彼の唇に、誘われるように口付ける。
 柔らかな唇の感触を楽しむように、何度かついばむように角度を変えて口付けて、下唇を食むように軽く吸い上げた。
 そうしながら、力なく凭れ掛かってくる里中の体に愛撫を施す。
 ゆっくりと──マッサージをするように、じっくりち、彼の体から快楽を引きずり出していく。
「──……や、……ま、……。」
 体を山田に摺り寄せれば、十分な堅さを持ち始めていた物が山田の腹で擦れて、しびれるような──痛いほどの快感がつま先に走った。
 山田の腕に添える程度に置いていた手に、キュ、と力を込めて、彼の背中に腕を回した。
 そのまま、顔を傾けるようにして山田の口を自らの口でふさぐ。
 とろけるような快楽を求めるように、彼の口腔内に舌を入れて、絡めあう。
 水で濡れた肌の上を、山田の手の平が滑っていく。
 滑らかな動きを見せる指先が、確実に体の奥に火を灯していくのを感じながら、里中は悔しげに眉を寄せると、山田の頭を強く引き寄せて、彼の舌を激しく絡め取る。
 その行為に熱中するように、山田の膝の上に落ちていた腰を起こす。
「ん──……、里中……もう少し……。」
「──ンン。」
 目を閉じて必死に舌先に意識を集中させている里中の整った顔を見ながら、山田は里中の背中から下へ向けて手の平を落としていく。
 少し浮いた彼の尻を引き寄せるように手を当てると、ピクン、と里中の肩が揺れた。
 指先を形良い双丘の合間に当てると、震える唇と舌の動きが止まった。
「──……は、ぁ。」
「……いいか?」
 唇が離れて、トロリと唾液が糸を引く。
 あがった吐息が揺れて、里中はトロンと潤んだ瞳で山田の顔を見下ろした。
 白い頬に染まった赤い色。
 濡れた唇が、誘うようにうっすらと開かれている。
 その唇にもう一度口付けたい欲求を堪えながら、山田は指先でクルリと円を描いた。
「──……ん。」
 切なげに眉を寄せて、里中は欲望の色に染まった山田の目を見つめる。
 そのまま、一瞬チラリと辺りを見回したが、お互いの体の間で、互いの物はその存在感を訴えている。
 腰に集まる熱は、ただ熱くて──このまま素直に、シャワー室を出れるわけはなかった。
 だから里中は、目じりを赤く染めて、山田をジロリと睨み上げると、
「責任取れよ……っ。」
 低くそう唸るように告げると、里中は首を傾けると、山田の首筋に向かって、軽く噛み付いた。
「──……つっ。」
 一瞬、痛みに顔を顰めた山田に、意趣返しに成功したように里中は小さく笑った後、その噛み跡に舌を這わせる。
 山田はそんな里中に苦い色を見せたが、すぐにそれを微笑の中に消して、里中の形良い尻を撫でていた手を、手前に引き寄せて指先に自分の唾液を絡めた。
 それが何に使われるのか悟って、里中は羞恥に頬を染めると──一瞬首を竦めたが、すぐに気を取り直したように、山田が舌を絡める彼の指先へ、同じように口を寄せた。
 ぴちゃ……、と、小さな音が何度か立ち、触れ合った舌を舐めあい、そのまま唇を合わせる。
 角度を変えながら、お互いの口腔内をむさぼりあいつつ、里中は手を山田の物に添え、そ、とそれを握りこむ。
 2人分の唾液を絡めた指先は、里中の蕾にあてがわれ──ゆっくりと解し始めるように、指先が入り口をなぞる。
「……時間がないから、急ぐぞ?」
「ん……分かってる。」
 お互いの口を離して、そう囁けば、里中は素直にコクリと頷いた。
 まるでそれを合図にするかのように、山田は早急に──けれどそれでも、できる限りゆっくりとした動きで、里中の中へと指先をもぐりこませる。
「痛くないか?」
「ん──……、平気。」
 荒くなる息を必死で整わせるように、ゴクリと喉を上下させて、山田の問いかけに頷く。
「だから……──な……?」
 ねだるように、山田の首筋を甘噛みしながら、里中は中に埋め込んだ指を、さそうように締め付ける。
 その感触に、ゴクリと山田の喉が上下させたのが分かった。
 荒くあがる息を必死に整わせると、山田がそのタイミングを見計らって、指の本数を増やしていく。
 時間がないと分かっているけれど──場所が場所だから、人が来るかもしれないと、そう分かっている。
 急ぐとそう言っておきながら、山田は里中が傷つかないように、ゆっくり──ゆっくりと指で中を解していく。
 時折爪先が、内をカリと引っかくのに、ビクンと背筋にショックのような快楽が駆け上がる。
 そのたびに、脚や唇が震えるのを止められなくて、唇からは甘い吐息が零れていく。
「──……や、ま、だ……。」
 シャワーブースに響く水音──粘液質のその音に、体が震えるのが止まらない。
 早く、と、ねだるように山田に口付けると、山田は微かに目を見張って……それから、ゆっくりと、中から指が引き抜かれた。
 ズルリ、と抜け出す感触に、ゾクゾクと背筋が震え、甘い声が知らず漏れた。
 腰が持ち上げられて、体がしっかりと密着するように引き寄せられる。
 顎を山田の肩に乗せると、山田が里中の腰を軽く引き上げる。
 間をおかず、屹立した山田自身が里中の綻んだ蕾に当てられた。
「──……ん。」
 その感触に、小さく眉を寄せる里中の息が、山田の肩先を掠める。
「力、抜けよ。」
「わかってる。」
 少し舌足らずに答える声に、山田は笑みを誘われながら──けれどすぐにソレを消して、里中の体を、ゆっくりと沈めていく。
 静かに──……けれど確実に侵食されてくる重みに、里中は山田の腕に添えた手に力を込めて、首と背を緩く反らした。
「……あっ……つ、い…………。」
 いつもと違って、動きが急すぎたのか、里中の額に汗が滲んでいる。
 それでも必死で力が入らないように、里中は息を整えた。
「大丈夫か、里中?」
 微かに里中の脚が震えていた。
 それを気にして、山田は眉を寄せながら──、そこで一度動きを止める。
 覗きこんだ里中の顔は、どこかうっとりとした色を含んでいて、それが異様なまでの色香を発している。
「ん……へ、き──……。でも……なんだか、のぼせちゃいそうだ。」
 微かな笑みを馳せる里中の唇に、そ、と触れるだけのキスをすれば、彼は小さく笑って──フ、と、全身の力を抜いた。
「──……んっ。」
「あぅ……っ。」
 お互いに思わず零れたうめき声。
 穿った者も、穿たれた者も、衝撃に一瞬息を詰めた。
 特に自分でやっておきながら、ダメージのひどかった里中は、そのままガクンと上半身を折って、山田の体に上体を預ける。
「……里中……。」
 あまり無茶をするなと、脂汗がにじみ出た里中の額に口付けを落として、山田は汗で濡れた彼の髪をサラリと指先で掻き分ける。
 その心地良い感触に里中はうっすらと目を開くと、
「──急ぐんだろ?」
 少し甘えるように微笑み、里中は少し背伸びをするように山田の唇の脇に口付けた。
 甘い色を含んだ声に、山田は里中の脚を持ち上げるように手を当てると、チュ、と里中の米神に音を立てて口付けると、
「……うごくぞ。」
「──ん。」
 膝の上まで落ちた里中の体を、ゆっくりと、持ち上げ始める。
 そしてそのまま、ギリギリまで抜き……その手を離す。
「──……ぅあっ。」
 ビクン、と脚が揺れ、背中が反りあがった。
 思わず山田の腕から離れた里中の手首を引き寄せ、山田はそのまま彼の体を抱き寄せて、欲望のままに彼の体を貪り始める。
「ふ──……んっ、ぁ……すご……っ、ダメ……、山田──、そんな激しく……んんっ。」
 絶えず零れる声に、だんだんと頭の中が真っ白になっていった。
 できる限り声を抑えようと思っていた思いも、何もかも。
「──……ん──はっ。」
 ただ、動きに翻弄されるように、消えていくだけ。
 目を閉じれば、視界の裏で光が激しく明滅しているように感じた。
 痛いほどの快楽に、里中はただ必死に山田の背中に手を回し──その体にしがみつくように、ギュ、と抱きしめた。













 ──ザァァ……、と、シャワーのお湯が、床を打ち付けている。
 その流れに、白く濁ったものが流されていくのをぼんやりと見ながら、里中は体についた汚れを流し落としていた。
 とは言っても、汚れを落としていたのは、里中ではなく、山田だったが。
 丁寧に洗い流されながら、里中は湯気の立つシャワールームの中を、グルリと見回した。
「山田〜。」
「ん?」
 コトン、と山田の肩に後頭部を当てて、里中は彼の名を呼ぶと、首を逸らして後ろを振り返るようにして彼の顔を認めて、
「──……続きは、帰ってから、な?」
 微かに目元を赤く綻ばせて──、はんなりと、笑った。
 山田は、そんな里中を見下ろして、驚いたように目を見張ったが、すぐに破顔して首を傾けると……、チュ、と戯れのように額に口付けを一つ落とした。
「あぁ──そうだな。」
 幸せそうに──微笑みながら。















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スミマセン、調子に乗りすぎました……っ。

…………でもまぁ、書きたかったから、いいや………………。
しかも、書きたかったわりには途中でエッチ描写に飽きてきたし──……。
ここ辺りから飽きてるんだろうな〜、と言うのは見て分かると思います。
本格的に書くと、それだけで延々と終りますよね〜──いいの、書きたかったシーンは全部書いたから。

書き終えて気づいたんですが──。


…………これって、わざわざシャワールームにしたイミって…………ないよね……………………?