暦の上では春だというのに、吹きつける風は冷たい。
 昔からの癖で一枚余分に着ているおかげで、突然の冷たい風にも寒さを覚えることなく、彼はただ、涼しげに目を細めて、その風を正面から受け入れた。
 頭上で輝く太陽は、ようやくその日差しを強くし始めた頃で、まだ昼までには十分時間がある。
 ゆっくりと散歩をしながら歩いても、仕事の時間には間に合いそうだった。
 仕事を始めた当初は、何が必要で何が不必要なのか……何一つとして分からないことばかりだったから、ひたすら右往左往して、一日が終わればぐったりと倒れこむ日々だった。
 半年ほど前までしていたゴルフ場のキャディの仕事も、覚えるまでが大変だったが、今ほど全身が疲れを覚えることはなかった。
 真夏の甲子園を投げぬいた分だけ体力があると自負していたが、働いて使う「体力」には、対人関係の精神的な苦痛と、見知らぬ場所だという不安なども混ざって、それとはまったく違う質の「疲れ」をためていくばかりだった。
 けれどそれも、毎日を必死ですごしていけば、消化されてしまう。
 年末年始の忙しさを乗り切って、気づけば自分の誕生日が過ぎて──あぁ、と気づいたときには、梅の花の時期も終わり、あと一月もすれば桜が咲き始める季節になっていた。
 そう……春、だ。
「今年は、明訓は春の選抜に選らばれてなかったんだったっけ……。」
 春といえば、ソレだと、二年の高校生活の間に刷り込まれた季節感が、当たり前のように口をついて出た。
 秋季大会で明訓が敗れたときのことは、今でもありありと思い出せる。
 白い病室、白いカーテン、どこか暗い雰囲気の室内。
 白いベッドに横になった母と共に、テレビを見ていた。
──まだ、母が、生きていたときの話だ。
 そう思った瞬間、ちくん、と、未だ癒えきらぬ傷が痛みを訴える。
 胸の辺りに手を当てて、彼は小さく笑みをきざんだ。
 どこか自嘲の色が見える、せつなさを含む笑みだ。
「……時間が経つのは、早いな……。」
 あまりにめまぐるしく過ぎすぎて、生きていくのに必死で、気づけばもう、春だ。
 気づけばもう──母が亡くなってから、どれくらいの月日が経ったことだろう? 野球から離れて、どれほどの月日がめぐったのだろう?
 なにもかもが麻痺していて、里中は自分に現実を思い出させようとするかのように、こつん、と拳で米神をたたいた。
「春、と、言えば……。」
 ドラフトで選ばれた「友人」たちは、春のキャンプに参加している頃かな、と──去年までなら、当たり前のように目の前にあった「野球」の情報からも遠く隔たれている自分の現実に、なんだか胸が苦しく締め付けられるような感覚を覚えた。
 はぁ、と、一つ息をこぼして、里中は疲れたような自分に叱咤するようにブルリと頭を振る。
 そのまま視線を上げて──いつもと違う光景に、違和感を覚える。
 通勤路にある学校の校門が、すぐ目の前に迫ってきていた。
 いつもは何も考えずに通り過ぎるところだが、今日は違った。
 近づくほどに、違和感は強くなる。
 校門を囲うように、巨大なアーチがかけられていた。
 何かイベントでもあるのだろうかと、何気なく視線をソコへ当てて……あ、と、気づいた。

 今日は、卒業式なのだ、と。

 校門近くまで歩いていくと、校名が描かれた校門の隣に、第56回卒業式と書かれた看板が立てかけられていた。
 一瞥した校門の中は、ガランとしていて静かで──講堂で卒業式が行われている最中なのは間違いがない。
 思わず、校門の前で足が止まった。
 左右の校門の上に掲げられたアーチを、顎をそらして見上げると、在校生たちの手作りであろうティッシュで作ったような花が、アーチの縁を彩っていた。
 それがソヨソヨと風に吹かれるのを認めた瞬間……ふ、と胸を掠める懐古。
 去年……おれもまた、薄い色紙を重ねて、同じようにティッシュの花を作っていた。
──ホームルームで、卒業式を飾るためのティッシュやレイ作りをさせられて、一人のノルマが決められたのだ。
 山田や岩鬼と机をくっつけて、なんだかんだと言い合いながら作ったティッシュの花。
 器用に綺麗に作る山田と、何枚もティッシュを破り捨てた岩鬼。そんな岩鬼にだけは負けたくないと、山田のを手本にしながら、まぁまぁな出来で作れた花が数個。
 最後には、「こんなもんは女がやることじゃい!」と叫んだ岩鬼に、山田が苦笑しながら彼の分まで作っていて……。
「……結構大変だったんだよな。」
 目を眇めて、そよそよと揺れるティッシュの花を見上げる。
 一度あの時代を思い出せば、次々に思い出は沸いて出てくる。
 去年の今頃──あの高校の講堂の中で、自分達に背を向ける三年生の姿を見ていた。
 名前が呼ばれて、立ち上がる彼らの姿を認めて、胸がジンとなったのを覚えている。
 野球部の在校生代表として、山田たちと一緒に花束を抱えてそれを手渡したときの優しいような、くすぐったいような──寂しいような。
 門出を祝うとは言うけれど、もう同じ校内で顔をあわせることはなくなるんだな、と呟くと……その一年前の土井垣は、卒業後も監督として顔をあわせていたから、「別れ」の概念に乏しかったからこそ余計に、なんだか重くのしかかった。
 春の選抜こそは、優勝だぞ。
 そう笑って言いながら、彼らは校門をくぐって行った。
 頭上にそびえるアーチが、手が届かないほど遠くに思えた。
 来年、自分達もああして、同じようにアーチをくぐるのだろうか?
 そう思っていた昨年が、今は──酷く遠い。

──それから二ヶ月もたたないうちに、おれは……中退した。

 明訓高校に残った同級生達は、今日、遠く離れた神奈川の地で、あの場所で、卒業の時を迎えているのだろう。
「……花吹雪、本当に散らしたのかな?」
 里中は目を細めて、見知らぬ高校のアーチを見上げた。
 去年、ばらばらに散らしたティッシュの塵の山の中で、偽者の花は自分には似合わないと豪語した岩鬼──彼は、花は桜木、卒業式には桜が似合うと、そう叫んでいた。自分の卒業式のときは、桜吹雪こそが似合うのだ、と。
 その直後に、殿馬から、「3月に桜が咲くづらか」と突っ込まれていたけれども。
「──このあたりの寒桜は、3月に咲くなぁ……。」
 ──もっともその桜は、高校にはなかったが。
 でも、岩鬼なら、卒業式のために、山に入ったりして探してきて抱えてきそうだ。
 そんなことを想像して、クスリ、と里中は笑みをこぼす。
 けれど、その笑みもすぐにどこか切なさを含んだ、淡い笑みに変わる。
 目の前にあるのは、2年間通いなれた高校の校門ではない。
 目の前にあるアーチは、自分がくぐるために用意されたものではない──否、自分がくぐれる卒業式のアーチなど、どこを探してもないのだ。
 おれが、その道を、選んだから。
「……──。」
 もし、なんて未来は、どこにもありえない。
 自分が選んだ道に、悔いはない。
 けれど──ふと後ろを振り返って、自分の思い出をかみ締めた後、視線を前に戻すのが、怖いと思うときがある。
 今、こうして立つ自分の隣には、誰も居ないということを、認めるのが──怖いと、そう思うときがある。
 隣に立つ人が、誰も居ない。
 岩鬼も山田も殿馬も微笑も──母さんも、誰も、居ない。
「────────………………。」
 きゅ、と、里中は拳を握り締めて、無言で卒業式のアーチを睨みつける。
 選んだのは、おれ。
 その選択に、後悔などするはずがない。
 でも……ふ、と、思うのだ。
「…………会いたい……、な。」
 握り締めた手のひらが、懐かしい感触をこの手に掴みたいと、訴えている。
 あの、胸の奥から沸き立つような興奮と喜びを、もう一度感じたいと。
 今、彼らは新しい旅立ちを前に、どのような気持ちで居るのだろう?
 どうしておれは、彼らとその感覚を共有することが出来ないのだろう?
「………………野球…………やりたいなぁ………………。」
 ぎゅ、と。
 ひときわ強く手を握り締め、里中は上げた顎を引き、ジ、と地面を睨みすえた。
 そして──小さく息を吸い込むと、そのまま息を吐かずに、唇を真一文字に結んで、視線を上げる。
 見知らぬ高校の校舎と、そこから巣立っていく生徒を送り出すためのアーチを見上げて。
 里中は、その向こうに透けて見える懐かしい高校へ向けて、一言──吐き出した。

「卒業、おめでとう。」

 決して、自分には向けられることのない──言葉を。


















「しっかし、正直な話、こんな卒業式とかに出てる場合じゃなかったりするんだけどな。」
 疲れた、と、コキコキと肩を鳴らす微笑が、どこか疲れたような顔で吐く。
 先月の頭から行われていた「春季キャンプ」で、プロと高校野球の違いを思い知らされていた微笑は、この1日がまずいのだと、そう顔を引き締めるばかりだ。
 2時間弱の卒業式が終わり、講堂を順番に退室した卒業生たちは、そのまま教室に戻らなくてはならない──はずであった。
 本日の段取りとしては、高校の最後の朝のホームルームを終えた後、卒業式をして、退室した後すぐに教室に戻り、最後のホームルームが開始されるのを待つ。
 そして時間を待って、全員が好きなように校門まで続く在校生たちで作られた花道を通って、校門の外へ送り出される。
 ……ちなみに校門の外へ出た後は、本当なら「校舎に戻ってきてはいけない」となっているが、後輩とのアレやコレがあるため、たいていの卒業生はすべての3年生がアーチを潜り抜けた後、校舎へと戻るのが通例となっていた。
 その卒業式が終わり、教室に戻っていなくてはいけない時間……野球部3年生の「明訓四天王」は、体育館と校舎を結ぶ通路の少し外れた場所に集まっていた。
 4人が4人とも、2月の自由登校から、自分たちが所属するプロ野球球団の春季キャンプに出ており、二日ほど前にオープン戦が始まったばかりの身であった。
 そのまま卒業式にやってきたため、まともにキャンプのことについて話すのは、これがはじめてであった──同時に、これが最後になるだろうことは、分かっている。
 明日から──正しくは、2月の自由登校に入ったときから、自分たちはチームメイトではなくなっているのだから。
「そうだな……まぁ、さすがに明日から突然先発メンバーなんてことはないだろうけど、な。」
 山田がいつものように、穏かに微笑んでそう告げた瞬間、
「やァーまだみたいなへたくそは、しょっぱなから2軍ちゅうこともあるやろけどな、わいは違うで! 見とってみぃ、明日には、わいが一面TOPやで。」
 岩鬼が、どん、と自分の胸を叩いて豪語した。
 驚いたことに、岩鬼は春季キャンプでも1軍の座を獲得したままだった。
──正直、1位で指名されたとは言え、キャンプで2軍オチも考えていた微笑たちは、あっぱれ、と彼に拍手を送りたくなった……というのは、岩鬼が怒るから内緒である。
「試合が明日の夜づらに、明日の朝刊の、どこを飾るづらぜ?」
 あきれたように殿馬が突っ込むのに、出鼻をくじかれた思いで、岩鬼が苦虫を噛み潰したような顔になる。
「あ、あほっ! それやから、先発は男・岩鬼やっちゅうてやなっ!」
 頭ごなしに叫ぶいつもの岩鬼の声は殿馬達の頭を素通りしていく。
「でも、おれたちの卒業式が三面記事くらいは飾るかもな。
 ──朝から、校門の前に記者も居たことだし。」
 言いながら、軽く肩をすくめる微笑に、そうだな、と山田も頷く。
 そう頷きながらも、夏の大会が終わってから今まで、自主練習しかしていなかった自分の体が、野球をしたくてしょうがなくてうずうずしているのを感じていた。
 2月に入ってからずっと、毎日野球漬けの日々に戻れたのが、嬉しくてしょうがなくて──今日、たった一日の卒業式のために、野球から離れて……手が、うずうずしてしょうがない自分に、苦笑がこぼれた。
「山田世代、高校卒業、プロ初出場は誰だっ!? っとでも来るづらか。」
 ドラフトの結果が、ほとんど高校生だった、ということから、「山田世代」の威力はスゴイ。
「や、やァまだ世代てなんやねん、山田世代っちゅうのは!」
 バンバン、と壁を壊すばかりの勢いで、岩鬼が自分達が凭れ掛かっていた壁を叩きつける。
「一般的な呼び方づらぜ。」
 飄々と呟いて、殿馬はもたれていた壁から身を起こした。
 耳を澄ませれば、講堂の方からざわめきが聞こえ始めていた。在校生や保護者達が退出し始めたのだろう。
「そろそろ戻るか。」
 そう声を掛けて、微笑も壁から背を離す。
「──……なんだか、卒業式が終わったのに、実感が湧いてこないな……。」
 苦笑を噛み殺しながら、山田はざわめきが大きくなっていく講堂に視線をやった。
 去年の今頃、自分達はあの群れの中でクラスの輪から外れて集まって、いつ花束を渡すか、話し合っていたような覚えがある。
「明日から、学校来なくていいんだからな……どっちかというと、合宿所を出た時のほうが、『終わった』って感じしたな。」
 腕を組み、微笑が苦笑を刻みながら山田に同意してみせると、
「な、何言うとんねん! 卒業式の本番は、これからやろがっ!!」
 勢い良く唾を飛ばして、岩鬼が叫ぶ。
 そして彼は感慨深げに腕を組み、涙を目元に滲ませて渡り廊下の外に遠く見えるグラウンドを見つめた。
 頭の中では、また岩鬼の得意の妄想か何かが浮かんでいるのだろう。
 かと思うや否や、凛々しい顔付きで自分の学生服の第2ボタンを掴むと、
「あ、あかん……コレはわいの大切な人のために取っておかなならんのや……っ。」
 と、ひとり言を言い出す。
 何を考えているのか丸分かりである。
「卒業式といえば、告白タイムか。──確かにそれでもみくちゃにされるのはアリかもな。」
 夏の甲子園に出場しなかったおかげで、明訓の人気が白新の不知火に奪われたところがあるとは言え、山田が春にたたき出した記録の「かいぶつ君」の異名は消えることはなかった。
 さらにドラフトの1位指名の続出で、山田人気は、未だにうなぎ登りである。
──「人気者」の代名詞と言える少年がいたら、卒業式の日に、こんなところでノンビリしている暇などなかったかもしれないが。
「え、夏子さんと岩鬼は、もう付き合ってるんじゃなかったのか?」
「1人らぶらぶっちゅうヤツづらぜ。」
 驚く山田に、殿馬が茶々を入れた瞬間、殿馬の頭を、がっしりと掴む大きな熊手……、
「とんま〜! おんどれも、たまにはエエこと言うやないけ!」
 ──……ハ? と、抜けた顔で岩鬼の顔を見上げた同級生に気づかず、岩鬼は立派な顎を手の平で撫で上げ、
「そうやそうや、わいは夏子はん一筋やでぇ〜。」
 でれ、と、試合中のあの迫力がウソのように相好が崩れる。
 卒業しても、何も変わりそうにない気のする「夏子効果」に、呆れたように微笑と山田は視線を交し合う。
「………………なんか都合よく解釈したらしいな。」
「づら。」
 視界に移るグラウンドを一瞥して、ぞろぞろと、ようやく歩き出しながら、
「まぁ、なんや? 超高校級や言うても、所詮高校生はガキやしな。
 プロの土台で最初からガツンと行くんは、わいくらいのもんやろな。」
 うんうん、と頷く岩鬼の口上を聞きつつ……コレとも長くおさらばすることになるんだろうな、と、シンミリと思う気持ちが湧いてくる。
「そーだな……次に会うのは、プロの土……ってか。
 おれは1人セリーグだけどな。」
 頭の後ろで手を組んで笑う微笑に、うん、と山田は頷いて、
「その前に、まずは1軍のベンチに入れるように頑張らないとな。」
 自分に気合を入れるようにそう呟く。
 その言葉に、そうだな、と返して──微笑は、ふ、と背後を振り返った。
 けれど、そこには何もなく、まだ冬の名残を残した風が吹くだけ。
「? どうかしたのか、三太郎?」
 振り返り尋ねる山田に、いや、と呟いて、微笑は苦く笑みを刻み込む。
「──もう一年にもなろうって言うのに、慣れないな、って思ってさ。」
 ヒョイ、と肩を竦める微笑に──「なに」のことを言っているのか悟り、山田も殿馬も、知らず後ろを振り返った。

「山田なら、大丈夫さ。」

 そう、明るく笑う声が、耳の奥で聞こえたような──そんな気がした。
「──……。」
 この明訓に居る限り、どこに居ても彼の影は濃く残っていた。
 授業に遅れると、教科書を片手に走った渡り廊下。
 一緒に昼食を食べた中庭。
 体育の時間を受けた講堂。──時々コッソリ抜け出した退屈な学年集会。
 結局、彼が一度も踏み込むことのなかった、3年生の教室以外は、どこにだって一緒に居た記憶が溢れている。
 ──この郷愁めいた懐古も、明訓を卒業すれば、いつしか消えていくのだろうか?
 高校を卒業すれば、彼らともバラバラになってしまうと、漠然と抱えていたように?
「……野球をしていたら、いつかまた会えるさ。」
 そう呟いて──まるで自分に言い聞かせるように呟いて、山田は笑う。
 今年度の初め、諦めと悲しみと寂しさと悔しさと……そして、それでも前向きに生きていこうとする輝きを宿して、自分達の前から去っていった少年。
 彼がただの同級生であったなら、ココまで強く自分達の心に残ったりはしない。
 彼と苦楽を、他の誰よりも共にしたという自覚があるからこそ──今も、遠く隔てていても、強く、残るのだ。
「里中ほどの投手が、いつまでもくすぶっているはずはない。
 またいつか……きっと、プロの舞台で、会えるよ。」
 その、盲目的だとすら思える目で、山田が宣言する。
──けれど、誰もその山田の台詞を、否定することは出来なかった。
 通算4回の甲子園出場、3回の甲子園優勝──その重荷を、あの華奢な肩に背負った、傷だらけの小さな巨人。
 その、「1」と描かれた背を、見つめてきた……あの熱い日の思い出には、いつも彼が居る。
 振り返り、自信に満ちた笑顔で掛け声をかけた少年。
 痛い思いをすべて押し込み、投げぬいた少年の──だからこそ、自分たちもまた、彼を支えようと思った、あの胸の奥から湧き出る熱い思い。
「そうだな……きっと、そう待たないうちに会えるさ。」
 今、どこで何をしているのだろう?
 連絡する術はない。
 彼がどこに居るのか、誰も知らない。
 でも、きっと。

 野球をしてる。

 それだけは間違いがない……だれもが、そう、思っていた。

















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里中の仕事、何にしようかと考えて、結局思いつかなかったので、ぼかしてみました。
そろそろ山田欠乏気味じゃないかと──イメージ的には、プロ野球編の、山田増殖の夢を見て飛び起きる里中で……いえ、シリアスですよ? すっごく。