おまけ
「……山田。」
白新の校門を出る段階になって、里中は山田に荷物抱えされたまま、ぽん、と彼の背中をたたいて自己アピールをした。
隣を歩いていた微笑は、やっぱり後をつけてきて良かったぜ、などと呟いている。
「おろしてくれよ。荷物じゃないんだぜ、俺は。」
顔を上げて、山田の後頭部を見ながら訴える里中に、あぁ、と山田が忘れていたかのように反応を示した。
「すまん。」
あわてたように降ろしてくれる山田に、里中は小さく唇を尖らせて、まったくだ、と答える。
ストン、と足を地面につけて、ふぅ、と里中は首と肩をぐるりとまわす。
そのまま肩にかかる髪を邪魔そうに見やったあと、つまみあげて、
「まだ取ったらまずいよなー。」
ぶちぶちとそう零す。
そんな里中には、
「明訓のあたりまで来たら、お前だってすぐに分かるからな。」
微笑が軽い調子で、里中がカツラを取ろうとするのをとめる。
その言葉には真実味があったため──何せ、いくら休日とは言えど、教師もほかのクラブの人間も居ることは居るのだ。
出るときに見つからなかったのは、一重に記者が居ない時間帯をうまく狙ったからであって、帰るときのほうがずっと危険には違いない。
「だよなー。」
「ちょっとうつむき加減にしてれば、一見して分からないから大丈夫だろ。」
憂鬱げな顔になる里中に、小さく笑って山田は彼の顔の横にほつれている髪を直してやる。
それから、
「さ、急いで戻ろうか。夕食の前に風呂も済ませてしまいたいしな。」
さぁ、と──促すように、里中に向けて手のひらを差し出した。
その、大きくて皮の分厚い手のひらを見下ろし、里中はかすかに目元を赤らめる。
「い、いいよ──そんな、手なんて。」
「いや──……ほら、今しかできないだろ?」
見上げた先で、山田も照れたように目元のあたりをほてらせていた。
そんな彼を見て、自分が着ている制服を見て──あ、そっか、と里中は合点が行ったように頷いた。
そして、一歩山田の方に足を進めながら、するり、と彼の手のひらに自分の手を重ねた。
ぽっかりと暖かで大きな山田の手は、間をおかずしっかりと握り返してくれる。
「女装はイヤだけど、堂々と山田と手をつなげるのは……ちょっと、役得かな?」
嬉しそうに笑う里中に、山田もほんわりと笑い返した。
そんな、仲良く手をつないで歩き出す2人には、
「…………俺は、荷物持ちかよ。」
ぽつんと仲間はずれにされたような微笑が、突っ込んでみたが──間近で笑いあうふーふには、さっぱり届いては、いなかった。
高校生なら、自転車の二人乗りと手をつないで帰宅と、勇気を出して腕を組むというプラトニックをやってみろ……ということで、やってみました。
…………………………。
………………………………なんか違うよね……。
ごめんなさい、意味がなくって……(涙)